兵庫県宝塚市の宝塚市立病院は2026年8月17日、人工股関節の手術を受けた患者4人のX線画像について、手術に立ち会っていた医療機器メーカー「スミス・アンド・ネフュー」の従業員が撮影し、院外へ持ち出したうえで社内のグループチャットに投稿していたと発表しました。
対象となったのは、2025年9月から10月にかけて同病院で股関節の整形外科手術を受けた患者4人で、画像は計14枚とみられます。
問題は宝塚市立病院だけにとどまりません。同じメーカーの従業員によるX線画像の撮影・社内共有をめぐっては、大阪公立大学医学部附属病院、金沢大学附属病院、神戸大学医学部附属病院、埼玉協同病院、聖マリアンナ医科大学病院、日本鋼管福山病院などを含む計9医療機関で、患者16人分の画像が社内グループチャットに投稿されていたとする事例が明らかになっています。
手術室のモニターを撮影 執刀医は個人情報を映さないよう求める
宝塚市立病院によると、メーカーの従業員は手術への立ち会い中、手術室のモニターに表示された患者のX線画像を自ら持ち込んだ機器で撮影していました。
執刀医は撮影に際し、個人情報が入り込まないよう配慮することを口頭で伝えていたとされています。
画像自体には氏名などの個人情報は記載されていませんでしたが、患者1人については社内グループチャット上で年齢、性別、宝塚市立病院での症例であることなどが追記されていました。
現時点で、患者個人を特定できる情報が社外へ流出した事実は確認されていません。
大阪公立大病院では13件持ち出し、1件に患者氏名
同様の問題は、すでに別の医療機関でも具体的に公表されています。
大阪公立大学医学部附属病院は8月12日、2025年10月に取引業者の従業員が手術室内で患者のX線画像をスマートフォンで撮影し、計13件の画像を院外へ持ち出していたと公表しました。
このうち1件には患者の氏名が表示されていました。画像は業者の社内で共有されていたものの、同病院によると社外への提供や外部流出は確認されていません。病院は対象患者に説明し、謝罪しています。
宝塚市立病院の4人分14枚とは別に、大阪公立大学医学部附属病院では13件が確認されており、単一病院だけの情報管理問題ではないことが分かります。
少なくとも9医療機関、患者16人分の画像が投稿か
これまでに確認されている情報では、2025年9月と10月、スミス・アンド・ネフューの社員が関与したとされる社内グループチャットに、計9医療機関で撮影された患者16人分のX線画像が投稿されていたとされています。
具体的に名前が確認されている医療機関には、
- 金沢大学附属病院
- 神戸大学医学部附属病院
- 大阪公立大学医学部附属病院
- 宝塚市立病院
- 埼玉協同病院
- 聖マリアンナ医科大学病院
- 日本鋼管福山病院
などがあります。
ただし、「16人分」は9医療機関を合わせた人数であり、大阪公立大学医学部附属病院が独自に公表した「13件」や、宝塚市立病院の「4人・14枚」とは集計単位が異なります。数字を単純に合算することはできません。
発覚は6月 メーカーが8月12日に調査報告書提出
宝塚市立病院で問題が判明したきっかけは、2026年6月に新聞社から指摘を受けたことでした。
病院側が事実関係を確認し、スミス・アンド・ネフュー側も社内調査を実施。メーカー側は8月12日に調査報告書を病院へ提出し、病院が17日に問題を公表しました。
スミス・アンド・ネフューは人工関節などを扱う医療機器メーカーで、日本法人は東京都港区に本社を置き、大学病院や国公立病院、私立病院などを主要販売先としています。
メーカー側「極めて重く受け止め」 従業員処分の有無は確認できず
メーカー側は、この一連の問題について「極めて重く受け止めている」とし、患者情報保護の遵守に取り組む趣旨の見解を示したとされています。
一方、8月17日夜までに確認できたスミス・アンド・ネフュー日本法人の公式サイトでは、この問題について独立した公式声明や詳細な再発防止策、関係した従業員に対する懲戒処分の有無までは確認できませんでした。会社としての最終的な調査結果や処分内容が今後公表されるかが焦点になります。
病院「管理が不十分だった」 撮影原則禁止も検討
宝塚市立病院は今回の問題について、医療情報の管理が不十分だったとして謝罪しています。
今後は、医療情報を外部関係者へ提供する場合の運用をより厳格にし、X線画像の撮影を原則として認めない運用も視野に入れます。
医療機器メーカーなど外部関係者が手術に立ち会う必要がある場合についても、患者に事前に説明し、同意を得ることを徹底する方針です。
「氏名なし」でも医療情報管理上の問題
今回、宝塚市立病院で撮影された画像には患者氏名などが直接表示されていなかったとされています。
ただ、X線画像そのものに氏名がなくても、年齢、性別、医療機関名、手術内容などが組み合わされれば、患者に関する情報の範囲は広がります。
さらに今回のケースでは、撮影した画像が院内だけで利用されたのではなく、メーカー社員によって院外へ持ち出され、社内グループチャットで共有されていました。
医療現場では、メーカー担当者が手術に立ち会い、機器操作や技術面の支援を行うことがあります。その必要性と、患者の診療情報を撮影・保存・共有してよいかどうかは別の問題です。
今回の一連の事案は、病院側だけでなく、医療機器メーカー側の情報管理ルールや社員教育、医療機関との情報共有手続きまで含めた検証が必要な問題となっています。
編集部まとめ
宝塚市立病院で、人工股関節手術を受けた患者4人のX線画像計14枚が、スミス・アンド・ネフューの従業員によって撮影され、院外へ持ち出されたうえで社内グループチャットに共有されていました。
今回、より重要なのは、同様の事案が宝塚市立病院だけで確認されているわけではない点です。
これまでに大阪公立大学医学部附属病院、金沢大学附属病院、神戸大学医学部附属病院、埼玉協同病院、聖マリアンナ医科大学病院、日本鋼管福山病院などを含む9医療機関で、患者16人分のX線画像が社内グループチャットに投稿されていたとする情報が明らかになっています。
一方、メーカー側が個々の社員にどのような処分を行ったのか、会社としてどのような再発防止策を実施するのかについては、8月17日夜までに詳細な公式発表を確認できていません。
今後は、残る医療機関での調査結果、対象患者数の確定、画像の削除状況、メーカー側の処分・再発防止策が公表されるかが重要な確認ポイントになります。
週刊TAKAPI編集部/一条
特記事項
本記事では、宝塚市立病院で確認された「患者4人・X線画像14枚」と、複数医療機関を横断して確認されている「9医療機関・患者16人分」を区別して記載しています。
また、大阪公立大学医学部附属病院が公表した「13件」も別の集計です。同院ではこのうち1件に患者氏名が表示されていました。これらの数字は対象期間や数え方が異なるため、単純合算して被害総数とは扱っていません。
スミス・アンド・ネフュー側は一連の問題を重く受け止める趣旨の見解を示していますが、8月17日夜時点で、関係従業員への具体的な懲戒処分、最終調査結果、全社的な再発防止策について詳細な公式公表は確認できていません。
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