埼玉県上尾市教育委員会は7月13日、市立中学校で発生したいじめ重大事態に関する調査報告書を公表した。
事実ではない情報がLINEを通じて複数の生徒に広がり、当時中学1年生だった被害生徒が強い精神的苦痛を受け、長期にわたって登校できなくなった事案で、市教委はいじめと欠席との因果関係を認定した。
「いじめをしていた」と事実無根の情報が拡散
報告書によると、問題が起きたのは2025年5月。
ある生徒が、小学校時代にいじめをしていた人物について、被害生徒と「似ている」と考え、同級生に相談した。その後、相談を受けた生徒がLINEを使い、被害生徒が過去にいじめをしていたという趣旨の情報を複数の生徒へ広めるよう呼びかけた。
情報はグループチャットなどを通じて広がり、別の学年の生徒にも伝わったという。
しかし、その後の確認で、疑われていた人物と被害生徒は別人であり、拡散された内容は事実ではなかったことが判明した。
拡散に関わった生徒は24人
学校側は、情報の拡散に関わった生徒24人とその保護者を対象に聞き取り調査を実施した。
誤った情報の削除を求めるとともに、被害生徒への謝罪の機会を設けるなどの対応を取ったが、被害はすでに深刻化していた。
被害生徒は、校内で情報を広めた生徒らと顔を合わせることに強い恐怖を感じるようになり、医療機関を受診。その後、学校へ登校することが難しい状態となった。
一度広がった情報が、誰に、どこまで伝わったのかを完全に把握することは困難で、誤情報が削除された後も、被害生徒の不安は解消されなかった。
市教委が「いじめ重大事態」に認定
上尾市教育委員会は2025年9月、被害生徒が相当期間にわたって欠席し、心身に重大な被害が生じた疑いがあるとして、いじめ防止対策推進法に基づく重大事態と判断した。
調査委員会は、生徒や保護者への聞き取りなどを進め、LINEで流された情報が事実ではなかったことを確認した。
そのうえで、誤情報の拡散によって被害生徒が精神的苦痛を受け、登校できなくなったとして、いじめ行為と長期欠席との間に直接的な因果関係があると結論付けた。
被害生徒の保護者「発信した側の説明責任が不十分」
被害生徒の保護者は、情報を発信した側からの説明が十分に行われていないと指摘した。
また、SNSを利用する子どもの保護者に対し、個人情報や未確認情報を安易に拡散しないよう、家庭で指導する責任を改めて認識してほしいとの考えを示した。
誤情報を最初に発信した生徒だけでなく、内容を確かめずに受け取り、さらに別の人へ転送した側にも責任がある。報告書は、SNS上で情報を受け取った際に立ち止まり、事実関係を確認する重要性を浮き彫りにした。
学校の対応にも課題
調査委員会は、学校側についても、いじめの未然防止やSNSトラブルに関する指導が十分ではなかったと指摘した。
学校は今後、生徒への個別面談や生活アンケートを強化するほか、SNSの適切な利用方法を学ぶ授業、教職員研修、保護者への啓発を進めるとしている。
上尾市教育委員会も、今回の報告書を各学校で共有し、同様の事案を防ぐための再発防止策を進める方針だ。
編集部まとめ
一つの誤ったメッセージが雪だるま式に膨らみ、取り返しのつかない被害を生んだ典型例だ。学校教育だけではなく、家庭での「誤情報を受け取った瞬間の対応ルール」作りが今、強く求められている。
週刊TAKAPI編集部/成田
特記事項:上尾市教育委員会が公表したいじめ重大事態調査報告書などを基に構成しています。被害生徒や関係生徒の特定を避けるため、学校名、氏名、性別などは記載していません。
記事要点
埼玉県上尾市の市立中学校で、事実ではないいじめ情報がLINEを通じて複数の生徒に広がり、被害生徒が強い精神的苦痛を受けて長期不登校となった。市教育委員会は、情報拡散に関わった生徒が計24人に上ったとする調査結果を公表し、いじめ行為と欠席との間に直接的な因果関係があると認定した。報告書では、学校の初期対応やSNS教育、家庭での利用ルールにも課題があったと指摘している。
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