【独自インタビュー】「障害のある子も修学旅行へ」保護者の負担に向き合う諸井菜々子市議――「もう少し学校のことに踏み込みたい」

週刊TAKAPI|独自インタビュー連載 第4回

取材日:2026年9月25日
取材場所:豊橋市役所
担当記者:鈴木・成田
記事更新日:2026年10月17日

修学旅行は、子どもたちにとって学校生活の大きな思い出となる行事だ。

友人と同じ場所を訪れ、同じ景色を眺め、普段とは違う環境で寝食をともにする。そうした経験は、教室での学習とは異なる学びの機会にもなる。

しかし、障害のある児童・生徒が修学旅行に参加する際、学校から保護者の付き添いを求められる場合がある。

そのとき、仕事を休めない家庭はどうするのか。ひとり親家庭では、ほかの子どもの世話を誰が担うのか。付き添いの交通費や宿泊費は、誰が負担するのか。

こうした問題に着目し、豊橋市議会で取り上げたのが諸井菜々子市議だ。

諸井市議は2026年6月10日の一般質問で、特別な配慮が必要な児童・生徒の宿泊行事における保護者の付き添いについて質問した。

学校が子どもの安全を確保するために保護者へ協力を求めることと、その負担を家庭だけに委ねることは同じではない。

諸井市議の問題提起は、学校行事への参加を支える制度が、家庭の現実に十分対応できているのかを問うものだった。

週刊TAKAPIは9月25日、豊橋市役所で諸井市議に独自インタビューを実施した。

連載第4回では、修学旅行をめぐる保護者の付き添い問題と、諸井市議が教育行政に向き合う姿勢を取り上げる。

■ 「ひとり親家庭だったら、どうするのか」保護者の生活から考える

諸井市議が今回の取材で問題として挙げたのは、保護者の付き添いを求めることで生じる家庭ごとの負担だった。

障害のある児童・生徒が修学旅行に参加する際には、移動や食事、入浴、着替え、宿泊中の見守りなど、個別の支援が必要になる場合がある。

学校側にも、児童・生徒の安全を確保する責任がある。

一方で、必要な支援を学校側だけで確保することが難しい場合、保護者に付き添いを依頼することがある。

諸井市議は、その依頼を受ける家庭の事情にも目を向ける必要があると考えている。

ひとり親家庭で仕事を休めない場合、誰が付き添うのか。

ほかにも幼い子どもがいる家庭では、その間の世話をどうするのか。

数日間の休業によって収入が減る家庭や、交通費・宿泊費の負担が難しい家庭はどうすればよいのか。

諸井市議は取材の中で、こうした事情によって保護者が付き添えない場合があることを問題として挙げた。

保護者が協力したいと思っていても、生活上の事情から対応できないことがある。

その現実を踏まえずに付き添いを求めれば、結果として子どもの学校行事への参加にも影響が生じかねない。

諸井市議が着目したのは、学校の安全確保と家庭の生活をどう両立させるかという課題だった。

■ 2026年6月、議会で正式に問題提起

諸井市議は2026年6月10日、豊橋市議会の一般質問で「学校の宿泊行事における特別な配慮が必要な児童生徒の保護者の付き添いについて」を取り上げた。

一般質問は、市議会議員が市政について行政側の考え方や対応を確認する重要な機会である。

保護者から寄せられた課題を議会で取り上げることで、市の制度や運用について説明を求めることができる。

今回の問題には、特別支援教育、合理的配慮、学校の安全管理、保護者の費用負担など、複数の政策分野が関係している。

諸井市議は、その中でも保護者の付き添いに伴う負担に焦点を当てた。

日常の学校生活では見えにくい問題を、宿泊行事という具体的な場面から取り上げた形だ。

■ 学校から付き添いを求めるなら、費用の支援はできないのか

諸井市議は今回のインタビューで、学校から保護者に付き添いを求める場合の費用負担についても言及した。

保護者が自主的に旅行へ同行する場合と、学校が安全確保のために付き添いを依頼する場合とでは、事情が異なる。

学校側から必要性を説明されて同行するのであれば、その交通費や宿泊費などについて、行政が支援する仕組みを検討できないか。

諸井市議は、こうした問題意識から市に働きかけたという。

医療的ケアが必要な児童・生徒と、身体介助などを必要とする児童・生徒では、支援の取り扱いが異なる場合があることについても課題として捉えていた。

必要となる支援の内容が違うことは、当然考慮しなければならない。

しかし、どちらの場合も、子どもが学校行事に参加するために支援が必要であるという点では共通している。

諸井市議が問うたのは、そうした支援の必要性を、保護者の経済的負担という側面からも考えられないかということだった。

■ 「安全のため」という理由だけで家庭に負担を求めてよいのか

学校が保護者の付き添いを求める背景には、安全確保という重要な事情がある。

宿泊行事では、通常の授業時間とは異なり、夜間にも対応が必要になる場合がある。

支援員や看護師などの配置には、人員や費用の制約もある。

そのため、学校側の事情を無視して付き添いの問題を論じることはできない。

一方、学校が安全を確保する責任を負っていることと、そのための負担をすべて保護者が担うことは別の問題だ。

文部科学省は、障害のある児童・生徒の修学旅行について、移動や介助の必要性を理由に保護者の同行を参加条件とすることは、不利益な取り扱いに当たると考えられるとの見解を示している。

また、目的地や旅程の調整、教員による介助の分担など、合理的配慮の方法を検討する必要があるとしている。

もちろん、個々の児童・生徒に必要な支援は異なる。

学校と保護者が十分に話し合い、安全確保のためにどのような体制が必要なのかを検討することが重要だ。

諸井市議の問題提起も、学校の安全確保を否定するものではない。

必要な安全を確保しながら、保護者の負担を軽減する方法がないかという問いだった。