静岡県警は2026年10月28日、静岡県富士市の住宅を訪問し、給湯器に不具合があると偽って不要な工事を契約させようとしたとして、住宅設備業の27歳の男を詐欺未遂と特定商取引法違反の疑いで逮捕した。訪問販売に関わった20~31歳の男3人も、同法違反の疑いで逮捕された。
警察によると、4人が関係したとされる契約は2025年5月から2026年6月までに400件を超え、契約書に記載された金額の合計は約1億円に上る。警察はほかにも不適切な勧誘が行われていた可能性があるとみて捜査を進めている。ただし、約1億円は確認された契約の額面であり、すべてが詐欺被害として認定された金額ではない。
「配管にさびが付着」故障の危険を告げて契約か
警察によると、男らは2026年3~4月、富士市内の50~80代の男女3人の自宅を訪問し、給湯器の交換などを勧誘した疑いが持たれている。給湯器に接続された配管にさびが付着している、放置すれば故障する危険があるなどと説明し、必要のない工事を契約させようとしたとされる。
このうち70代女性に対する事案では、27歳の男が給湯器の故障への不安をあおり、約9万円の工事契約を結ばせて代金をだまし取ろうとした疑いが持たれている。女性は支払い前にクーリング・オフで契約を解除したため、代金を支払わずに済んだという。
今回の逮捕容疑に関係する3世帯は、いずれも契約解除によって金銭の支払いを免れたとされる。一方、契約時に交付された書面に不備があった疑いもあり、警察は勧誘の内容と契約手続きを調べている。4人の認否は明らかにされていない。
400件超、約1億円 契約額と被害額は別
男らは「ライフサポート」などの屋号で、給湯器や分電盤などの住宅設備機器の販売・施工を行っていたとされる。裾野市内などを拠点としていたとの情報もあり、警察は関係する取引の実態を調べている。
捜査で把握された契約は400件以上。契約期間は2025年5月から2026年6月までの約1年2カ月に及び、契約書上の金額は合計約1億円とされる。
ただし、400件のすべてで虚偽の説明が行われたと確認されたわけではない。実際に支払われた代金、契約解除された件数、不必要な工事が行われた件数、被害者の総数についても、現段階では明らかになっていない。
事件は3月、富士警察署に不審な取引について複数の相談が寄せられたことをきっかけに発覚したという。警察は逮捕容疑の3件以外にも同様の問題がなかったか、余罪を含めて捜査を続けている。
詐欺未遂と特定商取引法違反 何が問題なのか
今回の逮捕では、27歳の男に詐欺未遂と特定商取引法違反の疑いが、ほかの3人には特定商取引法違反の疑いが持たれている。4人全員が詐欺未遂容疑で逮捕されたわけではない。
詐欺未遂容疑は、不要な工事を必要だと思わせ、代金をだまし取ろうとしたとされる行為に関わる。一方、特定商取引法では、訪問販売の際に事実と異なる説明をして契約を勧誘する行為や、法令で定められた事項を記載した書面を交付しない行為などを規制している。
消費者が適切に契約内容を判断できるようにするため、事業者には説明や書面交付に関する義務が課されている。今回の事案については、具体的な書面の不備や、4人それぞれがどの勧誘に関与したのかという点が捜査上の焦点となる。
点検商法の相談は全国で年間約2万件
給湯器の故障や配管の劣化を口実にした訪問販売は、全国でも消費者トラブルが問題になっている。
国民生活センターによると、2025年度に全国の消費生活センターなどに寄せられた点検商法全般の相談は1万9696件だった。2024年度の1万9249件から増加しており、高水準が続いている。
これは屋根や分電盤なども含む点検商法全般の相談件数であり、給湯器だけの件数ではない。また、相談件数と実際の被害件数も同じではない。
同センターが2024年2月に公表した給湯器の点検商法に関する調査では、契約当事者の7割以上が70歳以上だった。高齢者を中心に、不意の電話や訪問で点検を持ちかけ、故障や事故への不安をあおって契約を急がせる事例が報告されている。
「今すぐ交換が必要」と言われたら 契約前の確認が重要
給湯器は長期間使用すれば劣化し、点検や交換が必要になる場合がある。したがって、交換の勧誘がすべて不当というわけではない。しかし、突然訪れた業者から危険性を指摘されても、その説明だけで直ちに契約する必要はない。
国民生活センターは、給湯器の点検を持ちかける業者を安易に自宅へ入れず、その場で契約を決めないよう呼びかけている。交換が必要か判断に迷う場合は、契約中のガス事業者や給湯器メーカーなどに確認し、必要に応じて複数の見積もりを比較することが重要だ。
特定商取引法の訪問販売に該当する契約では、原則として法定書面を受け取った日から8日以内であれば、書面や電子メールなどでクーリング・オフができる。書面の不備や不当な説明があった場合には、8日を経過しても契約解除などが認められる場合がある。
今回の事件では、逮捕容疑となった3世帯が代金の支払いを免れた一方、400件を超える契約の実態は捜査中だ。今後は、どの範囲で不適切な勧誘が行われていたのか、実際に金銭被害が生じた契約があるのか、その全容の解明が焦点となる。
編集部まとめ
静岡県富士市で、給湯器の故障への不安をあおり、不要な工事を契約させようとした疑いで男4人が逮捕された。関係する契約は400件を超え、額面合計は約1億円に上るが、これを確定した詐欺被害額とみなすことはできない。今回の逮捕容疑に関係する3世帯は代金の支払いを免れており、警察はほかの契約の実態を調べている。突然の点検勧誘で不具合を指摘されても、その場で契約せず、信頼できる事業者への確認や消費生活センターへの相談が重要となる。
特記事項
2026年10月29日時点で確認できる県警の捜査情報を伝えた複数の報道、および消費者行政の公表資料を照合した。約1億円は契約書上の金額であり、確定被害額とは区別した。容疑者の認否、400件超の契約のうち不適切な勧誘が行われた範囲、実際の支払総額は未確認である。
週刊TAKAPI編集部/黒木
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