愛知県は9月18日、9月8日の記録的な大雨を受け、国土交通省中部地方整備局とともに「令和8年9月の大雨に対する河川整備の効果検証会議」を9月30日に開催すると発表した。
9月8日の大雨では、名古屋市で1時間最大104.5ミリを観測した。
県が比較対象として示した2000年9月の東海豪雨時の97ミリを上回る猛烈な雨だった一方、県は浸水家屋数が東海豪雨時から大きく減少したとして、これまで進めてきた河川整備が「大きな効果を発揮した」と評価している。
では、この26年間で何が変わったのか。
週刊TAKAPIは、東海豪雨後に庄内川、新川などで進められてきた治水対策と今回の大雨を公表資料から検証した。
1時間104.5ミリ 東海豪雨を上回る猛烈な雨
9月8日の大雨では、名古屋市で1時間最大104.5ミリを観測した。
愛知県は今回の発表で、2000年の東海豪雨時の97ミリを上回る降雨だったとしている。
一方、国土交通省の過去資料では、東海豪雨時に名古屋地方気象台で観測された時間最大雨量を93ミリとしている資料もある。
観測地点や集計方法などを含めた単純比較には注意が必要なため、本記事では「県が今回比較対象として示した97ミリ」として扱う。
重要なのは、今回も1時間100ミリを超える極めて激しい雨だったことだ。
東海豪雨では1万8000戸超が被災
2000年9月の東海豪雨では、名古屋地方気象台で総雨量567ミリを記録した。
庄内川の越水、新川の破堤、内水氾濫などによって約19平方キロが浸水。
1万8000戸を超える住家が被災し、約2万9000人が避難を余儀なくされた。
被害総額は約6700億円に上った。
特に新川では左岸堤防が約100メートルにわたって破堤し、一部では浸水深が2メートルを超えた。
愛知県の治水政策に大きな転換を迫った災害だった。
東海豪雨後、庄内川・新川などを大規模改修
東海豪雨後、国と県は庄内川、新川、天白川などで河川整備を進めてきた。
対策は堤防を高くするだけではない。
河道掘削、堤防整備、放水路、排水機場、遊水地など、複数の対策が組み合わされている。
庄内川・新川では、東海豪雨を受けた河川激甚災害対策特別緊急事業などが実施された。
国土交通省の資料では、この緊急事業の事業費は計716億円。
築堤や河道掘削などが進められた。
「716億円で5500億円軽減」は今回の被害額ではない
国交省は過去の事業評価で、東海豪雨が発生する前にこの716億円の緊急事業が完成していたと仮定した場合、約6700億円だった被害額を約1200億円まで抑えられた可能性があると試算している。
差額は約5500億円となる。
ただし、この数字には注意が必要だ。
「今回の9月8日の大雨で5500億円の被害を防いだ」という意味ではない。
あくまで2000年の東海豪雨と同じ災害に対して、河川整備が事前に完成していた場合を想定した過去のシミュレーションだ。
今回の大雨で実際にどの程度の被害軽減効果があったのかは、9月30日の検証会議などで今後詳しく分析される。
新川への流入量を減らす対策も
東海豪雨では、庄内川から新川へ大量の水が流れ込み、新川の水位上昇につながった。
国交省の過去の計画資料では、東海豪雨規模の洪水を想定した場合、新川洗堰から新川への最大越流量について、東海豪雨時の約270立方メートル毎秒から、激甚災害対策後には約70立方メートル毎秒、さらに河道整備後には約20立方メートル毎秒まで低減できるとの計算が示されている。
庄内川の水位についても、同じ計算上では東海豪雨時のTP12.1メートルから、河道整備後にはTP10.6メートルまで約1.5メートル低下するとされている。
これも今回の9月8日に実測された数値ではなく、河川整備計画上の計算値だ。
ただ、東海豪雨後に「どのような考え方で河川を改修してきたのか」を示す重要な資料といえる。
今回も浸水被害は発生している
河川整備の効果が指摘される一方、9月8日の大雨で被害がなくなったわけではない。
愛知県は今回の大雨について継続して被害状況を集計しており、床上浸水を含む住家被害が複数の自治体で確認されている。
県は被災世帯への災害見舞金支給も決めている。
つまり、
「東海豪雨より被害が減った」
ことと、
「現在の治水対策で十分である」
ことは同じではない。
今回どの河川で整備効果が現れ、どこに課題が残ったのかを分けて検証する必要がある。
9月30日、国・県・気象台が検証
検証会議は9月30日午前10時から、愛知県庁本庁舎で開催される。
参加するのは国土交通省中部地方整備局、名古屋地方気象台、愛知県。
会議では、
・東海豪雨時の降雨と被害状況
・東海豪雨以降の河川整備
・9月8日の降雨と被害状況
・河川水位などから見た整備効果
・今後の検証
などを扱う予定だ。
ただし報道機関が取材できるのは県側の冒頭あいさつまでで、その後の議論は非公開となる。
県は、検討途中の内容が公になることで混乱を招く可能性があることを非公開の理由としており、検証結果については取りまとめ後に公表するとしている。
「104.5ミリでも被害減」その理由を数字で示せるか
今回のポイントは、単純に「東海豪雨より強い雨が降ったのに被害が減った」ということだけではない。
河道掘削、堤防、遊水地、排水機場など26年間に進められた対策のうち、実際にどの施設がどれだけ水位を下げ、浸水を防いだのか。
逆に、今回の大雨で新たに浮かび上がった弱点はなかったのか。
愛知県は現時点で河川整備が「大きな効果を発揮した」と評価している。
その評価を具体的な河川水位、流量、浸水面積、浸水家屋数などのデータでどこまで説明できるかが、9月30日の検証の焦点となる。
週刊TAKAPIでは、検証結果の公表後、今回の大雨で河川整備が実際にどこまで機能したのかを引き続き検証する。
Q&A 9月8日の愛知県の大雨と河川整備
情報提供・相談窓口
週刊TAKAPIでは、河川、浸水、防災、行政対応などに関する情報提供を受け付けています。
メール:info@108takapi.jp
各種SNSのDM・公式LINEからも情報をお寄せください。
地域の噂・身近な情報
独立メディアだからこそできる、忖度しない報道を。

コメント
0件まだコメントはありません。最初のコメントを投稿してみませんか。
この記事のコメント投稿は締め切られています。