愛知県内で自動車盗の被害が急減している。しかし、豊橋市では2025年に37件の自動車盗が認知され、2023年の5件から2年間で7倍以上に増加していたことが、市の公式資料で確認できた。
2026年に入ってからは減少に転じているものの、9月末までに市内で18件の被害が発生している。東三河の6警察署管内を合わせると30件となり、地域での盗難被害は依然として続いている。
愛知県全体では2026年1月から9月までの自動車盗が前年同期比56.9%減少した。それでも全国最多という状況は変わっていない。
急減の背景には、中東情勢による中古車輸出への影響や、盗難車の流通に関係する犯罪グループへの捜査などが考えられている。被害が減った理由と、豊橋・東三河で残る危険性を検証した。
豊橋市の自動車盗、2023年の5件から2025年には37件
豊橋市が2026年3月に策定した「第7次安全で安心なまちづくり行動計画」によると、市内の自動車盗認知件数は2023年が5件、2024年が16件、2025年が37件だった。
2025年の37件は前年比21件増で、2023年と比較すると7.4倍に当たる。
市は行動計画の中で、2025年に自動車盗が多く発生し、特定の車種が狙われたことを指摘している。
一方、2026年1月から9月末までの認知件数は18件で、前年同期の30件から12件、40%減少した。
改善傾向は見られるものの、2025年以前に被害が急増していた経緯を踏まえると、今後も警戒が必要な状況だ。
豊川・蒲郡でも各5件、東三河全体で30件
自動車盗の被害は豊橋市だけではない。
愛知県警が公表した2026年9月末時点の警察署別統計では、豊川署管内と蒲郡署管内でそれぞれ5件、田原署管内で2件が認知されている。
新城署と設楽署の管内では、同期間の認知件数は0件だった。
東三河6警察署管内の合計は30件で、このうち豊橋署管内の18件が60%を占めている。
また、車内の物品などを盗む「車上ねらい」は、豊橋署管内で51件、東三河全体では83件発生している。自動車そのものを盗む自動車盗とは別の犯罪だが、車両の保管環境を考えるうえで無視できない数字だ。愛知県公式サイト
愛知県全体では56.9%急減、それでも全国最多
愛知県では2025年、自動車盗が1051件認知され、2年連続で全国最多となった。
2026年は状況が大きく変わり、1月から9月末までの認知件数は382件。前年同期の886件から504件減少した。
減少率は56.9%で、全国全体の45.2%減を上回る。
それでも愛知県の382件は大阪府の315件、千葉県の286件を上回り、全国ワースト1位の状態が続いている。
一方で、愛知県内のオートバイ盗は前年同期比67.6%増、自転車盗は9.2%増となっている。自動車盗だけが大きく減少している点は注目される。愛知県警察+2
なぜ盗難が減ったのか 中東情勢と海外流通に変化
急減の背景として浮上しているのが、中東情勢の変化だ。
日本から輸出される中古車は、アラブ首長国連邦(UAE)などを経由して、アフリカをはじめとする海外市場に再輸出されることがある。
2026年春以降、ホルムズ海峡をめぐる混乱などによって海上輸送に影響が生じ、中東向けの中古車輸出が減少した。
名古屋税関の担当者も、中古車の輸出数量が2026年2月以降、世界全体で大きく減少し、特に中東向けの落ち込みが目立つとの認識を示している。
国内で盗まれた自動車が解体などを経て海外に不正流通する事例もあるため、輸送環境の悪化が窃盗グループの活動に影響した可能性が指摘されている。
ただし、正規の中古車輸出の減少が、そのまま盗難車の不正輸出の減少を意味するわけではない。
愛知県の自動車盗は2025年末から減少傾向にあり、中東情勢が悪化する前から変化が見られた。今回の急減を国際情勢だけで説明することはできない。
検挙件数は6割増、盗難車の流通経路にも捜査
警察による摘発状況にも変化がある。
愛知県警によると、2026年1月から9月末までの自動車盗の検挙件数は223件で、前年同期の139件から60.4%増加した。検挙率も15.7%から58.4%へ上昇している。
自動車盗では、実際に車を盗む人物だけでなく、盗難車を保管し、解体や偽装登録などを通じて流通させる関係者の存在も問題となる。
2026年8月には、盗難車に別の車両の車台番号を取り付け、不正に登録申請した疑いで男女5人が逮捕された事案もあった。このうち4人はその後、不起訴となっている。
こうした流通過程への捜査が、窃盗グループの活動を抑制した可能性はある。ただし、摘発によってどの程度盗難件数が減少したかは明らかになっていない。
豊橋では施錠した車も被害に 防犯対策の見直しを
2026年10月19日、豊橋市東七根町の「道の駅とよはし」で、自動車盗の被害防止を呼びかけるキャンペーンが実施された。
豊橋署などが、希望者の車両にナンバープレートの盗難防止ネジを取り付けたほか、防犯カメラや警報装置、GPS追跡機器などを紹介した。
近年は車両の電子制御システムを悪用する盗難手口も問題となっており、施錠していても被害に遭うケースがある。
豊橋署は、ハンドルロックなど複数の防犯対策を組み合わせるよう呼びかけている。
豊橋市の行動計画によると、2025年に盗まれた自動車37件のうち、無施錠だったのは8件で、残る29件は施錠されていた計算になる。
鍵をかけることは基本だが、それだけでは十分とはいえない実態が数字にも表れている。
被害減少は続くのか 豊橋・東三河でも警戒が必要
県内の自動車盗は大幅に減少したものの、海外への流通環境や犯罪グループの活動が変化すれば、再び被害が増加する可能性は否定できない。
豊橋市では2023年から2025年にかけて自動車盗が急増し、2026年に入って減少へ転じた。今後は、減少傾向がどこまで続くかが焦点となる。
自宅の駐車場だから安全とは限らない。駐車場所の明るさや防犯カメラの設置状況を確認し、ハンドルロックや追加の盗難防止装置を組み合わせるなど、車両と駐車環境の両面から対策することが重要だ。
編集部まとめ
豊橋市の自動車盗は2023年の5件から2025年の37件へ急増し、2026年は9月末までに18件と減少している。
愛知県全体でも前年同期比56.9%減となったが、依然として全国最多であり、東三河でも被害が続いている。
急減の背景には、中東情勢や犯罪グループへの捜査など複数の要因が考えられる。ただし、その因果関係は確定していない。
被害が減少している今こそ、これまでの盗難対策を見直し、再増加に備える必要がある。
特記事項
本記事は豊橋市の「第7次安全で安心なまちづくり行動計画」、愛知県警の犯罪統計などに基づき作成した。2026年の認知件数は9月末現在の暫定値。
東三河の件数は6警察署管内の合計であり、市町村別の厳密な集計とは異なる。2025年の豊橋市内37件と2026年1〜9月の18件は、対象期間が異なるため直接の前年比較には使用していない。
週刊TAKAPI編集部/成田
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