埼玉県教育委員会は2026年10月29日、児童3人の胸ぐらをつかみ、体を押すなどの体罰を行ったほか、計11人に不適切な指導を繰り返したとして、杉戸町立杉戸小学校に所属する男性教諭(30)を減給3カ月の懲戒処分にしたと発表した。問題となった行為は、2025年7月ごろから2026年2月上旬ごろまで、当時勤務していた杉戸町立泉小学校で行われていた。
県教委が体罰を認定した児童は3人で、不適切な指導の対象となった11人には、この3人が含まれている。複数の児童に対して問題のある指導が繰り返されていたことが明らかになった一方、学校側がいつ問題を把握したのか、児童への支援や保護者への説明がどのように行われたのかについては、公表資料では明らかにされていない。
胸ぐらをつかみ、体を押す 3人への体罰を認定
県教委の発表によると、男性教諭は泉小学校に勤務していた2025年7月ごろから2026年2月上旬ごろまでの間、校内で児童を指導する際、3人の胸ぐらをつかみ、体を押すなどの体罰を行った。
さらに、体罰を受けた3人を含む計11人に対して、不適切な指導を繰り返していたという。県教委はこれらの行為を認定し、10月29日付で減給3カ月の懲戒処分とした。
ただし、体罰が何回行われたのか、3人それぞれにどのような行為があったのかについては、具体的な説明がない。残る8人への不適切指導の内容や、児童にけががあったかどうかも公表されていない。
今回の問題を正確に把握するには、身体的な体罰を受けた3人と、それ以外の不適切指導を受けた児童を区別する必要がある。
2025年7月から翌年2月まで 学校はいつ問題を把握したのか
今回の処分で見過ごせないのは、問題となった指導が約7カ月にわたる期間に繰り返されていた点だ。
県教委は行為のあった期間を明らかにしているが、最初に問題を把握した時期や発覚の端緒、学校側の調査経緯については説明していない。児童本人や保護者から相談があったのか、同僚教員や管理職が指導の状況を認識していたのかについても確認できていない。
このため、学校側が約7カ月間にわたって体罰を見逃していたと断定することはできない。しかし、複数の児童が不適切な指導の対象となっていた以上、その行為を学校としてどのように把握し、いつ是正に向けた対応を取ったのかは重要な検証事項となる。
特に、身体的な体罰だけでなく、不適切な指導が繰り返されていたと認定されていることから、指導の具体的な内容と学校内の確認体制を明らかにする必要がある。
現在は別の小学校に所属 異動の経緯は未公表
男性教諭は、問題が起きた当時は杉戸町立泉小学校に勤務していたが、処分発表時の所属は杉戸町立杉戸小学校となっている。
ただし、所属が変わった年月日や理由について県教委は説明していない。今回の体罰を理由とした異動だったのか、通常の人事異動によるものなのかは判断できない。
また、県教委の公表資料には、男性教諭が問題発覚後にどのような指導業務を担当していたのか、現在の勤務先でどのような対応が取られているのかについても記載がない。
教員の処分に関する情報を公表する際には、行為当時の学校と現在の所属先を区別することが重要だ。そのうえで、児童の安全を確保するために教育委員会がどのような措置を講じたのか、説明できる範囲を明らかにすることが求められる。
学校教育法は体罰を禁止 指導の目的では正当化されず
学校教育法第11条は、校長や教員が教育上必要な懲戒を行うことを認める一方、体罰を明確に禁止している。
文部科学省も、児童生徒の身体を侵害したり、肉体的な苦痛を与えたりする体罰は認められず、教育上の指導を目的としていても正当化されないと説明している。
教員は児童の問題行動に対応する必要があるが、その方法には法的な限界がある。今回の胸ぐらをつかんで体を押す行為については、県教委が身体的な体罰として認定した。
教育現場では、児童の行動を正すことと、児童の身体や尊厳を守ることを両立させなければならない。問題のある指導が確認された場合、当該教員への処分だけでなく、学校全体で指導方法を見直すことも重要となる。
埼玉県の体罰等は年間12件 最多は「胸ぐらをつかむ」
埼玉県教委が2026年7月9日に公表した2025年度の体罰等の実態把握結果では、さいたま市立学校を除く県内公立学校で、体罰等が12件確認されている。2024年度の19件からは減少したものの、体罰等を行った教職員は9人に上った。
学校種別では小学校が6件、中学校が4件、高校が2件だった。行為の態様では、胸ぐらをつかむ行為が4件と最も多く、素手でたたく行為と暴言・威嚇が各2件だった。
今回の杉戸町の事案も、県が2025年度の調査対象とした期間内に発生している。ただし、7月公表の統計に今回の事案が含まれているかどうかは確認できず、12件に新たな1件を加えることは適切ではない。
県内全体の発生件数が前年より減少していることと、個々の学校で体罰が防止されていたかどうかは別の問題だ。今回の処分を受け、県と町の教育委員会がどのような再発防止策を実施するのかが問われる。
児童11人への影響は 減給3カ月の判断と再発防止
今回の県教委の処分は減給3カ月だった。しかし、体罰が行われた具体的な回数や児童への影響、教諭の説明内容など、処分量定の判断に関わる詳細は公表されていない。
3人への体罰と計11人への不適切指導が認定された事案について、なぜ減給3カ月としたのか。その判断を検証するには、行為の悪質性や反復性、学校側の対応、児童に及んだ影響などについて、さらに確認する必要がある。
それ以上に重要なのは、体罰や不適切な指導を受けた児童への対応だ。学校や教育委員会が、児童の意向に配慮した聞き取りや心身への支援、保護者への説明をどのように行ったのかについては、今回の公表資料から確認できない。
処分によって教諭個人の責任が問われても、それだけで児童への影響が解消されたとはいえない。学校側が不適切な指導をどのように把握し、被害を受けた児童の学習環境をどう守るのか。今回の問題は、懲戒処分の発表だけでは終わらない教育現場の課題を示している。
編集部まとめ
埼玉県杉戸町の小学校で、30歳の男性教諭が児童3人に体罰を加え、その3人を含む計11人に不適切な指導を繰り返していたことが判明した。県教委は減給3カ月としたが、行為の回数、発覚の経緯、児童への支援状況などは公表されていない。行為が2025年7月から翌年2月までの期間に及んでいたことを踏まえれば、学校が問題を把握し、是正に向けて対応した経緯の検証が欠かせない。児童の保護と再発防止策の具体化が求められる。
特記事項
2026年10月29日16時公表の埼玉県教育委員会の懲戒処分資料、2025年度体罰等実態把握結果、学校教育法第11条、文部科学省通知を照合した。体罰対象3人と不適切指導対象11人を区別し、発覚経緯、児童の負傷・支援状況、異動理由などの未公表事項は断定していない。
週刊TAKAPI編集部/松本
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