徳島大学は10月7日、研究論文に捏造や盗用などの不正行為が認定された問題で、大学院社会産業理工学研究部の講師を停職3カ月、教授を戒告とする懲戒処分を発表した。
問題の発端は、論文2報に実在しない参考文献の情報が記載されているとの告発だった。大学が調査対象を広げた結果、計7報の論文について研究不正などを認定。インターネット上の文章を適切な出典表示なしに転用した行為や、同じ内容の論文を重複して投稿・出版した問題も明らかになった。
調査では、大学院生が作成した原稿を教員が十分に確認していなかったことも指摘され、研究指導と共同研究の管理体制が問われる事態となった。
架空の参考文献を告発 調査対象は7報に拡大
大学によると、2024年11月、論文2報の参考文献に不正確な情報が含まれているとの告発があった。同年12月には匿名メールによる告発を正式に受理し、調査を進めた。
当初の問題は参考文献の記載だったが、大学は関連する別の論文にも対象を広げた。
調査したのは、学術誌に投稿・発表した論文や、国際会議で発表した論文、プレプリントとして公開された論文など計7報。この中には、すでに撤回された論文や、学術誌に採録されなかった論文も含まれている。
調査委員会は、存在しない研究成果を根拠に論文を作成した行為を「捏造」と認定した。
さらに、引用文献と論文本文の記述が一致しない事例も複数確認された。研究成果の根拠として示された文献が、実際には本文の説明を裏付けていなかったという。
調査結果は2026年3月に関係者へ通知されたが、不正への関与を認定された3人が不服を申し立てた。大学は再調査を要する新たな科学的根拠が示されなかったとして、4月に申し立てを却下。その後、7月3日に調査結果を公表した。
ウィキペディアの文章を無断転用 論文の二重投稿も
調査では、参考文献の問題以外にも複数の不正が見つかった。
大学の調査報告書によると、ある論文にはインターネット上の百科事典「Wikipedia」の「Plank」という項目と同一の文章が使われていた。
しかし、必要な出典表示がされていなかったため、大学は盗用と認定。同様の記述はほかの論文にも確認された。
また、別の論文では、すでに使用した図表を適切な説明なしに再利用する行為も認定された。
論文の投稿過程にも問題があった。2022年2月に学術誌へ投稿した論文と同じ題名の論文を、同年9月に別の学術誌にも投稿。さらに、学術誌への投稿中だった論文と重複する内容を国際会議に投稿し、その後、二重出版に至った事例も確認された。
二重出版となった論文の一つは、2024年12月に学術誌によって撤回されている。
大学院生の論文を教員が十分確認せず 教授は最終稿未確認
大学が不正行為などへの関与を認定したのは、大学院生と講師、教授の3人。
ただし、関与した内容は同じではない。
大学院生と講師については、捏造、盗用、二重投稿・二重出版、不適切な著者表示などへの関与を認定した。
一方、教授について認定されたのは、投稿規定に違反する不適切な著者表示と、不十分な共同研究体制への関与だった。教授自身が捏造や盗用を行ったと認定されたわけではない。
調査では、大学院生が論文の構想や執筆などを担当し、講師が投稿前の原稿を確認して修正を指示していたことが分かった。
さらに教授は、一部の論文について共著者として名前を連ねていたものの、最終原稿を確認していなかったと説明した。
大学は、研究者間で引用文献の確認や研究倫理に関する指導、最終原稿の承認などが適切に行われていなかったと判断した。
講師を停職3カ月、教授を戒告 学長が謝罪
徳島大学は調査結果を受け、講師を10月5日付で停職3カ月、教授を10月6日付で戒告処分とした。
処分内容には、大学が認定した不正行為への関与の違いが反映されている。
大学は調査報告書で、不正行為の背景として、教員が大学院生の論文に記載された引用文献を十分に確認せず、不適切な記述を見逃していたことを挙げた。
また、共同研究者の間で十分な連携・協力関係が構築できていなかったため、不正を早い段階で発見できなかったとも指摘している。
河村保彦学長は10月7日付のコメントで、研究不正があったことを謝罪。教職員と学生への研究倫理教育を徹底し、学生に対する研究指導・助言の体制を充実させる方針を示した。
大学は再発防止策として、論文投稿前の研究倫理教育の受講徹底や、剽窃防止ソフトによる分析結果の保管・管理などを挙げている。
架空の参考文献への疑義から始まった調査は、論文の執筆、引用、投稿、共著者による確認にまで及んだ。大学は教員2人を処分し、研究指導体制の見直しを進めることになった。
編集部まとめ
徳島大学は10月7日、研究不正に関わった大学院社会産業理工学研究部の講師を停職3カ月、教授を戒告処分とした。
2024年に架空の参考文献をめぐる告発があり、調査対象は計7報に拡大。捏造、盗用、二重投稿・二重出版などの不正が認定された。
注目されるのは、論文を執筆した大学院生だけでなく、原稿を確認する立場の教員や、最終稿を承認する共著者の責任も問題となった点だ。
大学の調査は、参考文献の確認不足にとどまらず、研究者間の連携が十分に機能していなかったことを明らかにした。
週刊TAKAPI 編集部/成田
特記事項
本記事は、徳島大学が2026年10月7日に公表した「教員の処分について」と、同年7月3日に公表した「研究活動における調査報告(概要)」を照合して作成した。
調査対象の7報には、不採録論文、撤回済み論文、国際会議論文、プレプリントが含まれる。すべてを掲載済みの学術誌論文として扱っていない。
また、講師と教授の認定内容を区別し、教授が捏造・盗用の実行者だったと誤認させる記載を避けた。研究不正の原因が生成AIであるとの認定も確認されていない。
📩 情報提供・掲載内容の削除依頼はこちら
https://108takapi.jp/tip-off/

コメント
0件まだコメントはありません。最初のコメントを投稿してみませんか。