大阪・ミナミの繁華街で若者に処方薬を渡したとして逮捕された40歳の無職の男が、5000錠を超える向精神薬などを譲渡目的で自宅に保管していた疑いで、大阪府警に再逮捕されました。
男は生活保護を受給し、2024年2月以降、医療扶助によって約2万錠の処方を受けていたとみられています。警察は、公費で医療を受けられる制度が処方薬の大量入手に悪用された可能性があるとみて、入手経路や譲渡先を調べています。
自宅に5000錠超を保管 譲渡目的の疑いは否認
再逮捕されたのは、大阪府東大阪市に住む無職の男(40)です。
警察によりますと、男は5月27日、向精神薬など5000錠を超える処方薬を、他人に譲り渡す目的で自宅に保管していた疑いが持たれています。
男は調べに対し、「薬を売る目的や、あげる目的で家に置いていたわけではない」などと話し、再逮捕容疑を否認しているということです。
少女2人に睡眠導入剤などを渡した疑い
男はこれに先立ち、2026年1月、大阪市内のホテルなどで、女子中学生と女子高校生に睡眠導入剤や向精神薬などを無許可で譲り渡したとして、医薬品医療機器法違反などの疑いで逮捕されていました。
少女らは薬を大量に服用して昏睡状態となり、その後、保護されたと報じられています。命に直結しかねない処方薬が、医師や薬剤師による管理を離れ、未成年者に渡っていた疑いがある重大な事案です。
「病んでいる子の力になりたかった」と供述
男は若者が集まる大阪・ミナミの通称「グリ下」周辺で、「薬屋さん」などと呼ばれていたとされています。
少女らに薬を渡した理由については、「人生に悩んでいる子や、病んでいることを自覚していない子の力になりたかった」といった趣旨の供述をしているということです。
ただ、医師から処方された薬を第三者に渡す行為は、善意や無償であったとしても正当化されるものではありません。服用者の体質や併用薬、摂取量によっては、意識障害や呼吸抑制など深刻な健康被害につながる危険があります。
約2年間で処方薬2万錠 医療扶助の確認体制が焦点
警察によりますと、男は生活保護を受給しており、2024年2月以降、指定医療機関から向精神薬など約2万錠の処方を受けていたとみられています。
生活保護の医療扶助では、必要な医療費が原則として公費で賄われます。一方で、制度は受給者に必要な治療を保障するためのものであり、処方薬を蓄積して第三者に譲渡することを認める仕組みではありません。
今回の事件では、なぜ長期間にわたる大量処方を早期に把握できなかったのか、医療機関、薬局、福祉事務所の間で処方情報がどこまで共有されていたのかが焦点となります。
電子処方箋で重複投薬を確認 導入と運用に課題
厚生労働省は、電子処方箋を通じて複数の医療機関や薬局にまたがる薬剤情報を共有し、重複投薬や併用禁忌を確認できる仕組みを進めています。
医療扶助についても2024年4月から、対応する医療機関や薬局で電子処方箋の発行や調剤情報の登録が可能になりました。ただし、実際に機能させるには、医療機関や薬局側のシステム対応と適切な運用が欠かせません。
今回の男が一つの医療機関だけから約2万錠の処方を受けていたのか、複数の医療機関を利用していたのかについては、報道内容に差があり、現段階では断定できません。重要なのは、単純な重複受診の確認だけでなく、一人の患者に対する処方量や受診状況の変化を継続的に点検することです。
市販薬や処方薬のオーバードーズが若者に広がる
医薬品のオーバードーズは、違法薬物とは異なり、身近な薬を使用するため危険性が見過ごされやすい側面があります。
眠れない、不安を消したい、つらい現実から離れたいといった理由から大量服用に至る若者もいますが、複数の薬を一度に服用すれば、急性中毒や意識障害を起こし、死亡する危険もあります。
薬を渡した人物だけを摘発して終わるのではなく、薬を求める若者が置かれた家庭環境や孤立、精神的な不調に対し、医療、福祉、学校、警察が連携して支援につなげる必要があります。
愛知県でも若年層の薬物乱用に警戒
今回の事件は大阪で発生しましたが、若者による薬物乱用は特定地域だけの問題ではありません。
愛知県では、薬物事犯の検挙者数が29年連続で1000人を超えており、大麻事犯では検挙者のおよそ8割を30歳未満が占めています。また、2024年中に県内で検挙された少年の大麻事犯は70人に上りました。
大麻と処方薬の乱用は性質が異なりますが、若者がSNSや繁華街で薬物に接触する危険が身近に存在する点は共通しています。豊橋・東三河を含む地域でも、他人から処方薬を受け取らないことや、薬を本人以外に渡さないことを家庭や学校で繰り返し伝える必要があります。
編集部まとめ
公費負担で処方されたとみられる向精神薬が大量に蓄積され、未成年者に渡っていた疑いが浮上しました。
今回の事件を生活保護受給者全体の問題に置き換えるべきではありません。問われているのは、個人による不正な利用の疑いと、大量処方を把握し、第三者への流出を防ぐ仕組みが十分に機能していたかどうかです。
医療扶助は、経済的に困窮する人の命と治療を守るために欠かせない制度です。制度への信頼を維持するためにも、電子処方箋やレセプト点検だけに依存せず、医師、薬剤師、福祉事務所による継続的な確認と情報共有が求められます。
週刊TAKAPI編集部/松本
特記事項:本記事は警察発表、厚生労働省および愛知県・愛知県警の公表情報、各社報道を基に構成しています。逮捕・再逮捕は容疑段階であり、刑事責任は今後の捜査や司法手続きによって判断されます。本件を生活保護受給者全体の傾向として扱うものではありません。
処方薬の流出を防ぐ仕組みが問われる
生活保護を受給していた40歳の男が、医療扶助で入手したとみられる睡眠薬や向精神薬を少女らに譲り渡した疑いで逮捕されました。男は約2万錠の処方を受け、自宅などから約5800錠が押収されたとされています。今回の事件では、個人による不正利用の疑いに加え、大量処方や薬の蓄積を医療機関、薬局、福祉事務所が早期に把握できなかった可能性も焦点となります。
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