愛知県蒲郡市で、生活保護を担当していた元職員が、実際には行っていない被保護者との面談を行ったように記録していたなどとする公益通報があり、市の公益通報調査委員会が調査していたことが分かった。
通報では「すでに死亡している被保護者との面談記録が存在した」との指摘や、当時の福祉課長が人事課長へ問題を報告したものの取り合われなかったとの主張もあった。
しかし調査委員会が、元職員が担当していた被保護者のうち死亡した32人のケース記録票などを確認した結果、死亡後に面談したとの記載は見つからなかった。
関係者へのヒアリングなども踏まえ、調査委員会は通報で指摘された4項目をいずれも認定せず、最終的に「面談記録の偽造は存在しなかった可能性が高い」と結論付けた。
退職した元職員をめぐり公益通報
調査結果報告書によると、公益通報申出書が提出されたのは2024年7月12日。蒲郡市が公表している公益通報実績では、同月16日付で受け付けた案件として記録されている。
対象となったのは、2016年3月31日に退職した当時の福祉課職員Aだった。
通報者は、Aの退職当日に他の職員が机を整理したところ「大量の印鑑」が発見され、その後に面談記録を確認したところ、実際には面談していないにもかかわらず面談したように記録されたものが多数あったと申し立てた。
さらに、すでに死亡した被保護者との面談記録があった、公用車を使用した記録がない面談があったなどと指摘。当時の福祉課長が人事課長へ報告したものの、Aがすでに退職していたことを理由に取り合われなかったとも主張した。
これらはあくまで公益通報で申し立てられた内容であり、調査委員会が確認・認定した事実ではない。
「大量の印鑑」は確認できず
調査委員会は、通報内容から4つの事項を設定して事実関係を調べた。
最初に検証したのが、Aの机から大量の印鑑が発見されたとする点だ。
ヒアリングでは、実際に大量の印鑑が出てきたところを見た人物は確認できず、通報者以外にその話を聞いたことを記憶している人物もいなかった。
さらにケース記録票を調べたところ、担当員や係長兼査察指導員、課長補佐、課長などの押印欄はあるものの、被保護者本人が押印する箇所はなかった。
こうした事情から調査委員会は、Aの机から大量の印鑑が出てきたとの事実を認定できないと判断した。
死亡した被保護者32人の記録を確認
通報内容の中でも重大だったのが、「死亡した被保護者と面談したことになっている記録が存在した」とする指摘だ。
調査委員会はAが担当していた被保護者のうち、すでに死亡した32人のケース記録票を含む記録を調査した。
被保護者が死亡した場合には死亡届と死亡診断書または死体検案書が添付されていたほか、ケース記録票と戸籍を照合した結果、死亡後に面談したとの記載は確認されなかった。
関係者へのヒアリングでも、死亡後の面談記録を実際に確認した人物はおらず、通報者以外にその話を聞いたことを記憶している人物も確認されなかった。
調査委員会はこれらを踏まえ、Aが死亡した被保護者との面談記録を作成していたとの事実を認めなかった。
公用車記録は保存期間を過ぎ廃棄
一方、調査では確認できなかった資料もある。
通報では、公用車を使用しなければ訪問が難しい距離に住む被保護者との面談について、Aによる公用車の使用記録がなかったと指摘されていた。
しかし、2016年度当時の公用車使用記録は紙媒体で作成され、保存期間は1年だった。調査が始まった時点ではすでに廃棄されており、委員会が当時の記録そのものを確認することはできなかった。
ヒアリングでも、Aの面談記録と公用車使用記録を当時照合した人物は確認できなかったため、調査委員会はこの点についても通報内容を認定していない。
「人事課が取り合わなかった」との主張も認定せず
通報では、当時の福祉課長が問題を人事課長へ報告したものの、Aがすでに退職していたことを理由に取り合われなかったとも主張されていた。
これについて元福祉課長は調査委員会のヒアリングで、人事課長へ何かを言いに行ったかどうかについて「そのような記憶はない」と説明した。
福祉課長が人事課へ行ったところを見た人物は通報者以外に確認されず、それを裏付ける客観的資料も残されていなかった。
調査委員会は、福祉課長が面談記録の偽造について人事課長へ報告したとの事実を認定できず、報告に行った可能性についても「低い」と評価した。
調査委「偽造は存在しなかった可能性が高い」
調査委員会は最終的に、「大量の印鑑」「死亡後の面談記録」「公用車使用記録との不整合」「人事課への報告」の4項目すべてについて、通報された事実を認定できなかった。
死亡した被保護者のケース記録票を調べても、死亡後に面談記録が作成された箇所や特に不自然な部分は確認されなかったとして、4項目について「これらの事実が存在した可能性も低い」と評価した。
その上で、「福祉課職員Aによる被保護者との面談記録の偽造は存在しなかった可能性が高い」と結論付けた。
ただ、調査対象となったのは約9年前の出来事だった。公用車使用記録のように保存期間を過ぎて廃棄され、確認できなかった資料もある。
調査委員会自身も、強制的な調査権限を持たないことや、長期間が経過して客観的証拠が残っている可能性が低いことなどを調査上の制約として明記している。
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