岐阜県下呂市は2026年8月21日、市立の「小坂介護医療院」の訪問リハビリテーション事業で、必要な医師の指示書がないままサービスを提供し、介護報酬など約1355万円を不適切に請求していたとして、健康医療部小坂診療所に勤務する57歳の主任技術主査を停職6カ月の懲戒処分にしたと発表した。処分は20日付。
職員は理学療法士で、市によると、2021年10月から2026年6月までの約4年9カ月にわたり、医師から必要な指示を受けないまま訪問リハビリを実施していたとされる。
さらに、過去に作成された医師の指示書を複写して使用していたことも確認された。
約5年間にわたり医師の指示書なしでサービス提供
訪問リハビリテーションは、医師の診療や指示に基づき、理学療法士などが利用者の自宅を訪問してリハビリを行うサービスだ。
小坂介護医療院は下呂市が設置する施設で、訪問リハビリテーションも実施している。市の施設案内では、小坂介護医療院は市が設置主体となり、長期療養に必要な医療や介護、機能訓練を提供する施設とされている。
今回の問題では、担当職員が本来必要となる医師の指示書を取得せずにサービスを続けていた。
市は、こうした状態で請求された介護報酬などについて、現時点で約1355万円に上ると把握している。
過去の指示書を複写 チェック機能が働かなかった可能性
問題は、担当者個人の手続き違反だけでは終わらない。
約5年近くにわたり医師の指示書がない状態でサービス提供と報酬請求が続いていたとすれば、施設内で指示書の有無を確認する仕組みや、請求前の管理者によるチェックがどのように行われていたのかが重要になる。
現時点で下呂市が公表している範囲では、誰がどの段階で請求内容を確認していたのか、複数職員によるチェックが存在していたのかなど、具体的な内部管理体制の詳細は明らかになっていない。
再発防止策についても、職員への処分だけでなく、今後どの部署が指示書と請求データを照合するのか、ダブルチェックを導入するのか、定期監査を行うのかといった具体策と実施時期が焦点となる。
約1355万円はどう算出されたのか
約1355万円という金額についても、最終的な確定額なのか、現段階での調査額なのかを区別して見る必要がある。
不適切な請求額を確定するには、2021年10月から2026年6月までのサービス記録、医師の指示書、利用者ごとの介護報酬請求データなどを照合し、適正な請求と認められない部分を特定する作業が必要となる。
ただ、確認時点では、市が約1355万円をどのような手順で算出したのか、件数や年度別の内訳、介護保険給付分と利用者負担分がそれぞれいくらなのかといった詳細までは公表されていない。
今後の精査によって返還対象額が変わる可能性があるのかについても、市の追加説明が必要となる。
返還先や返還時期は未公表
不正・不適切な請求と認定された介護報酬については、金額を確定したうえで適切な返還処理を行う必要がある。
しかし、今回の約1355万円について、下呂市がいつまでに金額を確定し、誰に、どのような方法で返還するのかといった具体的なスケジュールは、確認時点では明らかになっていない。
介護保険給付として支払われた部分だけでなく、利用者本人が負担した金額に過払いが生じていれば、その扱いも重要になる。
市には、返還対象額の確定時期、返還先、利用者負担分の有無、財源上の処理について明確な説明が求められる。
利用者への健康上の影響は確認されているのか
さらに重要なのが、サービスを受けた利用者への影響だ。
訪問リハビリは単なる事務手続きではなく、医師の診療・指示を前提として提供されるサービスである。
そのため今回のケースでは、指示書がなかったことで、利用者の身体状況に適さないリハビリが行われていなかったか、健康上の不利益が生じていないかを確認する必要がある。
現時点では、利用者に健康被害が確認されたとの情報は公表されていない。一方で、市が対象となった利用者一人ひとりにどのような説明を行ったのか、医師による再評価やサービス内容の検証を行ったのかについても詳細は明らかになっていない。
利用者本人や家族への説明、自己負担額の確認、今後のリハビリ提供体制を含めた対応状況も追加公表が必要な項目となる。
刑事事件としての立件は確認されず
市は57歳の職員を停職6カ月の懲戒処分とした。
ただし、懲戒処分は地方公務員としての服務上の責任を問う行政上の処分であり、刑事責任とは別だ。
今回、過去の医師の指示書を複写して使用していたとされる点について、警察への被害届や刑事告発が行われているのか、捜査機関が事件として捜査しているのかは、確認時点では公表されていない。
したがって、現段階で「刑事事件になっている」「犯罪が成立した」などと断定することはできない。
市が今後、顧問弁護士や関係機関と協議して刑事告発を検討するのかも確認すべきポイントとなる。
編集部まとめ
今回の問題は、約1355万円という金額だけでなく、約5年にわたり必要な医師の指示書がない状態を組織として見抜けなかった点が大きい。
担当職員への停職6カ月という処分は示されたが、これだけでは問題の全容は見えない。
今後確認すべきなのは、約1355万円の最終確定額と返還方法、利用者への影響、管理職を含むチェック体制の責任、具体的な再発防止策、刑事告発の有無だ。
市立施設で起きた問題である以上、個人の処分にとどまらず、なぜ長期間発見できなかったのかについて組織として説明する必要がある。
週刊TAKAPI編集部/成田(デスク)
特記事項
この記事は2026年8月21日までに確認された下呂市の発表内容と、市が公開している小坂介護医療院の施設情報を基に構成した。
約1355万円については、市が現段階で示している介護報酬などの不適切な請求額であり、最終的な返還額、年度別・利用者別の内訳、精査方法の詳細は確認できていない。
返還処理の具体的な時期や方法、利用者への返金の有無、再発防止策の詳細についても確認時点では公表範囲が限定されている。
また、57歳職員に対する停職6カ月は懲戒処分であり、刑事処分ではない。警察への被害届、告発、捜査開始などについて確認できる公表情報はなく、刑事責任の有無は確定していない。
小坂介護医療院の不正請求問題で分かっていること
下呂市立小坂介護医療院の訪問リハビリテーション事業で、2021年10月から2026年6月まで、必要な医師の指示書がない状態でサービスが提供され、介護報酬など約1355万円が不適切に請求されていたとされる。市は担当した57歳の主任技術主査を停職6カ月とした。
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