【愛知・豊橋】市民病院ICUは改修で閉鎖、患者1498人 重症救急の診療体制はどう維持されているのか

豊橋市民病院の外観。2026年1月からのICU改修に伴う閉鎖と、重症患者の診療体制を検証する週刊TAKAPIの報道画像

東三河の高度急性期医療を担う豊橋市民病院で、集中治療室(ICU)の全面改修が進んでいる。従来の6床を8床に増やし、重症患者の治療に必要な設備や療養環境を整える計画で、2026年12月の使用開始を予定している。

一方、豊橋市が9月に公表した「2025年度豊橋市民病院経営強化プラン取組状況報告書」には、改修工事に伴い、同年1月からICUを閉鎖していると記されていた。

2025年度のICU患者数は1,498人。前年度から241人減少したが、病院は閉鎖期間の影響を理由に挙げ、1日当たりの入院患者数はほぼ横ばいだったと説明している。

豊橋市民病院は、救急車やドクターヘリで運ばれる重症患者を受け入れる救命救急センターを備える。ICUの改修期間中、その機能をどのように維持しているのか。

週刊TAKAPIは、市の経営強化プラン取組状況報告書、病院の救急搬送実績、改修計画を照合した。そこからは設備更新の必要性とともに、工事中の診療体制について確認すべき課題も見えてきた。

ICU患者数は1739人から1498人に 工事による閉鎖が影響

豊橋市が公表した資料によると、集中治療室患者数は2022年度の1,549人から、2023年度は1,649人、2024年度は1,739人と増加していた。

2025年度は1,498人に減少したものの、病院はその要因として2026年1月からの改修工事によるICU閉鎖を挙げている。

報告書では、1日当たりの入院患者数について、2024年度が4.76人、2025年度が4.99人だったと説明した。年度全体の患者数は減少している一方、病院が示す1日当たりの数字はほぼ変わっていない。

つまり、年間患者数が減ったという事実だけで、集中治療を必要とする患者が減少したとは判断できない。

ただし、報告書には「集中治療室患者数」の集計方法や、閉鎖期間中に使用した代替病床の詳細までは示されていない。年度ごとの実績を正確に比較するには、稼働日数や集計対象を確認する必要がある。

ICU閉鎖中、重症患者はどこで治療を受けているのか

今回の資料で最も確認が必要なのは、改修期間中の重症患者の診療体制だ。

豊橋市民病院は、24時間365日の救急医療を担う救命救急センターを設置している。2025年の救急外来受診患者数は2万4,476人、救急搬送患者数は7,259人だった。

ICUは生命に危険が及ぶ患者や、大きな手術を受けた後に厳重な管理が必要な患者を治療する施設である。人工呼吸器などを使用する場合には、医師、看護師、臨床工学技士らが連携して患者の状態を管理する。

市の報告書には、2026年1月から救急入院センターの効率的な運用に取り組んでいることも記されている。

しかし、同センターが閉鎖前のICU機能をどの程度代替しているかについては、具体的な説明が確認できなかった。

ICUの閉鎖は、病院全体の救急診療の停止を意味するものではない。一方、従来ICUで治療していた患者をどの病床で受け入れ、どのような人員配置で対応しているかは、重症患者の受入能力を評価するために欠かせない情報となる。

現時点で、改修によって重症患者の受入れが制限されていると断定する根拠はない。ただし、改修期間中の具体的な診療体制については、病院への直接確認が必要だ。

6床から8床に増床 約4億円を投じて治療環境を改善

豊橋市は2026年10月5日、集中治療センターの改修計画について詳しい内容を公表した。

工事費は約4億円。病床を6床から8床に増やし、1床当たりの面積を約5平方メートル拡張する。人工透析などに使用する医療機器を全病床で扱えるようにし、患者の移動や医療スタッフの負担を減らす考えだ。

さらに、感染症への対応を強化するため、一部の病室には独立した空間と空調設備を設ける。医療機器の維持管理を専門とする臨床工学技士についても、院内に常時配置する方針を示している。

こうした改修は、単なる老朽設備の交換にとどまらない。

重症患者の治療には、多くの医療機器を同時に使用する場合があり、病床周囲のスペースや医療スタッフの動線が治療環境に関わる。患者の状態によっては、機器を使うために病床を移動させる負担が生じることもある。

新しいICUでは、それらの制約を減らすことが期待される。

ただし、病床を2床増やしたことが、そのまま重症患者の受入人数の増加につながるわけではない。病床の稼働には、治療に必要な人員と医療機器を継続して確保する必要がある。

看護師は計画比25人減 新ICUの稼働を支える人員体制

豊橋市民病院の人員計画にも、確認すべき数字がある。

2026年4月1日時点の看護師数は810人。前年度の777人から33人増えたものの、計画人数835人を25人下回った。

病院は採用を進めているが、過年度からの欠員を十分に補えていないと説明している。

一方、医師数は242人で、計画の230人を上回った。専門医数は2024年度の127人から2025年度は121人に減少し、認定看護師は31人から33人に増えている。

これらは病院全体の数字であり、ICU専属の医師や看護師の配置状況を表すものではない。

そのため、看護師が計画より25人少ないことを理由に、新しいICUの8床を稼働させられないと判断することはできない。

しかし、集中治療を担うスタッフには専門的な経験と技術が求められる。2026年12月の使用開始に向け、必要な人数が確保されているかどうかは重要な検証事項となる。

設備の整備と人材の確保は、どちらか一方だけでは十分ではない。

救急搬送7259人 応需率92.0%の集計方法にも確認事項

豊橋市民病院が公表する2025年の救急搬送患者数は7,259人だった。前年の7,278人から19人減少している。

救急搬送の受入要請に応じられなかった件数は375件。こちらは2024年と同数だった。

一方、病院が公表する応需率は、2024年の95.0%に対して2025年は92.0%となっている。

この数字についても、集計方法の確認が必要だ。

仮に救急搬送患者7,259人と不応需375件を同じ集計対象として計算した場合、応需率は約95.1%となり、公表されている92.0%とは一致しない。

受入患者数と不応需数の集計対象が異なる可能性もあるため、直ちに誤記と判断することはできない。ただし、2024年と2025年で不応需件数が変わっていないにもかかわらず、応需率が3ポイント低下している理由については説明が必要だ。

救急搬送の応需率は、地域の救急医療体制を評価する際に重要な指標となる。公表された数字が何を示しているのかを明確にすることで、実際の受入能力について、より正確に検証できる。

50床削減とICU増床 東三河の重症患者をどう支えるか

豊橋市民病院は、経営強化プランで病院全体の病床数を800床から750床に減らす方針を示している。

平均在院日数の短縮や一般病床の利用率低下を踏まえ、病床配置を見直しながら、高度急性期医療の機能を強化する考えだ。

2025年度の1日平均入院患者数は645人で、計画の680人を下回った。一般病床利用率も82.7%で、計画の85.0%には届かなかった。

ただし、病床を減らすことが直ちに救急医療の縮小を意味するわけではない。患者の状態に応じた医療機関との役割分担が機能すれば、入院期間を短縮しながら高度な治療を提供することも可能になる。

豊橋市民病院は、重症患者の治療を担う一方、急性期を脱した患者については地域の医療機関との連携を進める必要がある。

ドクターヘリや救急車が患者を運んできたとき、必要な治療を行える病床が確保されているか。その患者が回復段階に入ったとき、次の医療機関へ円滑につなげられるか。

東三河の救急医療を考えるうえでは、病床の数だけでなく、こうした一連の流れを検証する必要がある。

週刊TAKAPIは10月25日、豊橋市民病院の2025年度18.81億円の赤字と、総事業費15.65億円の施設改修、50床削減の関係を既に検証した。

今回の焦点は、財政の問題を繰り返すことではない。高度急性期医療を強化するための工事が進む間も、必要な医療をどう維持し、完成後にどのような改善を実現できるかという点にある。

編集部まとめ

豊橋市民病院の2025年度の集中治療室患者数は1,498人。前年度から241人減少したが、病院は2026年1月からの改修工事に伴う閉鎖期間が影響したと説明している。

改修後のICUは8床となる予定で、医療機器の配置や療養環境の改善も計画されている。

一方、閉鎖期間中の重症患者の受入体制や、新しいICUの具体的な人員配置については、確認できた公表資料だけでは全体像を把握できなかった。

救急搬送実績についても、病院が示す応需率と公表件数の関係を確認する必要がある。

東三河の重症患者を支える豊橋市民病院にとって、ICUの改修は重要な設備投資となる。ただし、その成果を判断するには、完成後の病床数だけでなく、工事中の診療体制と新施設の実際の稼働状況を確かめることが欠かせない。

特記事項

本記事は、豊橋市が2026年9月に公表した「2025年度豊橋市民病院経営強化プラン取組状況報告書」、豊橋市民病院の救命救急センター公表実績、2026年10月5日の豊橋市公表資料、ならびに経営強化プランを照合して構成した。

2025年度の集中治療室患者数1,498人と、2026年1月からのICU閉鎖については、同報告書16ページの記載による。救急搬送患者7,259人、救急搬送不応需375件、応需率92.0%は2025年1月から12月までの暦年集計であり、対象期間が異なる。

ICUの閉鎖は改修対象施設についての記述であり、病院全体の救急医療が停止したことを示すものではない。閉鎖中の代替診療体制、応需率の算出方法、改修後の詳細な人員配置については、公表資料で確認できる範囲に限界があり、病院への直接取材による回答を得たものではない。

Q豊橋市民病院のICUは現在閉鎖されているのですか?
A豊橋市の2025年度取組状況報告書には、2026年1月から改修工事のためICUを閉鎖していると記載されています。2026年12月の使用開始を予定しており、病院全体の救急診療が停止しているという意味ではありません。
QICU患者数が減少したのはなぜですか?
A2025年度は1,498人で、前年度から241人減少しました。病院は改修工事に伴う閉鎖期間が影響したと説明しています。
Q新しいICUは何床になりますか?
A6床から8床へ増床する計画です。1床当たりの面積を広げ、医療機器の使用環境や感染症対策を強化します。
QICUの閉鎖中、重症患者はどこで治療されているのですか?
A改修対象のICUに代わって、どの病床でどの程度の集中治療を提供しているのかは、今回確認した公表資料だけでは詳細が分かっていません。病院への直接確認が必要です。
Q救急搬送の応需率92.0%は正確ですか?
A病院の公式サイトには92.0%と掲載されています。ただし、救急搬送患者数と不応需件数から単純計算した割合とは一致していません。集計条件が異なる可能性もあるため、算出方法の確認が必要です。

週刊TAKAPI 編集部/成田

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