看護師を地域に定着させるための制度は、自治体や大学によって大きく異なる。
福井県敦賀市の敦賀市立看護大学では、2026年に実施した学生調査で県外就職希望が64.5%となったことを受け、市内病院の情報発信や県内勤務の卒業生との交流など、地元就職への働きかけを強化する。
一方、滋賀県では県内3大学に「看護地域枠」を設け、奨学金と県内勤務を組み合わせた制度を運用している。
2027年4月開設予定の名古屋市立大学「蒲郡キャンパス」は、地域医療への貢献を掲げる一方、卒業後の三河地域への就職は義務付けない。
地域の看護人材確保という同じ目的でも、制度設計には明確な違いがある。
敦賀 県外就職希望64.5%、就職支援を強化
敦賀市立看護大学の学生生活実態調査では、203人のうち131人、64.5%が県外での就職を希望した。
敦賀市内を希望した学生は22人、10.8%だった。
大学は、市内や県内で就職する学生が近年減少していることから、市内病院の情報発信や、県内で勤務する卒業生との交流を強化する方針を示している。
学生の就職先を制度で限定するのではなく、情報提供やキャリア支援によって地元就職を促す形となる。
滋賀 3大学に最大45人の看護地域枠
滋賀県では、滋賀医科大学、滋賀県立大学、聖泉大学の3大学と連携し、看護地域枠を設けている。
募集予定人数は最大45人。
将来、滋賀県内で看護職として働く意思を持つ学生を対象とし、県の奨学金制度と組み合わせて地域定着を促している。
一定の条件を満たして県内の対象施設で勤務した場合、奨学金の返還免除を受けられる仕組みもある。
入試段階から地域就職の意思を確認し、経済支援と卒業後の勤務を制度的につなげている点が特徴だ。
蒲郡 地域貢献意欲を確認、就職義務はなし
名市大蒲郡キャンパスは1学年50人を予定する。
大学は、主に三河地域の地域医療に貢献する看護職員の育成を設置目的の一つとしている。
学校推薦型選抜Aでは、蒲郡市をはじめとする三河地方の保健医療機関に貢献する意欲を持つことを要件の一つとしている。
一方、卒業後に三河地域の医療機関へ就職する義務はない。
地域貢献意欲を入試で確認しつつ、就職先の選択は学生本人に委ねる制度となる。
蒲郡市は修学資金を月額5万円へ
蒲郡市では看護師等修学資金制度も見直している。
2026年9月の条例改正で、貸与額は月額4万円から5万円へ引き上げられた。
一定の条件を満たして看護師等として勤務した場合には、返還免除の仕組みも設けられている。
今後は、制度の利用者数と、そのうち何人が蒲郡市や東三河の医療機関へ就職したかを確認する必要がある。
学生の出身地も地域定着に影響
地域定着には制度だけでなく、学生の出身地域も影響する。
敦賀市立看護大学では、県外出身学生が多いことを大学自身が課題としている。
2021年度入学者56人のうち福井県内出身は22人、県外出身は34人だった。
蒲郡キャンパスでも、50人の入学者について蒲郡市、東三河、愛知県内、県外の構成を継続して確認する必要がある。
3地域で異なる地域定着策
敦賀では、病院情報の提供や卒業生との交流を通じて地元就職を促す。
滋賀では、地域枠と奨学金を制度として組み合わせる。
蒲郡では、地域貢献意欲を入試で確認し、市の修学資金制度を活用する一方、卒業後の三河就職は義務付けない。
制度の違いが実際の地域就職率にどの程度影響するかは、今後の実績で確認する必要がある。
編集部まとめ
看護師の地域定着策は、敦賀、滋賀、蒲郡で異なる。
敦賀は就職支援、滋賀は地域枠と奨学金、蒲郡は地域貢献意欲を重視した入試と修学資金制度を採用している。
重要なのは制度を設けたこと自体ではなく、その結果として何人が地域へ就職し、定着したかだ。
名市大蒲郡キャンパスについても、開設後は地域就職者数と定着率を継続して確認する必要がある。
週刊TAKAPI 編集部
特記事項
各地域の制度は、大学の設置形態、人口、学生の出身地、医療需要、奨学金の条件などが異なる。
本記事は制度の優劣を順位付けするものではなく、地域定着策の仕組みの違いを比較したものです。
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