岩手県一関市は8月31日、建設部に勤務する20代の主事級職員が、市長の許可を受けずに市外のマッサージ店で働いていたとして、停職3カ月の懲戒処分にした。
市によると、職員は2025年8月ごろから2026年3月ごろまでの約8カ月間、月4回程度勤務し、約32万円の収入を得ていた。市への情報提供をきっかけに発覚した。
一関市は、今回のマッサージ店での勤務について、市が認める副業には該当しないと判断している。
「職員が副業している」情報提供で発覚
問題が明らかになったきっかけは、市に寄せられた「職員が副業をしている」との情報提供だった。
市が確認を進めた結果、職員が市長の許可を受けないまま、市外のマッサージ店で報酬を得て勤務していたことが判明した。
勤務した店の名称や具体的な所在地、担当していた業務の詳細は公表されていない。
一関市はどのような副業なら許可できるのか
今回の処分を考える上で重要なのが、一関市独自の「職員の営利企業等の従事制限に関する規則」だ。
地方公務員法38条は、任命権者の許可を受けずに報酬を得て事業や事務に従事することなどを制限している。一関市はこれに加え、市の規則で許可の具体的な判断基準を定めている。
一関市の規則では、次のいずれにも該当しない場合に限り、任命権者が兼業を許可できる。
- 勤務時間などの事情から、本来の職務を円滑に遂行することに支障が生じるおそれがある
- 職員の職務と営利企業などとの関係から、公平な職務遂行に支障を及ぼすおそれがある
- 事業や事務の性質上、職員が従事することが適当ではない
- その他、「全体の奉仕者」である公務員として適当ではない
つまり、一関市の制度は「農業なら可」「講師なら可」といった形で許可可能な業種を一律に列挙する仕組みではない。個別の仕事について、職務への影響、利害関係、仕事の性質、公務員としての適否を判断する構造になっている。
今回、市はマッサージ店での勤務について「認められる副業には当たらない」と説明している。ただ、市が規則第3条のどの基準に照らして対象外と判断したのかについて、現在確認できる公表内容では具体的に示されていない。
停職3カ月はどう位置づけられるのか
今回の処分は「停職3カ月」。
地方公務員の無許可副業に対する処分は、勤務期間や回数、収入、仕事内容、職務への影響などによって自治体ごとに異なり、無許可副業だから一律に停職3カ月になるわけではない。
愛知県一宮市では2023年、消防職員2人が許可手続きをせず副業していたとして、一人を停職3カ月、もう一人を停職2カ月としている。
停職3カ月となった職員は2021年4月から2023年1月まで、停職2カ月となった職員は2021年7月から同年9月まで無許可で副業していた。
一方、さいたま市は2026年1月、任命権者の許可を受けないまま大規模な賃貸住宅経営を行い、月100万円以上の不動産収入を得ていた56歳の職員を減給10分の1、1カ月としている。
仕事内容や違反態様が異なるため単純比較はできないが、こうした事例からも、無許可副業に対する処分量定には全国共通の単純な「金額=処分期間」という対応関係はないことが分かる。
今回の一関市の停職3カ月については、約32万円という収入額だけではなく、一定期間にわたり継続して報酬を得ていたことや、勤務そのものを市が認められる副業ではないと判断したことなどを含めて処分されたとみられる。
ただし、一関市が停職3カ月とした具体的な量定理由や、過去の処分基準との比較については、現在確認できる報道では明らかになっていない。
職員「深い後悔と反省」
菅原哲紀総務部長は、処分を受けた職員について、
「職場の信用を失いかねない状況を招いてしまったことについて、深い後悔と反省の気持ちを抱いている」
と職員の言葉を紹介した。
佐藤善仁市長は、
「誠に遺憾。全職員が公務員として強い自覚をもつよう指導を徹底する」
とコメントしている。
「副業解禁」と無許可勤務は別問題
地方公務員の副業をめぐっては、地域貢献や専門知識の活用などを目的に、兼業を柔軟に認める自治体もある。
ただし、「副業を認める方向に制度が変化している」ことと、「職員が自らの判断で報酬を得る仕事を始められる」ことは別だ。
少なくとも一関市では、許可基準を満たすかを任命権者が判断する仕組みになっている。職員本人が「本業に影響しない」と考えているだけでは足りない。
今回の事案では、市がマッサージ店勤務を認められる副業ではないと判断している。
一方で、市の公表規則だけを見ると、どの仕事が事前に許可され、どの仕事が対象外になるのかを業種別に具体的に示した一覧は確認できない。
再発防止を考える上では、職員に許可制度を周知するだけでなく、実際にどのような兼業が許可対象となり得るのかを分かりやすく示す運用も論点となりそうだ。
編集部まとめ
今回の事案で注目されるのは、約32万円という収入額以上に、一関市がマッサージ店での勤務そのものを「認められる副業ではない」と判断した点だ。
一関市には兼業許可の具体的な判断基準がある一方、今回どの基準に抵触すると判断し、なぜ停職3カ月という量定になったのかまでは公表されていない。
公務員の副業を認める動きが広がる中、どこまでが許可可能で、どこからが服務違反になるのか。今回の処分は、その境界を職員にどう示すかという課題も浮き彫りにしている。
週刊TAKAPI 編集部/成田
特記事項
この記事は8月31日夜時点で確認された一関市の説明に基づく報道、一関市職員の営利企業等の従事制限に関する規則、他自治体が公表した懲戒処分事例をもとに構成しています。
一関市の規則は「許可できる副業の業種」を列挙する形式ではなく、職務への支障、公平性への影響、事業の性質、公務員としての適否などを基準に任命権者が判断する制度です。
今回、市がマッサージ店勤務をどの許可基準に照らして対象外と判断したのか、また停職3カ月とした具体的な量定理由については、8月31日夜時点で確認できる公表情報では明らかになっていません。
他自治体の処分例は、処分水準を機械的に比較するためではなく、無許可副業でも事案の内容によって処分が異なることを示す参考事例として掲載しています。
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