【独自・愛知・田原】田原市の事業承継相談、2026年度は半年で4件 後継者不在の事業者数・廃業件数は「把握せず」

田原市の事業承継相談件数と後継者不在・廃業の実態を調査した週刊TAKAPIの記事

田原市内で、後継者不足や事業承継をめぐる課題はどこまで広がっているのか。

週刊TAKAPI編集部は田原市に対し、市内企業・事業者の後継者不在の実態、事業承継の相談件数、廃業・閉店への影響、支援後の承継実績、今後の支援策など10項目を質問した。

市への取材で、事業承継個別相談窓口の相談件数は2024年度3件、2025年度4件、2026年度は9月末時点で4件だったことが分かった。

一方、田原市は後継者が不在となっている市内事業者の件数を把握しておらず、後継者不在などを理由に廃業・閉店した事業者数も把握していないと回答した。

市は後継者不足について特定業種だけの問題ではなく、「市内全体の問題」との認識を示している。


田原市の事業承継相談は何件?2026年度は9月末までに4件

田原市では、愛知県事業承継・引継ぎ支援センターを招き、「事業承継個別相談窓口」を設けている。

編集部が直近3年度の相談件数を確認したところ、市から次の回答があった。

年度事業承継個別相談窓口の相談件数
2024年度3件
2025年度4件
2026年度4件(9月末時点)

2026年度は年度の前半にあたる9月末時点で、すでに2025年度年間と同じ4件となった。

ただし、単純に「相談が急増している」と判断するには件数が少なく、年度途中でもあるため、今後の推移を見る必要がある。

田原市は「後継者不在の企業・事業者数」を把握していない

一方、地域全体の実態を示す数字については大きな空白がある。

編集部は田原市に、

「田原市内で、後継者が不在であると市が把握している企業・事業者は何社あるか」

と質問した。

これに対して市は、

「市内事業者の後継者の有無については、市として具体的な状況を把握するための仕組みはなく、件数は把握していません」

と回答した。

つまり、相談窓口の利用件数は分かるものの、田原市全体で何社が後継者不在なのかを示す市独自の統計はない。


後継者不足で廃業・閉店した事業者数も「把握せず」

さらに編集部は、後継者不在や事業承継ができなかったことを理由として、廃業・閉店した市内事業者の件数についても尋ねた。

市の回答は、

「後継者不在等を理由に廃業・閉店した市内事業者の件数は把握していません」

というものだった。

このため現状では、後継者不在の事業者が何社存在し、そのうち何社が実際に廃業したのかを、市の統計から追うことはできない。

事業承継問題の規模を考えるうえで重要なポイントだ。


田原市で多い事業承継相談は「親族内承継」

では、実際にどのような事業承継相談が寄せられているのか。

親族内承継、従業員承継、第三者承継・M&A、後継者探し、廃業相談などのうち、田原市は市が把握している範囲について、

「『親族内承継』に関する相談が多くなっています」

と回答した。

経営者の子どもや親族などに事業を引き継ぐケースについての相談が中心となっていることが分かる。

田原市の公式案内では、相談対象を「田原市内の経営者または後継者(親族、従業員、第3者)」としている。市は事業承継には5~10年ほどかかるとされるとして、早期の準備を呼びかけている。


相談後に事業承継できた件数は?市は成果を把握せず

今回の取材ではもう一つ、事業承継支援の「その後」についても確認した。

編集部は、市や関係機関の支援によって実際に事業承継につながった事例や件数があるか尋ねた。

田原市によると、相談内容の共有や相談後の経過報告を受けていないため、具体的な事例・件数は把握していないという。

事業承継は企業の経営状況や後継者、家族関係など機微な情報を含む。

そのため田原市では、相談に市職員が入らず、相談内容の共有や相談後の経過報告も受けない運用となっている。

一方、この仕組みでは市が把握できる数字は基本的に**「相談が何件あったか」まで**となり、その後に承継が成立したのか、廃業を回避できたのかという成果を市側では追えない。


田原市の事業承継相談はどこでできる?

田原市が設置している「事業承継個別相談窓口」は、毎月第2木曜日の2枠で実施されている。

2026年9月からは、田原市産業会館のオープンに伴い、相談場所が田原市産業会館1階小会議室に変更された。

相談を担当するのは、愛知県事業承継・引継ぎ支援センター豊橋サテライトオフィス。料金は無料で、事前予約制となっている。

同センターでは、親族内・第三者承継に関する相談のほか、事業承継診断、事業承継計画の策定、譲渡・譲受企業のマッチング支援などを無料で実施している。


田原市の後継者不足はどの業種で深刻?「市内全体の問題」

後継者不足というと、飲食店や小売店、建設業、製造業、農業関連など、特定の業種で深刻化しているイメージもある。

そこで編集部は、田原市が特に後継者不足が深刻だと認識している業種や地域があるか質問した。

市は、

「後継者不足は市内全体の問題であり、特定の業種や地域が深刻であるという認識はありません」

と回答した。

特定の業界に限定した問題ではなく、田原市全体の地域経済に関わる課題として認識していることになる。


後継者不在による廃業、田原市は「市民生活への影響が大きい」

後継者が見つからないまま企業や店舗が廃業した場合、影響を受けるのは経営者だけではない。

編集部が、経営者の高齢化や後継者不在による廃業が地域経済、雇用、市民生活を支えるサービスなどに与える影響を尋ねたところ、市は、

「消費市場の規模縮小や市民生活を支えるサービスの衰退などにつながり、影響が大きいと認識しています」

と回答した。

これは今回の取材で重要な回答の一つだ。

地域の店舗や企業が失われれば、売上や雇用だけでなく、住民が日常的に利用してきた商品・サービスそのものが地域からなくなる可能性がある。

田原市も、事業承継を単なる一企業の経営問題ではなく、市民生活にも影響する問題として認識していることが分かった。