ソニー生命保険で進む全顧客調査から、新たな金銭不正が判明した。
同社が9月11日に公表した2026年8月末時点の調査結果によると、元営業社員2人が顧客6人から計約2190万円を詐取していたことが新たに取材確認された。
これにより、保険契約の解約返戻金などが関係する「保険業務に関連する金銭詐取」は、累計で元営業社員4人、顧客21人、約5640万円となった。
一方、投資話や個人的な借り入れなど「保険業務に関わらない不適切な金銭の授受」は、別集計で営業社員・元営業社員6人、顧客17人、約1億2420万円が確認されている。
約280万人を対象とした確認作業はまだ続いており、ソニー生命は11月末の完了を見込む。金融庁からは保険業法に基づく立入検査の通知も受けている。
新たに2人、顧客6人から約2190万円
今回新たに判明したのは、元営業社員2人による事案だ。
1人は千葉県内の支社に所属していた50代の元営業社員。2021年6月から2023年10月にかけ、顧客5人から約920万円を受け取っていた。
保険契約に関する面談などを通じて、ソニー生命が取り扱っていない投資や運用を持ちかけ、金銭を預かったものの、実際には投資せず私的に使用していたとされる。
もう1人は兵庫県内の支社に所属していた40代の元営業社員で、2023年4月から2024年11月にかけ、顧客1人から約1270万円を受け取っていた。
保険契約を「別の商品に入れ替える」などとして解約させ、支払われた解約返戻金の一部を預かった後、私的に使用していたという。
会社は、この元社員についてほかにも同様の事案がないか調査を続けている。
8月公表の100万円事案、13人・約3300万円まで拡大
全顧客調査が進んだことで、すでに公表されていた事案の規模も拡大した。
8月時点では、千葉県内の支社に所属していた50代の元営業社員が、顧客1人から100万円を詐取した事案が明らかになっていた。
元社員は「社員向け持株会を通じて未公開株へ投資できる」などと説明し、保険契約の解約を促して金銭を受け取ったとされる。
その後の確認で、同じ元社員による対象は顧客13人、約3300万円まで拡大した。
途中経過の公表後に、対象人数や金額が大きく増えたケースがすでに出ていることになる。
約5640万円と約1億2420万円 数字は別集計
今回の問題では、複数の金額が報じられており、数字の意味を分けて見る必要がある。
ソニー生命が公表している「保険業務に関連する金銭詐取」は、8月末時点で元営業社員4人、顧客21人、約5640万円。
これとは別に、「保険業務に関わらない不適切な金銭の授受」が、営業社員・元営業社員6人、顧客17人、約1億2420万円確認されている。
後者には、投資話や顧客との個人的な金銭貸借などが含まれる。
両カテゴリーには同一人物が含まれているため、単純に金額や人数を足して全体の「被害総額」とすることは適切ではない。
ソニー生命も、両金額を合算した一つの総額としては公表していない。
約280万人を確認 調査完了は11月末見込み
ソニー生命は現在、営業社員や専属代理店が担当する顧客約280万人を対象に確認を進めている。
顧客へのメールや郵送、電話などを通じて、不審な投資話や金銭授受、保険契約の解約を伴う資金提供などがなかったかを確認している。
全体の確認完了は11月末を見込んでおり、12月中旬をめどに、その時点での調査結果や再発防止策、顧客対応の状況を改めて公表する予定としている。
つまり、現在示されている約5640万円や約1億2420万円は、最終確定値ではなく調査途中の数字だ。
金融庁、報告徴求から立入検査へ
金融庁の対応も進んでいる。
ソニー生命は4月、不正事案への対応や全顧客調査について、保険業法に基づく報告徴求命令を受けた。
さらに9月の発表では、金融庁から立入検査の通知を受領したことを明らかにした。
会社側から報告を受ける段階に加え、当局が社内の管理態勢などを確認する段階へ進んだ形だ。
ただし、立入検査の実施は行政処分の決定を意味しない。今後、金融庁が営業管理や再発防止策をどのように評価するかが焦点となる。
ソニー生命自身が認めた「密室化」
今回の一連の問題で重要なのは、会社自身が営業担当者と顧客の関係が特定の担当者に依存し、外部から見えにくくなるリスクを認識している点だ。
ソニー生命は、こうした状態を「密室化」と表現している。
対策として、本社から顧客へ直接連絡する機会を増やすほか、複数の社員で顧客対応を行う「共同保全」、営業社員が取り扱える商品やサービスを顧客に明示する「権限明示」などを進めている。
2024年11月からは、営業社員が提供できる商品・サービスと提供できないものを契約時に示す仕組みも導入した。
今後は、契約内容や顧客の意向、手続きの適切性について、本社が直接確認する取り組みをさらに広げるとしている。
問題は「ライフプランナー」という名称ではない
ソニー生命は、コンサルティング型の営業社員を「ライフプランナー」と呼んでいる。
一連の不祥事を受け、この営業モデル自体を問題視する議論もある。
ただし、ライフプランナー制度そのものが今回の不正の直接原因だと、ソニー生命や金融庁が認定したわけではない。
問われているのは名称ではなく、営業担当者と顧客の間に形成された強い個人的関係を、会社がどこまで把握し、チェックし、不正を早期に発見できるかという管理態勢だ。
会社自身が「密室化」をリスクとして挙げている以上、再発防止策が実際の営業現場で機能するかが重要になる。
過去には巨額の個人的金銭貸借も
ソニー生命では今年3月、2023年に懲戒解雇された別の元営業社員による個人的な金銭貸借問題も表面化している。
会社は、元社員が複数の顧客と個人的な金銭の借り入れを行っていたことを確認している。
報道では巨額の金銭貸借があったとされているが、会社の公式発表では具体的な総額を示していない。
そのため、今回の全顧客調査で示された約5640万円や約1億2420万円と、過去の報道ベースの金額を単純に結び付けることはできない。
専属代理店制度も廃止へ
ソニー生命は4月、専属代理店制度を廃止する方針も決めた。
制度は、経験を積んだ営業社員が独立して顧客対応を行う仕組みとして導入されていたが、会社は代理店管理や統制上の課題も踏まえて見直すとしている。
9月の確認では、専属代理店が担当する顧客について金銭不祥事は確認されなかった。
一方で、一部の専属代理店が会社へ事前に届け出ず、ソニー生命が取り扱わない投資商品や取扱業者などを顧客へ紹介していたことが確認された。
営業社員だけでなく、販売チャネル全体の管理を見直す動きとなっている。
次の焦点は11月末 数字はまだ確定していない
今回の約2190万円は、調査が進んだことで新たに判明した数字だ。
さらに、8月に100万円として公表された事案が、その後13人・約3300万円まで拡大した例もある。
約280万人への確認が完了するまでは、対象人数や金額が今後も変わる可能性がある。
今後の最大のポイントは、11月末までの全顧客確認で新たな事案がどこまで判明するのか、そして金融庁の立入検査を踏まえ、ソニー生命が営業担当者と顧客の「密室化」をどこまで解消できるかだ。
編集部まとめ
ソニー生命の全顧客調査で、元営業社員2人が顧客6人から計約2190万円を詐取していたことが新たに判明した。
8月末時点では、保険業務に関連する金銭詐取が累計4人・顧客21人・約5640万円。これとは別に、保険業務に直接関係しない不適切な金銭授受が累計6人・顧客17人・約1億2420万円確認されている。
約280万人を対象とする確認はまだ終わっていない。
会社自身が「密室化」をリスクとして認識し、本社による顧客確認や複数社員での対応を強化する中、今後は新たな被害の有無だけでなく、再発防止策が営業現場で実際に機能するかが問われる。
週刊TAKAPI 編集部
特記事項
9月11日のソニー生命による公表では、「保険業務に関連する金銭詐取」と「保険業務に関わらない不適切な金銭の授受」を別カテゴリーで集計しています。
約5640万円は前者、約1億2420万円は後者の累計額です。両カテゴリーには重複する人物がいるため、本稿では単純合算して「被害総額」としていません。
今回新たに判明した約2190万円の事案、過去の個人的な金銭貸借、専属代理店を巡る問題はそれぞれ別の事案です。
金融庁による立入検査の通知は確認されていますが、行政処分が決定したことを意味するものではありません。
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