東三河で地域医療を支える看護師の確保策が転換期を迎えている。
東三河北部の基幹病院、新城市民病院は、看護学生に月額5万円を貸与し、卒業後に同病院で一定期間勤務した場合に返還を免除する修学資金制度を設けている。病院は現在も看護師の採用を続けている。
一方、蒲郡市では、市立ソフィア看護専門学校が長年、地域の看護人材を養成してきた。2021年度は卒業生36人のうち35人が就職し、就職率は97%。蒲郡市は主な就職先として蒲郡市民病院を挙げている。
同じ東三河でも、新城市は病院への就職を経済支援で促し、蒲郡市は市立学校で看護師を養成する仕組みを持ってきた。
ただ、蒲郡では2027年4月に名古屋市立大学「蒲郡キャンパス」の開設が予定され、ソフィア看護専門学校は2029年3月末で閉校する。看護人材の育成は、専門学校から4年制大学へ移る。
東三河北部、新城市民病院が急性期・回復期を担う
愛知県の病床機能報告では、東三河北部医療圏は新城市、設楽町、東栄町、豊根村で構成される。
新城市民病院は現在199床。
県の報告では、急性期114床、回復期59床、休棟・再開予定26床。2026年7月時点の予定では、急性期114床、回復期85床の計199床とされている。
同圏域には慢性期病床を持つ医療機関もあるが、新城市民病院は急性期・回復期の入院医療を担う主要病院となっている。
救急やへき地医療を維持するうえでも、看護師の確保は病院運営に直結する。
新城市民病院、看護師を継続募集
新城市民病院は正規職員の看護師を随時募集している。
採用情報では募集人数を「若干名」とし、作文、適性検査、面接で選考する。会計年度任用職員の募集も行っている。
ただ、公表されている採用情報だけでは、病院が必要としている看護師数に対し、現在何人不足しているのかは分からない。
募集人数だけでなく、年間の採用予定数、実際の採用者数、退職者数を確認しなければ、看護師不足の実態は把握できない。
看護学生に月額5万円 勤務すれば返還免除
新城市民病院は、看護師養成施設で学ぶ学生に修学資金を貸与している。
貸与額は月額5万円で無利息。
卒業後に看護師免許を取得し、新城市民病院で勤務する意思がある学生を対象とする。
貸与を受けた期間に相当する期間を同病院で勤務した場合、返還免除の対象となる。
例えば3年間貸与を受けた学生が、条件を満たして3年間勤務すれば、返還免除を受けられる仕組みだ。
学生の段階から、新城市民病院への就職につなげる制度となっている。
新城市にも別の看護師修学資金
新城市には、市民病院独自の制度とは別に、市の看護師修学資金制度がある。
貸与額は条件によって異なり、市内医療機関への就職を前提とした区分などが設けられている。
市内で働く看護師を確保するため、養成段階から経済的に支援する制度だ。
今後は、これらの修学資金を何人が利用し、そのうち何人が新城市民病院や市内医療機関へ就職したのかが制度効果を測る数字になる。
蒲郡は市立学校で看護師を養成
蒲郡市では、ソフィア看護専門学校が看護師養成を担ってきた。
3年課程で、各学年40人、総定員120人。
蒲郡市民病院などを実習先とし、地域の医療現場と接点を持ちながら学生を育成してきた。
2021年度の卒業生は36人。このうち35人が就職し、1人が進学した。就職率は97%だった。
市は主な就職先として蒲郡市民病院を挙げている。
ただし、97%は卒業生全体の就職率であり、蒲郡市内や東三河への地域就職率を示す数字ではない。
蒲郡は専門学校から大学へ
蒲郡市の看護師養成は、今後大きく変わる。
ソフィア看護専門学校は2026年度入学生を最後に学生募集を停止。2029年3月末に閉校する予定となっている。
同施設を活用し、2027年4月には名古屋市立大学医学部保健医療学科看護学専攻「蒲郡キャンパス」が開設される予定だ。
蒲郡校の入学定員は1学年50人。
従来の3年制専門学校から、4年制大学へ看護師養成の仕組みが移る。
一方、名市大蒲郡キャンパスの卒業生には、蒲郡市や三河地域の医療機関への就職義務はない。
専門学校時代に地域医療機関へ送り出してきた人材の流れを、大学化後も維持できるかが今後の検証点となる。
新城市民病院は新病院整備も進行
新城市民病院では、看護師確保と並行して病院再整備も進んでいる。
現在199床の病院を、移転後は100~120床程度に縮小する方向で検討している。
新病院の総事業費は160~180億円程度を見込む。
2025年度の病床利用率は45.0%。一方で、救急、災害、へき地医療など東三河北部で必要な機能は維持する方針だ。
基本構想策定に向けた市民ワークショップでは、「人員確保」が重点項目の最上位となった。
新しい病院を整備しても、医師や看護師を確保できなければ、計画した医療機能を維持できない。
施設整備と人材確保は別々の課題ではない。
比較するべきは制度の数ではなく実績
新城市と蒲郡市では、看護人材確保の方法が異なる。
新城市では、修学資金と病院採用を組み合わせている。
蒲郡市では、市立看護専門学校で学生を養成し、実習や就職を通じて地域医療機関とつないできた。
今後、蒲郡は大学教育へ移る。
比較する際に必要なのは、制度の有無だけではない。
新城市では、修学資金利用者が何人いて、何人が市民病院へ就職し、何年勤務したのか。
蒲郡では、ソフィア卒業生が何人地域へ就職してきたのか。名市大蒲郡キャンパス開設後、何人が蒲郡市や東三河へ就職するのか。
こうした実績を追うことで、地域医療政策としての効果を確認できる。
編集部まとめ
東三河北部の新城市民病院は、看護学生に月額5万円を貸与し、卒業後に一定期間勤務した場合に返還を免除する制度を設けている。
蒲郡市では、ソフィア看護専門学校が看護師を養成し、蒲郡市民病院を主要な実習先・就職先としてきた。
2021年度のソフィア卒業生は36人で、35人が就職した。
蒲郡では2027年から名市大蒲郡キャンパスへ看護教育を移行する予定で、従来の地域人材育成の仕組みが変わる。
一方、新城市では新病院整備と同時に医療従事者の確保が課題となっている。
東三河で看護人材を確保できているかを判断するには、募集人数や制度内容だけでなく、実際の採用人数、地域就職者数、勤務継続年数を確認する必要がある。
週刊TAKAPI 編集部
特記事項
この記事は2026年10月17日時点で、新城市、新城市民病院、蒲郡市、蒲郡市立ソフィア看護専門学校、愛知県が公表している資料をもとに構成しています。
ソフィア看護専門学校の2021年度卒業生の「就職率97%」は卒業生全体の就職率であり、蒲郡市または東三河への地域就職率ではありません。
新城市民病院の修学資金は月額5万円で、返還免除には看護師免許取得後の同病院勤務など所定の条件があります。
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