【豊橋市】いじめ重大事態4件を認定 再調査委員会は設置実績なし、市議会で対応問われる

調査の公平性、記録保存、被害児童生徒の学習権――長坂市長は「子どもを徹底して守る」と表明

愛知県豊橋市で、2022年度(令和4年度)から2026年8月の市議会答弁時点までに、いじめ重大事態が計4件認定されていたことが明らかになった。

2026年8月31日に開かれた豊橋市議会9月定例会の一般質問で、日本共産党豊橋市議団の鈴木みさ子議員が、いじめ重大事態の認定状況や調査の公平性、被害児童生徒の権利保障について市の対応をただした。

質疑では、重大事態の調査に関する記録の保存期間が5年とされていることや、学校・教育委員会・第三者委員会による調査の仕組みが説明された。

また鈴木議員は、重大事態の調査結果を改めて検証する「再調査委員会」について、これまで設置された実績がないと説明した。

長坂尚登市長は、重大事態として調査することに消極的になるべきではないとの考えを示したうえで、いじめを許さず、子どもを守る姿勢を強調した。

一方、認定された4件それぞれの調査状況や、被害児童生徒への支援の実施状況については、今回確認した質疑からは詳細が明らかになっていない。

いじめ重大事態、2022年度から4件を認定

豊橋市は2017年4月に「豊橋市いじめ防止基本方針」を策定し、その後も内容を見直してきた。

同方針では、いじめによる重大事態を大きく2種類に分けている。

第1号は、いじめによって児童生徒の生命、心身、財産に重大な被害が生じた疑いがある場合。

第2号は、いじめによって相当期間、学校を欠席することを余儀なくされている疑いがある場合だ。

いずれも、いじめとの因果関係が最終的に確定してから初めて調査できる制度ではない。重大な被害が生じた疑いの段階から対応が求められる。

鈴木議員は、市内における2022年度から2025年度までのいじめ認知件数と重大事態の認定状況について質問した。

その後の再質問で、2022年度から答弁時点までに重大事態が4件認定されていることを確認した。

ただし、今回の文字起こしで確認できる範囲では、4件の年度別内訳や、生命・心身・財産に関する第1号と不登校に関する第2号の内訳、各調査の進捗状況は分かっていない。

重大事態が何件認定されたかだけでなく、いつ疑いを把握し、どのような調査を経て、被害児童生徒への支援につなげたかが検証すべき点となる。

調査は学校主体の場合も 公平性・中立性をどう確保するのか

重大事態の調査体制についても議論が行われた。

教育部長は、豊橋市では学校が調査主体となる場合と教育委員会が調査主体となる場合があると説明。

教育委員会が主体となる場合には、教育委員会方式と第三者委員会方式があるとした。

調査にあたっては、必要に応じて弁護士、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなどの専門家を委員に加え、公平性・中立性を確保するよう努めているという。

これに対し鈴木議員は、被害者、加害者、教職員が同じ学校に関係しているため、調査の客観性が損なわれる場合が考えられると指摘した。

国のガイドラインでも、調査組織の構成や第三者性の確保は重要な要素とされている。

ただし、専門家が参加することと、調査組織の全員が独立した第三者で構成されることは同じではない。

豊橋市が認定した4件について、実際にどの方式で調査したのかは、今回の質疑だけでは確認できない。

いじめの調査記録、保存期間は5年

事実関係を明らかにするための記録作成について、教育部長は、当事者や関係児童生徒への聞き取りを複数の教員で行うなど、組織的な対応を重視していると説明した。

記録を作成する際は主観を交えず、誰が読んでも当時の状況を把握できるよう努めるという。

また保存期間については、教育委員会の文書分類表に基づき、いじめの調査記録や対策委員会の記録を保存する年限を5年としており、重大事態調査の記録も同様に考えていると答弁した。

一方、文部科学省の2024年8月改訂ガイドラインでは、アンケート原本などの一次資料と、聞き取り内容をまとめた二次資料、調査報告書について、それぞれの性質を踏まえた保存期間の考え方を示している。

重大事態の調査では、時間の経過後に新しい証言や資料が明らかになる場合も想定される。

豊橋市で保存期間が経過した資料をどのように扱うのか、調査継続中や争いが残っている事案の資料を保存延長する仕組みがあるのかについては、さらに確認が必要だ。

再調査委員会は設置実績なし 市長側が判断基準を説明

今回の質疑で、もう一つ焦点となったのが、重大事態調査の結果に疑問が残った場合の再調査制度である。

いじめ防止対策推進法では、公立学校の重大事態調査の報告を受けた地方公共団体の長が、必要と認めた場合に再調査を行うことができる。

豊橋市の基本方針にも、市長が必要性を判断し、再調査委員会によって調査結果を改めて検証する仕組みが定められている。

鈴木議員は、調査報告書に当事者が納得できない場合を取り上げ、市長がどのように再調査の必要性を判断するのか質問した。

市側は、意見書の提出の有無だけで判断するのではなく、国のガイドラインに基づいて対応すると説明。再調査を行う必要があると考えられる例として、次の3点を挙げた。

  1. 調査結果に影響を及ぼす可能性のある、新たな重要事実が判明した場合
  2. 調査事項について十分な調査が尽くされていないと判断された場合
  3. 調査組織の公平性・中立性に明らかな問題があり、事前説明不足などから被害児童生徒や保護者がその構成に納得していない場合

こうした基準を踏まえ、専門家の意見も聞きながら総合的に判断するという。

鈴木議員は再質問の中で、再調査委員会について「これまでには設置された実績がない」と事前に説明を受けていたことを明らかにした。

ただし、設置実績がないことは、被害児童生徒や保護者から再調査を求める意見が一度も出されていないことや、市が再調査を拒否したことを意味するものではない。

実際に再調査を求める意見が提出された件数や、その判断経過は、別途確認すべき事項だ。

「学校に行けない」だけでは終わらない 学習権や進路への影響も

鈴木議員は、いじめ重大事態の調査だけでなく、被害を受けた子どもの権利保障についても質問した。

いじめによって学校に通えなくなった場合、同じ教室で友人と学ぶ機会が失われるだけではない。

被害が長期化すれば、将来の目標や進路の変更を余儀なくされる場合も考えられるとして、オンライン学習や個別指導だけでは十分に補えない問題を指摘した。

これに対し教育部長は、学校と教育委員会が連携し、必要に応じてスクールカウンセラーの派遣や教育相談の紹介を行うと説明した。

欠席が続く場合には、保護者を通じて家庭での様子を丁寧に把握し、家庭訪問などを通じて学級や学年の状況を伝え、児童生徒が孤立しないよう支援するという。

市の基本方針にも、被害児童生徒の心身の安全確保や学習・生活環境の確保、保護者への相談支援などが盛り込まれている。

もっとも、今回の答弁では、重大事態によって失われた学習機会を具体的にどのように保障するのか、4件の事案でどのような支援が実施されたのかといった個別の実績までは明らかにされなかった。

被害者が学校に戻ることだけを支援の到達点とするのではなく、本人の意思や心身の状況を尊重しながら、学びを継続できる環境をどのように確保するかが課題となる。

長坂市長「重大事態の件数増を悲観的に捉えていない」

質疑の終盤では、長坂尚登市長がいじめ重大事態への考えを示した。

鈴木議員は、市長が2024年12月の所信表明で、虐待やいじめから子どもを守り、学校に行けない親子に寄り添う市政を掲げたことを取り上げ、改めていじめへの対応を質問した。

長坂市長は、重大事態として取り扱うかどうかや調査の実施は教育委員会に委ねられていると説明。

そのうえで、重大事態として調査することに後ろ向きになるべきではなく、積極的に調査することが必要との考えを示した。

そして、重大事態の件数が増えていることについても、悲観的には捉えていないと述べた。

この発言は、いじめによる被害の増加を容認したものではなく、重大事態の疑いを積極的に把握し、調査につなげる姿勢を説明した文脈でのものだ。

市長はさらに、いじめの中には犯罪として取り扱われるべき行為もあると指摘。学校単独での対応が困難な場合には、警察など外部機関とも連携して対応する方針を示した。

最後には、いじめを許さず、子どもを徹底して守るという強い決意を持って、市長部局としても取り組む考えを表明した。

問われるのは4件の認定後、子どもたちがどう守られたか

豊橋市が2022年度から答弁時点までに認定した、いじめ重大事態4件。

今回の市議会質疑では、認定件数に加え、調査体制、記録の保存、再調査制度、被害児童生徒への支援方針が説明された。

一方で、4件それぞれについて調査がどこまで進んだのか、被害児童生徒や保護者に調査結果が十分説明されたのか、学習環境や心身のケアがどの程度確保されたのかは、今回の質疑だけでは確認できない。

重大事態を認定することは、対応の終わりではなく、被害の実態を明らかにし、子どもを守るための重要な出発点である。

調査を行う行政の姿勢だけでなく、その後の支援が実際に機能しているかどうかも問われる。

週刊TAKAPIでは、今回の議会答弁と関連資料を踏まえ、いじめ重大事態の調査制度と被害児童生徒の権利保障について、引き続き検証していく。


Q&A|豊橋市のいじめ重大事態をめぐるポイント

Q豊橋市では、いじめ重大事態が何件認定されていますか?
A2026年8月31日の市議会質疑で、2022年度から答弁時点までに計4件認定されていることが確認されました。年度別の内訳などは、今回の文字起こしでは確認できません。
Q重大事態と認定された場合、誰が調査するのですか?
A学校または教育委員会が調査主体となります。調査体制には、学校の対策組織を基礎とする方式や、第三者委員会方式などがあります。
Q調査結果に納得できない場合、再調査は可能ですか?
A可能です。ただし、調査結果に納得できないという理由だけで自動的に再調査が行われる制度ではありません。市長側が国のガイドラインなどを踏まえ、再調査の必要性を判断します。
Q豊橋市で再調査委員会は設置されていますか?
A鈴木みさ子市議は今回の質疑で、これまで設置実績がないと説明しました。再調査を求める意見が提出されたことがあるかどうかは、別途確認が必要です。
Qいじめによって学校に通えなくなった場合、どのような支援がありますか?
A豊橋市はスクールカウンセラーの派遣、教育相談の紹介、家庭訪問などを行う方針です。ただし、今回認定された4件における具体的な支援内容は、この質疑だけでは明らかになっていません。

議会質疑日: 2026年8月31日
記事更新日: 2026年10月19日
対象: 豊橋市議会9月定例会・鈴木みさ子議員の一般質問
構成: 週刊TAKAPI編集部

参考資料

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