「中国離れ」進む日本企業 2年で2916社減 静岡・愛知でも事業縮小や拠点撤退

中国進出の日本企業が2年間で2916社減少し愛知・静岡でも事業再編が進むニュースのアイキャッチ

中国に進出する日本企業が大きく減っている。

帝国データバンクが2026年9月28日に公表した「日本企業の『中国進出』動向調査(2026年)」によると、中国に進出する日本企業は2026年6月時点で1万118社。2024年の1万3034社から、わずか2年間で2916社、22.4%減少した。

ピークだった2012年の1万4394社と比べると、減少数は4276社、29.7%減。統計データがある2010年以降で最も少ない水準となった。

静岡県や愛知県に本社を置く企業でも、中国事業の縮小や現地子会社の整理が進んでいる。

ただし、単純な「中国からの全面撤退」と見るのは早い。中国市場を維持しながら、東南アジアなどへ生産・供給網を分散させる動きもあり、日本企業の中国ビジネスは「拡大」から再編・選別の段階へ入ったとみられる。


中国進出企業は2年間で2916社減少

帝国データバンクの調査では、2024年から2026年にかけて中国へ新たに進出した「新規参入」は1221社だった。

これに対し、拠点閉鎖などによる「撤退・所在不明」は4137社に上り、過去最多となった。

差し引きすると2916社の純減となる。

中国進出企業数の推移を見ると、

2012年:1万4394社
2024年:1万3034社
2026年:1万118社

となっている。

2012年のピークから2026年までに4276社が減った計算で、日本企業の中国進出を巡る環境が大きく変化していることが分かる。


なぜ日本企業の「中国離れ」が進んでいるのか

背景は一つではない。

帝国データバンクは、中国国内の景気停滞に加え、日中関係、改正反スパイ法、現地企業との価格競争、サプライチェーンを巡るリスクなど、中国事業を取り巻く複数の要因を指摘している。

かつて中国は、豊富で比較的安価な労働力を生かした「世界の工場」として、日本企業の製造拠点拡大を支えてきた。

しかし人件費などのコスト環境が変わり、ベトナムをはじめとした東南アジアや日本国内へ生産拠点を移したり、複数国に分散したりする企業も増えている。

いわゆる「チャイナプラス1」と呼ばれる動きだ。


特に製造業で減少 2024年から933社減

業種別でも変化が鮮明になっている。

報告によると、製造業の中国進出企業は2024年の5139社から2026年には4206社となり、933社減少した。

卸売業も4218社から3320社へ898社減、サービス業も1803社から1213社へ590社減少している。

とりわけ、従来の中国進出を支えてきた製造分野で拠点再編が進んでいる点は注目される。


静岡・ASTIは中国EV向けワイヤーハーネス事業から撤退

東海地方でも具体的な動きが出ている。

静岡県浜松市に本社を置く電子機器メーカーASTIは、2025年9月、中国子会社「浙江雅士迪電子有限公司」で手掛けていた中国EV向けワイヤーハーネス事業の廃止を決めた。

会社側は、中国EV市場で競争が激化し、納入価格の引き下げによる採算悪化や新規モデルの受注難航、中国の地場企業の参入などが続き、業績改善は困難と判断したと説明している。

同社の2026年の株主総会資料でも、浙江雅士迪電子有限公司について、2025年9月をもってワイヤーハーネス事業から撤退したことが確認できる。

ASTIが中国に浙江雅士迪電子有限公司を設立したのは1994年12月。30年以上にわたって中国で事業を展開してきた企業でも、事業構造を見直す局面を迎えている。

一方で、ASTIは中国・杭州にも子会社を持っており、中国事業すべてから撤退したわけではない。


愛知・豊田合成も天津の中国子会社を解散へ

愛知県でも中国拠点の再編が進む。

清須市に本社を置く豊田合成は2025年8月、中国・天津市の子会社「豊田合成星光(天津)汽車部品有限公司」を解散すると発表した。

会社側によると、中国事業の収益構造改革の一環で、中国での日系自動車メーカーの減産などを背景に、同子会社としての事業成長が見込めないと判断した。

生産終了は2025年12月、清算完了は2026年12月を予定している。

ただし豊田合成についても、中国事業から全面撤退するわけではない。

現在も天津、張家港、佛山などに複数の中国拠点を持っており、今回の動きは中国事業全体からの撤退ではなく、拠点の選択と集中と見る必要がある。


「脱中国」ではなく中国依存を下げる動きか

ここで注意したいのは、日本企業が一斉に中国市場を捨てているわけではないことだ。

帝国データバンクは、中国について、巨大な消費・物流市場としての重要性は依然として大きいと分析している。

その一方で、低コストの生産基地として進出する形から、高付加価値製造、販売・マーケティング、研究開発、情報サービスなどを目的とした進出へ変化しているという。

つまり「中国から撤退するか、残るか」という二者択一ではない。

中国市場には残りながら、生産拠点や調達網を東南アジアや日本などにも分散する。

こうした中国への依存度を下げる企業戦略が広がっているとみられる。


今後は東南アジア・インド・国内回帰が焦点に

日本企業の中国進出数が2年間で2916社減ったことは、企業の海外戦略が大きな転換期に入っていることを示している。

特に製造業が集積する愛知県や静岡県にとっては、中国拠点の縮小が「中国だけの問題」で終わるとは限らない。

生産がベトナムやインドなどへ移れば、東海地方の本社・工場から見た部品調達や物流、人材配置、設備投資にも変化が生じる可能性がある。

一方、中国は依然として巨大市場であり、製造インフラや部材調達網も存在する。

今後の焦点は「中国から撤退する企業がどこまで増えるか」だけではなく、日本企業が中国をどのような位置付けに変え、代わりにどの国・地域へ経営資源を振り向けるのかになりそうだ。


編集部の考察

今回の数字から見えてくるのは、単純な「中国離れ」以上に、日本企業による海外拠点の再配置だ。

特に自動車産業が集積する愛知・静岡では、中国のEVメーカーや部品メーカーとの競争激化は無視できない。

ASTIや豊田合成の事例も、中国市場そのものを放棄したというより、採算性や将来性を拠点単位・事業単位で厳しく判断する段階に入った事例として見る方が実態に近い。

中国一極集中から複数国への分散がさらに進めば、東海地方の製造業にとっても、海外サプライチェーンの組み直しが重要な経営テーマになっていくだろう。


※本記事は公開されている企業情報、報道内容、地域特性、市場動向などをもとに編集部が独自に考察した内容です。企業や関係者が公表している出店理由・経営方針を断定するものではなく、一部に編集部の見解や推測が含まれます。最新かつ正確な情報は、各企業・自治体の公式発表をご確認ください。

週刊TAKAPI編集部:黒木

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