【独自インタビュー】「子どもを支える家族にも休息を」医療的ケア児の負担軽減を議会で訴えた諸井菜々子市議――豊橋市で始まった新たな支援制度

週刊TAKAPI|独自インタビュー連載 第5回

取材日:2026年9月25日
取材場所:豊橋市役所
担当記者:鈴木・成田
記事更新日:2026年10月19日

医療的なケアが必要な子どもを、自宅で育てる家族がいる。

日々の生活では、子どもの体調を確認し、必要な医療的ケアを行いながら、食事や家事、仕事、きょうだいの世話にも向き合わなければならない。

家族にとって、子どもを大切に思う気持ちと、心身を休める時間が必要であることは、決して矛盾しない。

しかし、医療的ケアが必要な子どもを安心して任せられる支援体制がなければ、保護者が休息を取ることさえ難しくなる。

こうした医療的ケア児と家族の生活に目を向け、豊橋市議会で支援の充実を求めてきたのが、諸井菜々子市議だ。

諸井市議は2024年3月7日の一般質問で、「医療的ケア児とその家族が安心して暮らすために必要な支援について」を取り上げた。

その翌年度となる2025年度、豊橋市は「医療的ケア児在宅レスパイト事業」を新たに導入した。

訪問看護師が家庭を訪問し、家族に代わって一定時間、子どもの医療的ケアや介護を担う制度だ。

市の予算資料には、24時間の付き添いによって休息を取りにくいことや、きょうだいと過ごす時間を確保できないことなど、家族の悩みが明記されている。

諸井市議が議会で取り上げた問題と、その後に市が導入した制度には、家族の介護負担を軽減するという共通の課題がある。

週刊TAKAPIは2026年9月25日、豊橋市役所で諸井市議に独自インタビューを実施した。

連載第5回では、医療的ケア児とその家族を支えるための政策、諸井市議の議会活動、そして豊橋市で始まった新たな支援制度について詳しく取り上げる。

■ 子どもを守る毎日。その家族を支える制度は十分なのか

医療的ケア児とは、日常生活や社会生活を送るために、人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引などの医療的ケアが継続的に必要な子どもを指す。

必要な医療的ケアの内容や頻度は、一人ひとり異なる。

家庭によっては、昼夜を問わず子どもの状態を確認し、必要に応じて対応する生活が続くこともある。

子どもの命と健康を守るためには、家族による日常的な介護だけでなく、医療機関や訪問看護、福祉サービスなどによる継続的な支援が重要になる。

一方、医療的ケア児への支援を考える際、見落としてはならないのが家族自身の生活だ。

保護者も仕事をし、食事を取り、眠り、休息を必要とする。

きょうだいがいる家庭では、ほかの子どもと過ごす時間も必要になる。

しかし、必要な医療的ケアを代わりに担える人がいなければ、保護者が一時的に介護から離れることすら難しい。

子どもへの支援と、家族への支援。

その両方をどう確保するかが、医療的ケア児を取り巻く重要な課題となっている。

■ 諸井菜々子市議が2024年3月に一般質問

諸井市議は2024年3月7日、豊橋市議会の一般質問で、医療的ケア児とその家族が安心して暮らすために必要な支援について取り上げた。

この質問は豊橋市議会の公開記録でも確認できる。

諸井市議が市議として取り組んできた政策には、子育て、医療、障害福祉、教育など、家庭の生活に深く関わるテーマが多い。

2023年12月には、豊橋市民病院で子どもが入院する際の保護者の付き添い負担を一般質問で取り上げた。

そして2024年3月には、在宅で医療的ケアを受ける子どもと、その家族への支援について問題提起した。

医療機関での付き添いと、在宅での医療的ケア。

場所や支援の仕組みは異なるものの、どちらも家族の生活に大きな負担が生じ得るという点で共通している。

諸井市議は、医療や福祉の制度を利用する本人だけでなく、その生活を支える家族にも目を向けてきた。

■ 看護師としての経験を持つ諸井市議

諸井市議は、市議会議員になる前に看護師として働いた経験を持つ。

週刊TAKAPIの独自インタビュー第1回では、看護師から政治の道へ進んだ経緯や、市民の声を政策に届けようとする思いを紹介した。

医療的ケア児の支援は、医療と福祉の両方に関わる問題だ。

医療的な対応が必要だからこそ、専門職の協力が欠かせない。

一方、医療サービスだけでは、家庭の生活全体を支えきれない場合もある。

子どもの医療的ケアを安全に確保しながら、家族の休息や就労、きょうだいとの時間をどう守るか。

そうした問題は、医療だけでも、福祉だけでも完結しない。

諸井市議が議会で取り上げてきた政策には、異なる制度の間で生じる負担を、家庭の立場から捉えようとする共通点がある。

■ 翌年度、豊橋市が新たな支援制度を導入

諸井市議が一般質問を行った翌年度、豊橋市では医療的ケア児とその家族を対象とする新たな支援制度が始まった。

2025年度に導入された「医療的ケア児在宅レスパイト事業」だ。

豊橋市が公表した2025年度予算資料によると、同事業の新規事業費は157万円。

在宅で医療的ケアを受ける子どものいる家庭に訪問看護師が訪問し、家族に代わって看護や介護を行うことで、家族が一時的に休息できる時間を確保する。

制度の目的は、家族の負担軽減にある。

市の資料には、医療保険の適用を超える訪問看護が高額になることや、24時間の付き添いによって休息が取れないこと、きょうだいと関わる時間が確保しにくいことなどが課題として示されている。

家族に必要なのは、単なる金銭的な援助だけではない。

安心して子どもを任せられる時間そのものが、重要な支援となる。

豊橋市が導入した制度は、そうした家庭の現実に対応するための取り組みだ。

■ 年間最大48時間、利用者負担なし

豊橋市が公表している制度では、利用対象は市内在住で、医師の訪問看護指示書による医療的ケアを必要とし、在宅で家族の介護を受けながら訪問看護を利用している児童などとされている。

対象となる年齢は、0歳から18歳に達した日以降の最初の3月31日まで。

利用できる時間は、年度内で最大48時間。

1回当たり1時間以上、1時間単位で利用できる。

利用者の自己負担はない。

ただし、利用に当たっては、現在利用している訪問看護ステーション等が制度に対応できるかを確認し、市への申請や事業者との契約などの手続きを行う必要がある。

また、利用可能な日時は訪問看護ステーション等との調整が必要となる。

年間48時間という時間数は、日々の介護すべてを代替するものではない。

それでも、必要なときに家族が医療的ケアを専門職へ任せられる仕組みが用意されたことには、具体的な制度上の意味がある。

■ 休息だけではない。「きょうだいとの時間」を守る支援

豊橋市の実施要綱で注目されるのは、制度の目的に、家族の休息時間の確保や介護負担の軽減だけでなく、きょうだいと過ごす時間をつくることも明記されている点だ。

医療的ケアを必要とする子どもがいる家庭では、保護者の時間や注意が、その子のケアに集中しなければならない場合がある。

その結果、ほかの子どもとゆっくり過ごす時間を確保することが難しくなることも考えられる。

家族の誰かが支援を必要としているとき、その支援を家族だけに任せるのではなく、専門職や行政が一部を担う。

そうすることで、保護者が休息を取ったり、きょうだいと過ごしたりする時間を確保できる可能性が生まれる。

レスパイト支援は、介護を担う家族が疲労を回復するためだけの制度ではない。

家族それぞれの日常生活を支えるという意味も持っている。

■ 議会での問題提起と制度新設。どこまでつながっているのか

諸井市議が医療的ケア児と家族への支援について一般質問を行ったのは2024年3月。

豊橋市が医療的ケア児在宅レスパイト事業を新たに予算化したのは2025年度だ。

議会で取り上げた課題と、その後に導入された制度の方向性には明確な共通点がある。

ただし、この時系列だけで、諸井市議の質問が直接のきっかけとなって制度が新設されたと断定することはできない。

新規事業の導入には、行政内部の検討や関係機関との協議、当事者家族の要望、国や県の政策など、複数の要因が関わる可能性がある。

豊橋市が公表した予算資料にも、特定の議員の提案を受けて事業を創設したという説明は確認されていない。

一方、諸井市議が市議会で医療的ケア児と家族の支援を取り上げ、その後、豊橋市で同じ政策分野の具体的な新規事業が始まったことは、公的記録から確認できる。

議員が取り上げた課題と、その後の行政の動きを照らし合わせることは、地方政治の実態を知るうえで重要だ。

■ 制度が始まっても、すべての家庭が利用できるとは限らない

新たな支援制度が導入されたことと、必要とする家庭すべてに支援が届いていることは、必ずしも同じではない。

豊橋市の制度では、すでに訪問看護を利用していることなどが対象要件となっている。

また、利用可能な日時については訪問看護ステーション等との調整が必要だ。

そのため、制度を利用できる条件に該当していても、実際に希望する日時にサービスを受けられるとは限らない。

利用できる事業者がどの程度存在するのか。

利用希望が集中した場合に対応できるのか。

年間48時間という上限は、家族の実際のニーズに対して十分なのか。

制度開始後の利用状況を確認することで、こうした課題も見えてくる。

■ 市の会議録にも残る、家族の負担と地域の課題

豊橋市が公表した2025年度の関係会議の議事録では、医療的ケア児に関する支援の現状も報告されている。

議事録には、2025年度からレスパイト事業が始まったことに加え、医療的ケア児のいる家庭では日常の世話やきょうだいへの対応など、負担が大きいことが記されている。

また、地域には短期入所施設が少なく、利用先の充実を求める声が多いとの指摘もあった。

在宅レスパイト事業が始まっても、家族が必要とする支援はそれだけではない。

子どもを一定期間預けられる短期入所の体制や、医療機関、訪問看護、学校などとの連携も重要になる。

制度を新設することは支援の一歩だが、実際の利用状況や残された需要を継続して確認する必要がある。

■ 一つの制度から見えてくる、諸井市議の政策への関わり方

これまでの独自インタビュー連載では、諸井市議が関わってきた子育てや福祉、教育に関する課題を取り上げてきた。

第2回では、放課後等デイサービスの地域偏在と総量規制の問題を紹介した。

市全体では定員が足りていても、住んでいる地域や送迎の事情によって必要な家庭が利用できない場合がある。

第3回では、預かり保育の時間延長を求める保護者の請願について紹介した。

第4回では、障害のある児童・生徒の修学旅行における保護者の付き添いと費用負担を取り上げた。

そして今回の第5回では、医療的ケア児を支える家族の休息という問題に焦点を当てた。

それぞれの政策課題には共通する視点がある。

制度が整っていても、実際の生活の中では利用しにくい場合があること。

行政の支援対象となる本人だけでなく、その家族にも負担が生じること。

そして、個々の家庭が抱える問題を、行政がどのように受け止めるかということだ。

諸井市議が議会で取り上げてきたテーマには、子どもと家族の生活に関わる具体的な問題が繰り返し登場している。

■ 「制度がある」から「実際に使える」へ

医療的ケア児在宅レスパイト事業は、豊橋市における家族支援の一つの仕組みとなった。

しかし、制度の存在だけで支援の成果を判断することはできない。

必要な家庭が制度を知っているのか。

申請の手続きは分かりやすいのか。

訪問看護ステーション等は十分に対応できているのか。

家族が本当に必要とする時間帯に利用できているのか。

こうした点は、今後も確認が必要となる。

行政が制度を設けることは重要だが、制度を利用する家庭にとっては、実際に必要な支援を受けられるかどうかが何より大切だ。

今回の問題は、子どもと家族を支えるための制度が、日常生活の中でどのように機能しているかを問いかけている。

■ 「制度の狭間」にある声を、これからも市政へ

諸井市議は今回の独自インタビューを通じて、保護者や子どもが抱える課題を市政に届けることの重要性を語った。

地方議員が行政へ問題を提起しても、必ずしもすぐに政策の変更や新しい予算措置につながるわけではない。

それでも、市民が日常生活の中で感じている問題を議会で取り上げることには意味がある。

医療的ケア児の家族が休息を確保するという課題も、そうした政策分野の一つだ。

2024年3月、諸井市議はこの問題を議会で取り上げた。

2025年度、豊橋市は在宅レスパイト事業を新たに導入した。

その後も、市の会議録には家族の負担や短期入所施設の不足など、支援体制に関する課題が残されている。

議会での問題提起、行政による制度化、そして制度開始後の検証。

こうした過程を継続して確認することで、市民の暮らしに関わる政策がどのように進められているのかが見えてくる。

医療的ケアを必要とする子どもが安心して暮らせること。

その子どもを支える家族にも、休息し、自分自身やほかの家族との時間を持てる環境があること。

どちらも大切な支援の課題だ。

諸井市議が議会で取り上げてきた問題と、豊橋市が始めた制度について、週刊TAKAPIでは引き続き検証を進めていく。

【独自インタビュー連載は続く】

週刊TAKAPIでは、2026年9月25日に豊橋市役所で実施した諸井菜々子市議への独自インタビューを、複数回にわたって掲載している。

第1回では、看護師から豊橋市議会議員へ進んだ経緯。

第2回では、放課後等デイサービスの地域偏在と総量規制。

第3回では、預かり保育の時間延長を求める保護者の請願。

第4回では、障害のある子どもの修学旅行と保護者の付き添い負担。

そして第5回となる今回は、医療的ケア児と家族への在宅レスパイト支援を取り上げた。

今後は、豊橋市の行政AI活用や新アリーナ事業、廃プラスチック野積み問題など、市政全般に関わるテーマについても順次掲載する予定だ。

本人の発言と公式資料を照合しながら、議会での取り組みと市政の実態を伝えていく。

週刊TAKAPIの独自インタビュー連載は、次回へ続く。


【取材概要】

取材対象:豊橋市議会議員・諸井菜々子氏
取材日:2026年9月25日
取材場所:豊橋市役所
担当記者:鈴木・成田
記事更新日:2026年10月19日

※本記事は、週刊TAKAPIが実施した独自インタビューおよび豊橋市議会・豊橋市の公開資料を基に構成した。医療的ケア児在宅レスパイト事業の創設と、諸井市議の一般質問との直接的な因果関係は確認されていない。

WEEKLY TAKAPI — OFFICIAL CONTACT

TAKAPI LEAKS

その情報が、社会を動かす。

情報提供・取材相談・記事の訂正や削除依頼を
全国から受け付けています。

◆ ご連絡内容は慎重に取り扱います

情報提供・各種お問い合わせ ↗

記事の訂正・削除依頼もこちらから

コメント

0件

まだコメントはありません。最初のコメントを投稿してみませんか。

コメントを投稿する

名前は空欄でも投稿できます。その場合は「匿名」と表示されます。