【日本版DBS】英国は単一機関、日本は複数省庁連携 子どもの安全を誰が最終的に守るのか

英国では、子どもに関わる人の犯罪歴の確認と就業禁止リストの管理・判断を、単一の機関(DBS)が一元的に担う。
日本では、こども家庭庁を中心に、法務省への照会などを通じて確認を行い、その結果を踏まえた配置などの判断は事業者側に委ねられる。この分担体制で、子どもの安全は十分に確保されるのか。

■ 制度の定義と対象範囲

日本版DBS(犯罪事実確認)は、子どもに関わる業務に従事する者の特定性犯罪歴を確認する仕組みである。
確認の対象となるのは、不同意性交等・不同意わいせつ、児童買春・児童ポルノ、痴漢、盗撮などの特定性犯罪で、拘禁刑は執行終了等から20年、執行猶予は確定から10年、罰金刑は執行終了等から10年以内の犯罪事実である。

対象となる職種は、教員や保育士など、子どもと常に接する業務に従事する者は一律で含まれる。
加えて、事務職員や送迎バス運転手など、業務上継続的に子どもと接する可能性がある職種についても、事業者の判断で対象とされる。

また、雇用形態や契約の有無にかかわらず、対象業務に従事する場合は対象となる。
派遣職員については、派遣先の事業者が確認を行う。

■ 確認の流れと関係省庁の役割

日本の制度では、確認の起点は事業者からの申請にあり、その窓口はこども家庭庁に置かれる。
事業者は採用時や配置転換等の際に対象者の確認を申請し、対象者本人も戸籍情報などをこども家庭庁に直接提出する。

これを受けて、こども家庭庁が法務省に照会し、特定性犯罪歴の有無を確認する。
確認結果は、こども家庭庁から事業者に対して「犯罪事実確認書」として交付される。この一連の流れにおいて、犯罪事実の照会と確認は法務省が担い、制度の窓口と結果の管理はこども家庭庁が担う。

一方で、警察庁は性犯罪に関する情報連携や捜査を所管するが、確認手続そのものには直接関与しない。
また、学校は文部科学省、保育や福祉施設は厚生労働省が所管し、各分野における事業者への指導や監督を担う。

確認手続の中心はこども家庭庁と法務省にあり、各所管省庁は事業者への指導・監督を分担する構造となっている。

■ 確認は国、防止措置は事業者、監督は各省庁

日本の制度では、犯罪歴の有無を確認する役割と、防止措置を講じる役割が明確に分離されている。
こども家庭庁が窓口となり、法務省に照会して特定性犯罪歴の有無を確認する。
一方、その結果を踏まえ、児童対象性暴力等が行われるおそれがあると認められる場合には、事業者は防止措置を講じなければならない。
具体的には、教育や保育など子どもと接する業務に従事させないこと(配置転換を含む)である。
さらに、現場の運用については、学校は文部科学省、保育や福祉施設は厚生労働省が、それぞれ事業者に対して指導や監督を行う。警察庁は性犯罪に関する情報連携や捜査を担うが、確認手続には直接関与しない。
確認は国、防止措置は事業者、監督は各所管省庁と、役割が明確に分けられている。

■ 英国は一つの機関で確認と就業禁止を扱う

英国では、子どもに関わる業務に就く人の犯罪歴について、確認と就業禁止リスト(Barred List)への掲載判断を一つの機関が担っている。制度の中核を担うのは、Disclosure and Barring Service(DBS)である。

DBSは、申請に基づいて過去の犯罪歴を確認するだけでなく、子どもvulnerable adults(要保護成人)に対するリスクがあると判断された場合には、就業禁止リストへの掲載を行う。このリストに掲載された者は、教育や保育など、子どもや要保護成人と継続的に接するregulated activity(規制活動)に従事することが法律で禁止される。これに違反した場合は、刑事罰の対象となる。

この仕組みでは、犯罪歴の確認と、その結果に基づく就業の可否判断が分離されていない。申請の受付から確認、掲載判断、そして就業制限までが一つの制度の中で完結している。

また、雇用者側にも義務が課されており、就業禁止リストに掲載されている者を該当業務に就けることは禁止されている。採用時の確認を怠った場合や、不適切な配置を行った場合には、事業者側にも責任が問われる仕組みとなっている。

このため、英国の制度では、確認の段階でリスクのある者を業務から排除することが制度として組み込まれており、個々の事業者の判断に委ねられる余地は限定されている。

■ 日本は情報確認・防止措置・監督が分かれて動く三層構造

日本の制度は、①情報確認、②防止措置、③運用監督の三つが別の主体で動く。対象となる業務は、支配性・継続性・閉鎖性といった実態に基づいて判断される。

① 情報確認

事業者が申請すると、従事者本人が戸籍情報などをこども家庭庁に直接提出し、同庁が法務省に照会して特定性犯罪歴の有無を確認する。対象は、不同意性交等、不同意わいせつ、児童買春、児童ポルノ(製造・提供・所持等)、痴漢、盗撮、未成年淫行など(成人被害を含む特定性犯罪)である。
照会対象期間は、①拘禁刑の執行終了後20年以内、②執行猶予判決確定から10年以内、③罰金刑の執行終了後10年以内とされる。
前科が確認された場合、こども家庭庁は本人に事前通知を行い、通知を受けた日から2週間以内に訂正請求が可能である。訂正がなければ、または訂正後も前科が確定すれば、事業者に「犯罪事実確認書」が交付される。本人が期間内に内定を辞退した場合は確認書は交付されない。
また、確認情報は厳格に管理され、目的外利用の禁止や適切な廃棄義務が課される。

② 防止措置

確認結果を踏まえ、事業者が児童対象性暴力等のおそれがあると認めた場合、防止措置を講じる義務が生じる。
特に、特定性犯罪前科がある場合は、「おそれあり」と判断されやすく、子どもと接する業務に従事させない(配置転換を含む)対応が基本となる。
また、前科がない場合でも、おそれがあると事業者が判断すれば防止措置の対象となる。
防止措置には、業務からの排除に加え、研修の実施、相談体制の整備、不適切行為への対応体制の構築などが含まれる。

③ 運用監督

学校設置者等は制度の適用が義務付けられ、施行後3年以内に現職者の確認を実施する必要がある。
一方、民間の教育・保育等事業者は、認定を受けた場合に限り義務対象となり、認定後1年以内に確認を行う。
また、一度確認した対象者についても5年ごとに再確認が求められる。
所管は、学校は文部科学省、保育・福祉施設は厚生労働省、民間認定事業者はこども家庭庁が担い、それぞれ事業者への指導・監督を行う。警察庁は性犯罪に関する情報連携や捜査を担うが、確認手続には直接関与しない。

このように、確認は国、防止措置は事業者、監督は各所管省庁と役割が分かれた構造で運用される。

■ 一元管理か、分野横断かで分かれる評価

日本版DBSをめぐっては、制度の運用主体をどう設計するかについて評価が分かれている。
一つの見方は、警察による一元管理の方が効率的だという立場である。
性犯罪に関する情報は警察が最も多く保有しており、照会先を一元化すれば、確認から判断までを一つの機関で処理できる。 複数の主体を経由する日本の仕組みに比べ、手続の簡素化と迅速化が可能になるとの指摘がある。
一方で、個人情報の集中管理に対する懸念や、プライバシー保護、憲法上の配慮から、警察に確認と判断を集約する方式は採用されなかった経緯がある。
これに対し、こども家庭庁を中心に複数省庁で運用する現行の仕組みを評価する立場もある。
学校、保育、福祉といった現場は制度や業務の性質が異なり、同じ確認結果でも、業務の支配性・継続性・閉鎖性の度合いによってリスクの評価は変わる。 このため、犯罪歴の有無だけで一律に排除するのではなく、現場ごとにおそれを判断できる仕組みが必要だとされる。

制度上、確認の中心はこども家庭庁に置かれ、同庁が法務省への照会を担う一方、監督は各所管省庁に分かれる。 その上で、防止措置は事業者が講じる構造となっている。

複数の主体を経由するため、英国に比べて処理に時間がかかる可能性が指摘されているが、本人関与や現場判断を組み込んだ設計となっている。
迅速さと一体性を優先するか、分野ごとの実態に応じた対応を優先するか。
制度は、この二つの考え方の間でバランスを取り、確認(国)・防止措置(事業者)・監督(分野別省庁)という分担構造を採用した。

■ データ・確認・防止措置・監督が分かれて進む

日本の制度は、犯罪歴データの管理、確認の手続、防止措置の実施、現場の監督が、それぞれ別の主体に分かれて進む構造となっている。
まず、犯罪歴データは法務省が管理し、確認の手続はこども家庭庁が窓口となって行う。
事業者からの申請を受け、従事者本人が戸籍情報などをこども家庭庁に提出し、同庁が法務省に照会する。

前科が確認された場合は、こども家庭庁が本人に事前通知を行い、訂正請求の機会を経た上で、結果が事業者に「犯罪事実確認書」として交付される。
その後の対応は、事業者が担う。
確認結果を踏まえ、児童対象性暴力等のおそれがあると認められる場合には、防止措置を講じる義務(配置転換を含む)が生じる。
ここでは、犯罪歴の有無だけでなく、業務内容や接触の程度に応じた判断が求められる。

さらに、制度の運用については、学校は文部科学省、保育・福祉施設は厚生労働省、民間の認定事業者はこども家庭庁が、それぞれ事業者への指導・監督を担う。
警察庁は、性犯罪に関する情報連携や捜査を所管するが、確認手続には直接関与しない。

このように、データの管理、確認の実施、防止措置の決定、現場の監督が一つの機関に集約されていない。
制度は一連の流れとして設計されているが、実際の運用は複数の主体が連携する形で進められる。

制度は動き出すが、責任は分かれたまま

日本版DBSは2026年12月25日に施行され、確認は段階的に進められる。
確認の照会は事業者がこども家庭庁を通じて国(法務省)に求め、防止措置は事業者、監督は各省庁が担う。
被害が発生した場合、事業者の確認不足か、監督の不備か、責任は複数の主体にまたがる。
その結果、小規模な民間事業者では認定取得の負担により安全対策の水準に差が生じる可能性がある。
一方で、「おそれ」の判断を事業者に委ねる仕組みは、配置転換や雇用をめぐる紛争のリスクも伴う。
英国のように、就業禁止リストを国が直接運用し最終判断を担う仕組みは、日本にはない。
制度は動き出すが、子どもの安全を誰が最終的に担うのかは一つに集約されておらず、その実効性は施行後の見直しで責任をどこに置くかにかかっている。

Q1. 日本版DBSとは何ですか?

日本版DBSは、子どもに関わる仕事に就く人について、特定性犯罪歴の有無を確認する制度です。確認結果を受けて、事業者が配置転換などの防止措置を行います。

Q2. 日本版DBSはいつから始まりますか?

2026年12月25日に施行されます。施行後、対象となる事業者は確認手続を進めることになります。

Q3. 日本版DBSで確認される犯罪は何ですか?

不同意性交等、不同意わいせつ、児童買春、児童ポルノ、痴漢、盗撮などの特定性犯罪が確認対象です。

Q4. 日本版DBSでは何年前まで確認されますか?

拘禁刑は執行終了後20年以内、執行猶予は判決確定後10年以内、罰金刑は執行終了後10年以内です。

Q5. 日本版DBSの対象は教員と保育士だけですか?

いいえ。教員や保育士だけでなく、送迎担当、補助職員、事務職員など、子どもと継続的に接する仕事も対象になる場合があります。

Q6. 日本版DBSでは誰が確認を行いますか?

事業者が申請し、こども家庭庁が窓口となって法務省に照会します。警察庁は確認手続そのものには直接関与しません。

Q7. 前科が確認されたら自動で就業禁止になりますか?

日本版DBSは、前科が確認されたら一律で自動禁止になる制度ではありません。確認結果を受けて、事業者が配置転換などを判断します。

Q8. 日本版DBSで配置転換を決めるのは誰ですか?

事業者です。国が確認を行い、その後の配置判断や防止措置は事業者が行います。

Q9. 英国DBSとの一番大きな違いは何ですか?

英国DBSは、犯罪歴確認と就業禁止リストの管理・判断を一つの機関で担う点が大きな違いです。日本版DBSは、確認、配置判断、監督が分かれています。

Q10. 英国の就業禁止リストとは何ですか?

英国では、子どもや要保護成人に関わる仕事に就けない人をBarred Listで管理します。掲載された人を該当業務に就かせることは認められていません。

Q11. 日本版DBSで事業者に求められる対応は何ですか?

事業者には、対象者の確認申請、確認結果の管理、必要に応じた配置転換、業務制限、研修、相談体制の整備などが求められます。

Q12. 日本版DBSの課題は何ですか?

確認は国、防止措置は事業者、監督は各省庁と分かれているため、問題が起きたときに責任の線が分かれやすい点です。小規模事業者では運用負担が重くなる可能性もあります。

Q13. 日本版DBSは民間事業者にも適用されますか?

民間の教育・保育事業者も対象になり得ます。ただし、制度上は認定を受けた事業者が対象となる部分があり、確認の時期や義務の内容に違いがあります。

Q14. 一度確認したら終わりですか?

いいえ。制度上は、対象者について5年ごとの再確認が求められる形になっています。

Q15. 日本版DBSで子どもの安全は十分に守れますか?

確認を行うだけでは足りません。実際に子どもと接する仕事から外すか、誰が判断し、誰が監督したかまで動いて初めて、子どもの安全につながります。

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