広島県警は10月8日、職務上知り得た個人情報を知人に漏らし、その見返りとして現金計10万円を要求したとして、県警高速道路交通警察隊の巡査長・渡邉優人容疑者(28)=広島県府中町=を、加重収賄と地方公務員法違反の疑いで逮捕した。
また、渡邉容疑者に個人情報を教えるよう求めたとして、知人で広島市西区の会社員・前川達也容疑者(29)も地方公務員法違反の疑いで逮捕した。
渡邉容疑者は事件当時、海田警察署交通課に勤務していた。
警察によると、渡邉容疑者は2023年12月、前川容疑者から別の人物の個人情報を教えるよう依頼を受け、海田署内のオンライン端末を使って住所などの個人情報を調べ、前川容疑者に漏らした疑いが持たれている。
さらに、その情報提供の見返りとして、現金計10万円を要求した疑いもある。
県警は捜査への影響を理由に、2人の認否を明らかにしていない。
勤務時間中、アクセス権のある警察端末を使用か
今回の事件で特に問題となるのは、外部から警察のシステムへ不正侵入したのではなく、警察官として与えられていたアクセス権限を私的な目的で利用した疑いが持たれている点だ。
警察によると、渡邉容疑者は勤務時間中、自身がアクセス権限を持つオンライン端末を使って対象となった人物の情報を調べたとされる。
警察が保有する個人情報は、捜査や交通業務など正当な職務目的のために利用されるものだ。
アクセス権限を持っていることと、どのような目的でも情報を検索・利用してよいことは別になる。
今回の容疑が事実であれば、警察内部の情報管理に対する信頼そのものを揺るがす問題となる。
知人から依頼、別の人物の住所など漏らした疑い
前川容疑者は2023年12月、渡邉容疑者に対し、別の人物の個人情報を教えるよう依頼し、情報漏洩をそそのかした疑いが持たれている。
渡邉容疑者は依頼を受け、警察署内のオンライン端末で住所などを調べ、前川容疑者へ伝えたとみられている。
現時点で公表されているのは「住所などの個人情報」で、具体的にどの範囲まで情報が漏れたのかは明らかにされていない。
情報を漏らされた人物についても、プライバシー保護の観点から詳細は公表されていない。
見返りとして現金計10万円を「要求」した疑い
渡邉容疑者には、個人情報を漏らした見返りとして前川容疑者に現金計10万円を要求した加重収賄の疑いも持たれている。
ここは事実関係を正確に分ける必要がある。
10月8日時点で明らかになっている容疑は、現金10万円を要求した疑いであり、「10万円を受け取った」と公表されているわけではない。
県警は、個人情報の提供と金銭要求との関係を含め、詳しい経緯を調べている。
背景に金銭トラブルか
2人は知人同士だったという。
県警は、前川容疑者の別の知人と、個人情報を漏らされた人物との間に金銭トラブルがあり、その問題を解決するために前川容疑者が住所などの情報を求めた可能性があるとみている。
ただ、金銭トラブルの具体的な内容や、個人情報が実際にどのように使われたのかについては、現時点で明らかになっていない。
このため、動機や情報漏洩後の経緯については今後の捜査で確認されることになる。
別事件の捜査過程で発覚
今回の情報漏洩疑惑は、前川容疑者が関係したとされる別の事件を捜査する過程で発覚したという。
警察はその捜査を進める中で、渡邉容疑者による警察情報へのアクセスや、前川容疑者との関係を把握したとみられる。
警察内部の端末には通常、職員による情報照会の履歴が残る。
今回どのような捜査や確認によって照会の事実が判明したのか、また、当時のアクセス管理や内部点検がどのように行われていたのかも今後の焦点となる。
警察内部の「正規アクセス」をどう監視するか
今回の事件は、警察情報の管理を考える上でも重い。
情報漏洩対策というと、外部からのサイバー攻撃や不正侵入が注目されやすい。
しかし、今回問題となっているのは、警察内部で正規にアクセス権限を持つ職員が、その権限を職務外の目的で利用した疑いだ。
内部不正を防ぐためには、単に端末へのアクセスを制限するだけではなく、
- 誰が情報を照会したのか
- いつ照会したのか
- どの情報にアクセスしたのか
- その照会に職務上の必要性があったのか
といった記録や確認が重要になる。
今回の捜査とは別に、県警が情報照会の監視や内部統制をどのように検証するのかも注目される。
広島県警「警察職員が逮捕されたことは誠に遺憾」
広島県警の秋本慎二主席監察官は、職員の逮捕を受け、
「警察職員が逮捕されたことは、誠に遺憾であり、県民の皆様に深くお詫び申し上げます。今後、事実関係を調査の上、厳正に対処して参ります」
とコメントした。
警察官には、捜査や交通業務などを通じて一般市民ではアクセスできない情報を扱う権限が与えられている。
その情報が私的な人間関係や金銭トラブルのために利用された疑いがある以上、県警には刑事事件の捜査だけでなく、情報管理や監督態勢に問題がなかったかについても説明が求められる。
編集部まとめ
広島県警高速道路交通警察隊の巡査長・渡邉優人容疑者(28)が、海田警察署勤務当時、警察署内のオンライン端末を使って住所などの個人情報を調べ、知人へ漏らした疑いで逮捕された。
渡邉容疑者には、情報提供の見返りとして現金計10万円を要求した加重収賄の疑いも持たれている。
知人の会社員・前川達也容疑者(29)も、情報提供を求めて漏洩をそそのかしたとして逮捕された。
2人は知人同士で、背景には別の人物を巡る金銭トラブルがあった可能性があると県警はみている。
一方、県警は2人の認否を明らかにしておらず、刑事責任については今後の捜査や司法手続きで判断される。
今回問われるのは、巡査長個人の行為だけではない。
警察官が職務上アクセスできる個人情報について、目的外の照会をどのように防ぎ、異常なアクセスをどのように把握するのか。広島県警の情報管理と内部監督のあり方も今後の焦点となる。
週刊TAKAPI 編集部/成田
特記事項
本記事は2026年10月8日時点で明らかになっている警察発表および報道内容を基に構成しています。
渡邉優人容疑者、前川達也容疑者はいずれも逮捕段階であり、有罪が確定したものではありません。
広島県警は2人の認否を明らかにしていません。
また、渡邉容疑者について現時点で公表されているのは、情報提供の見返りとして現金計10万円を要求した疑いであり、10万円を実際に受領したと確認されたものではありません。

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