東京都江戸川区の区立中学校で、部活動内のいじめを受けた生徒が長期間不登校となった重大事態を巡り、学校が副校長の異動時に「いじめが終了した」という誤った情報を引き継いでいたことが分かった。
江戸川区教育委員会が10月13日に公表した調査結果報告書の概要版で明らかになった。新旧校長間でもいじめの全容を把握しないまま不正確な引き継ぎが行われており、調査組織は学校側の対応について10項目の問題点を指摘している。
この事案では、学校から区教委への報告に約5カ月を要し、区教委も重大事態に該当するかどうかを5年以上検討していなかったことが、すでに明らかになっている。
今回の正式公表によって、教職員の異動や管理職交代の際にも、被害生徒の状況が正確に共有されていなかった実態が浮かび上がった。
副校長の異動時に「いじめが終了した」と誤情報
調査報告書によると、学校は保護者からいじめの申告を受けた後も、事実確認や被害生徒への支援について十分な組織的対応を取っていなかった。
その影響は、翌年度の教職員の引き継ぎにも及んだ。
副校長の人事異動に伴う情報共有では、いじめの具体的な状況に加え、「いじめが終了した」という誤った内容まで引き継がれていた。
調査組織は、前年度中に行うべきいじめ対応が実施されていなかったことが、誤情報の共有につながったと指摘している。
学校では、生徒の欠席がいじめに起因することを学年教員や管理職が認識していた。それにもかかわらず、生徒への働きかけや関係生徒への聞き取りを改めて検討していなかったという。
校長交代でも全容把握できず 不登校支援の検討に影響
問題は副校長の異動時だけではなかった。
新旧校長間の引き継ぎでも、不登校のきっかけとなったいじめについて十分な調査が行われておらず、学校側が全容を把握しないまま情報を引き継いでいた。
報告書は、こうした不正確で不十分な引き継ぎによって、不登校支援策を検討する前提となるアセスメント、つまり生徒の状況や必要な支援を把握・評価する作業ができない状態だったと指摘した。
本来、管理職が交代しても、生徒がいじめによって学校に通えなくなった経緯や、これまでの対応状況は正確に共有されなければならない。
今回の調査では、その基本的な情報共有が十分に行われていなかったことが明らかになった。
教科書の受け渡しも遅延 不登校生徒への支援に問題
調査報告書では、不登校となった生徒への学習支援にも問題があったと指摘している。
学校は、生徒が自宅で一人で勉強していることについて、成績が上がらないのではないかと不安を抱えている状況を把握していた。
しかし、進級時の教科書の受け渡しが遅れていたという。
さらに、成績に関する説明についても、学校内や保護者との間で十分な認識の共有ができていなかった。
学校配布物を、いじめに関与した生徒から被害生徒へ届けさせた対応についても、いじめ対応としての適切性や教育的効果が整理されないまま実施されていたと指摘された。
学校側10項目、区教委側3項目の問題点
今回公表された報告書は、学校側の対応について10項目、江戸川区教育委員会の対応について3項目の問題点を挙げている。
学校側については、保護者から最初の申告を受けた段階で組織的な事実確認を行わず、いじめに関係する生徒間の人間関係や背景、経緯についても十分に調べていなかったとした。
区教委についても、学校から報告を受けた際に調査内容の詳細を求めず、対応状況を点検していなかった。
さらに、いじめによる不登校が30日以上続いているとの報告を受けながら、重大事態への該当性を検討するための情報確認や調査の指示を行っていなかったという。
調査組織は、学校と区教委の双方が、いじめ防止対策推進法で求められる水準の対応を行っていなかったと結論付けている。
区教委、全教職員の研修強化へ
調査は2024年7月16日から2026年3月19日まで、弁護士4人と公認心理師1人の計5人によって行われた。
2018年度の部活動内での暴言などに加え、2020年度の卒業遠足を巡る人間関係で生徒が心身の苦痛を感じたことも認定している。
江戸川区教育委員会は13日の報告書公表に当たり、調査組織の提言を重く受け止め、全教職員に対する研修などを強化すると表明した。
また、いじめの疑いが生じた際に迅速かつ的確に対応できる体制を構築し、再発防止を徹底するとしている。
ただし、今回の調査結果を踏まえた関係教職員への具体的な指導や処分の有無、改善措置の実施状況については、公表資料から確認できない。
編集部まとめ
江戸川区のいじめ重大事態では、学校から区教委への報告が遅れただけでなく、その後の教職員異動や校長交代においても、被害生徒の状況が正確に引き継がれていなかった。
特に「いじめが終了した」という誤った情報の共有は、学校が問題をどのように認識し、次の担当者へ伝えていたのかを示す重要な事実だ。
調査報告書では、教科書の受け渡しの遅れなど、不登校となった生徒への支援の不備も明らかになった。
区教委は再発防止に向けた研修と対応体制の強化を表明したが、調査組織が指摘した問題を現場でどのように改善するのか、具体的な説明が求められる。
週刊TAKAPI 編集部
特記事項
本記事は、江戸川区教育委員会が2026年10月13日に公表した「江戸川区立中学校のいじめの重大事態に係る調査結果報告書(概要版)」および同日の区公式発表に基づいて作成した。
報告書は3ページ。調査期間は2024年7月16日から2026年3月19日まで。学校側の対応について10項目、区教委側について3項目の問題点を指摘している。
本記事で扱う「いじめが終了した」という誤情報は、調査組織が認定した引き継ぎ上の問題であり、学校側が公式にいじめの終結を決定していたと認定されたものではない。
また、関係職員への懲戒処分の有無は公表資料から確認できていない。生徒の特定を避けるため、学校名および個人を識別できる情報は掲載していない。
一次資料:江戸川区・調査結果報告書概要版(PDF)/江戸川区・10月13日公式発表
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