オンライン旅行予約サイト「アゴダ」の宿泊施設検索データで、2026年9月に開かれる第20回アジア競技大会の開催都市を中心に、愛知県内への旅行需要が大きく伸びていることが分かった。
検索数では名古屋市が1位となり、東三河からは豊橋市が3位、新城市が10位に入った。検索数の伸び率では豊田市が715%増、一宮市が504%増を記録。大会をきっかけとした関心は、名古屋の中心部だけでなく、県内各地へ広がっている。
一方、検索数の増加が、そのまま宿泊予約や地域消費につながるとは限らない。世界から集まる旅行者を大会後も呼び込めるか。愛知県と各開催都市には、スポーツ大会を一過性のイベントで終わらせない観光戦略が問われる。
アジア競技大会期間の宿泊検索、名古屋市が最多
アゴダが分析したのは、第20回アジア競技大会が開催される2026年9月19日から10月4日までの宿泊施設検索データだ。
検索数が最も多かった都市は名古屋市だった。
名古屋市では陸上競技、水球、バスケットボール、柔道、サッカー、7人制ラグビー、体操、テニスなど、幅広い競技の開催が予定されている。
新幹線や中部国際空港からのアクセスに加え、名古屋めし、名古屋城、栄、大須、熱田神宮など、観戦と組み合わせられる観光資源が集中していることも、宿泊先として検索される理由とみられる。
第20回アジア競技大会は、日本では1994年の広島大会以来、32年ぶり3回目の開催。アジアの45の国と地域から選手や大会関係者が集まる大規模な国際スポーツ大会となる。
東三河も上位入り 豊橋市3位、新城市10位
注目すべきは、宿泊検索が名古屋市だけに集中していない点だ。
東三河では、豊橋市が検索数3位、新城市が10位に入った。
豊橋市では野球、空手、テコンドーが予定され、新城市では自転車競技が開催される。競技会場を目的に訪れる選手関係者や観客が、開催都市周辺の宿泊施設を探している可能性がある。
豊橋市は東海道新幹線、東海道本線、名鉄名古屋本線などが乗り入れる東三河の交通拠点だ。名古屋方面だけでなく、静岡県西部や渥美半島、奥三河方面への移動拠点としても使いやすい。
新城市は市内の宿泊施設数が限られるため、実際の宿泊需要が豊橋市や浜松市など周辺都市へ波及する可能性も考えられる。
ただし、今回の順位はアゴダ上の「検索数」によるものであり、予約件数や実際の宿泊者数を示すものではない。この点は分けて見る必要がある。
蒲郡市ではトライアスロン 竹島周辺も国際大会の舞台に
東三河では蒲郡市も重要な競技開催都市となる。
蒲郡市内では、竹島を望む特設コースでトライアスロンを実施。2026年9月20日に男女個人、21日に混合リレーが予定されている。
競技コース周辺には竹島や竹島水族館、生命の海科学館、温泉地などがあり、スポーツ観戦と観光を組み合わせやすい。
蒲郡市は今回明らかになった検索数の上位10都市には含まれていないものの、大会が近づくにつれて宿泊需要が高まる可能性がある。
東三河全体で考えれば、豊橋市、新城市、蒲郡市を個別に売り出すだけでなく、鉄道やバス、自動車で周遊できる観光圏として発信する視点が必要になる。
豊田市は715%増 一宮市や刈谷市も検索急増
検索数の順位とは別に、大会期間中の宿泊検索を3週間前のデータと比較した伸び率では、県内各地で大幅な上昇が確認された。
主な都市の伸び率は次の通り。
- 豊田市:715%増
- 一宮市:504%増
- 刈谷市:324%増
- 岡崎市:237%増
豊田市では複数の競技、一宮市ではバドミントン、刈谷市ではサッカー、岡崎市ではアーチェリー、バレーボール、野球などが予定されている。
検索が急増した都市の多くは、競技会場を持つ自治体だ。観戦する競技の会場に近い場所を探す動きが、数字に表れたと考えられる。
ただし、増加率は比較前の検索数が少ない場合に大きくなりやすい。715%増という数字だけで、豊田市の検索総数が名古屋市を上回ったとは判断できない。
台湾、韓国、香港から高い関心 中国は724%増
海外から愛知県内の開催都市を検索した国・地域では、台湾が最も多く、韓国、香港、フィリピン、中国が続いた。
検索数の伸び率では、中国が724%増と突出。フィリピンも249%増となった。
大会期間が中国の中秋節や国慶節の時期と重なることや、前回の杭州大会によってアジア競技大会への認知が高まっていることが背景にあるとみられる。
フィリピンでは男子バスケットボールの人気が高い。前回の杭州大会で同国代表が61年ぶりに金メダルを獲得したことから、連覇への期待が旅行検索を後押ししている可能性もある。
検索上位に台湾、韓国、香港、中国が並んだことで、宿泊施設や飲食店には英語だけでなく、中国語や韓国語への対応も課題となる。
ホテル価格にも影響 豊橋市の推定単価は前年から97%上昇
宿泊業界向けメディア「HotelBank」がメトロエンジンリサーチのデータを基にまとめた分析では、大会期間を含む2026年9月の愛知県全体の推定平均客室単価は1万4300円。前年同月の8500円から69%上昇している。
豊橋市の推定平均客室単価は、2025年9月の7300円から2026年9月には1万4300円となり、前年同月比97%増とされた。
名古屋市中村区は2万200円で113%増、中区は1万7300円で83%増と分析されている。
これは実際に各ホテルが確定した宿泊料金ではなく、OTAに掲載された情報などから算出した推定値だが、大会需要が名古屋市外にも広がっていることを示す材料にはなる。
旅行者にとっては、検索数や予約が集中する日程で宿泊料金が高くなったり、希望する地域で部屋を確保しにくくなったりする可能性がある。
検索増加を地域消費につなげられるか
宿泊検索で豊橋市や新城市が上位に入ったことは、普段は東三河を訪れる機会が少ない国内外の旅行者に、地域を知ってもらう大きな機会だ。
しかし、競技観戦だけで宿泊者が帰ってしまえば、地域への経済効果は限定的になる。
豊橋駅や競技会場で観光情報を多言語で案内することに加え、豊橋カレーうどん、三河湾の海産物、奥三河の自然、蒲郡温泉郷、竹島などを組み合わせた周遊提案が必要だ。
特に新城市では、競技会場と駅、宿泊施設、観光地を結ぶ移動手段が分かりにくければ、旅行者の負担になる。公共交通の案内や臨時輸送、キャッシュレス決済、手荷物対応など、実際の滞在を想定した準備が求められる。
【編集部考察】「名古屋の大会」で終わらせない戦略を
今回の検索データから見えるのは、アジア競技大会への関心が名古屋市だけでなく、競技が行われる地方都市にも広がっていることだ。
豊橋市3位、新城市10位という結果は、東三河にとって大きな好機である。
一方、検索数はあくまで旅行者の関心を示す初期段階の数字だ。検索した人が予約し、実際に訪れ、飲食や買い物、観光で地域を回って初めて経済効果につながる。
自治体や観光事業者には、大会直前のPRだけでなく、旅行者が競技会場まで迷わず移動できる案内、飲食店の営業情報、多言語対応、災害時の情報提供など、受け入れ環境の点検が必要だ。
さらに重要なのは大会後である。大会をきっかけに訪れた旅行者へ地域の魅力を伝え、再訪につなげられるか。2026年の宿泊検索急増を一時的な数字で終わらせない取り組みが、東三河の観光に長期的な効果を残す鍵となる。
※本記事は公開されている企業情報、報道内容、地域特性、市場動向などをもとに編集部が独自に考察した内容です。企業や関係者が公表している出店理由・経営方針を断定するものではなく、一部に編集部の見解や推測が含まれます。最新かつ正確な情報は、各企業・自治体の公式発表をご確認ください。
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