住宅リフォーム業界で、企業倒産が過去最多のペースで増加している。
2026年1月から9月までの「建築リフォーム工事業」の倒産件数は96件となり、前年同期比20.0%増加した。
東京商工リサーチが10月11日に公表した調査によると、2002年の統計開始以来、1~9月として過去最多を更新した。
背景にあるのは、建築資材の価格高騰や職人不足、人件費の上昇に加え、顧客からの値引き要求や受注競争の激化だ。
工事を受注しても十分な利益を確保できない、いわゆる**「利益なき工事」**がリフォーム会社の経営を圧迫している。
中古住宅への関心が高まる一方、その住宅を改修する事業者が経営難に陥るという、住宅市場の構造的な問題が浮き彫りになった。
リフォーム工事業の倒産が過去最多の96件 2026年は年間120件超の可能性
東京商工リサーチによると、2026年1~9月の建築リフォーム工事業の倒産件数は96件だった。
前年同期の80件から16件増加し、増加率は20.0%に達した。
今回の調査は、負債総額1,000万円以上の倒産を対象としている。
過去の倒産件数との比較
1~9月の倒産件数を比較すると、次のようになる。
| 年 | 倒産件数 |
|---|---|
| 2002年 | 17件 |
| 2008年 | 67件 |
| 2012年 | 74件 |
| 2025年 | 80件 |
| 2026年 | 96件 |
※東京商工リサーチ調査。各年1~9月の件数。
2026年の倒産件数は、統計開始時の2002年と比較すると約5.6倍となっている。
東京商工リサーチは、現在のペースが続いた場合、年間の倒産件数が120件を超える可能性を指摘している。
ただし、年間120件超は現時点での見通しであり、2026年の年間倒産件数が確定したわけではない。
リフォーム会社はなぜ倒産する?最大の原因は「販売不振」と「赤字累積」
今回の調査で注目されるのは、倒産原因の内訳だ。
2026年1~9月に倒産した96件のうち、最も多かったのは販売不振だった。
倒産原因の内訳
| 倒産原因 | 件数 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 販売不振 | 67件 | 19.6%増 |
| 赤字累積 | 17件 | 70.0%増 |
| その他 | 12件 | ― |
| 合計 | 96件 | 20.0%増 |
販売不振と赤字累積を合わせると84件となり、全体の87.5%を占める。
特に深刻なのが、赤字累積による倒産が前年同期比70.0%増加したことだ。
これは、単に仕事が減っているだけでなく、事業を継続するなかで損失が積み重なり、経営が行き詰まる企業が増えていることを示している。
工事を受注しても利益が残らない構造
リフォーム工事では、契約時に決めた工事金額から資材費、人件費、外注費などを支払う。
しかし、契約後に資材価格が上昇したり、職人の確保に追加費用が必要になったりすると、当初想定していた利益が減少する。
さらに、競争の激しい市場では、受注を確保するために値引きを余儀なくされる場合もある。
その結果、売上があっても利益が残らない状況が生まれる。
仕事を取らなければ売上が減る。しかし、安く受注すれば赤字になる。
リフォーム業界では、こうした経営上の難しさが深刻化している。
資材価格の高騰と職人不足がリフォーム工事の利益を圧迫
リフォーム会社の経営を難しくしている要因の一つが、建築コストの上昇だ。
住宅リフォームでは、木材や建材、住宅設備機器など、さまざまな資材を使用する。
これらの価格が上昇すると、工事会社の原価負担が増える。
加えて、建設業界では職人不足が慢性化している。
経験豊富な職人の高齢化や若年層の人材確保が課題となるなか、人件費や外注費も上昇している。
東京商工リサーチは、資材高騰や職人不足、働き方改革に伴う労働環境の変化などが、リフォーム工事業者の経営を圧迫していると分析している。
値上げしたくても値上げできない
一般的に、企業は仕入れ価格が上昇すれば販売価格への転嫁を検討する。
しかし、リフォーム工事では複数の業者から見積もりを取得し、価格を比較することも多い。
工事費用を引き上げれば、競合他社に顧客を奪われる可能性がある。
そのため、資材費や人件費が上昇しても、十分に価格転嫁できないケースが生じる。
こうした状況が続けば、受注件数を維持していても収益性が悪化するおそれがある。
倒産企業の約8割が負債1億円未満 中小リフォーム会社に厳しい経営環境
倒産した企業の負債規模にも特徴がある。
東京商工リサーチによると、2026年1~9月の倒産96件のうち、負債額が1億円未満だった企業は78件だった。
全体の**81.2%**を占めている。
一方、負債額1億円以上5億円未満の倒産も18件発生した。
倒産企業の負債規模
| 負債額 | 倒産件数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 1億円未満 | 78件 | 81.2% |
| 1億円以上5億円未満 | 18件 | 18.7% |
※構成比は公表値。端数処理により合計が100%とならない。
小規模なリフォーム会社を中心に倒産が発生している一方、一定の事業規模を持つ企業にも経営悪化が広がっている。
中小企業では、資材価格の急激な上昇や工期の延長によって資金繰りが悪化した場合、経営への影響が大きくなる可能性がある。
今回の倒産動向は、住宅リフォーム市場における事業者の経営基盤の弱さを示すものともいえる。
中古住宅の需要が高まってもリフォーム会社が儲からない理由
住宅価格の上昇や住宅ローン金利の変化を背景に、中古住宅に目を向ける購入希望者もいる。
中古住宅は新築住宅と比較して購入価格を抑えられる場合があるが、購入後にリフォーム費用が必要になることも多い。
問題は、住宅購入費用とリフォーム費用を合わせた総額だ。
中古住宅そのものの価格が上昇すれば、購入者がリフォームに使える予算は限られる。
その結果、工事内容の縮小や値引き要求につながる可能性がある。
東京商工リサーチの調査では、業界関係者から、以前のように300万円程度で一定規模の内装リフォームを行うことが難しくなっているとの声も紹介されている。
中古住宅市場の拡大が、そのままリフォーム会社の利益増加につながるとは限らない
中古住宅への関心が高まれば、リフォーム工事の需要拡大が期待される。
しかし、需要が存在していても、工事会社が適正な利益を確保できるとは限らない。
住宅購入者の予算には限界があり、資材価格や人件費の上昇分をすべて工事代金に反映できるわけではないためだ。
中古住宅市場とリフォーム市場は密接に関係しているが、両者の成長が必ずしも同じ速度で進むわけではない。
愛知県の住宅リフォーム市場にも影響は?地域の中小工務店が直面する課題
今回の調査は全国を対象としたものであり、愛知県内の倒産件数について個別の数値は示されていない。
そのため、今回の96件という数字だけで、愛知県内のリフォーム会社の倒産が急増していると判断することはできない。
一方、資材価格の上昇や職人不足、価格転嫁の難しさは、地域の工務店やリフォーム会社にとっても重要な経営課題だ。
愛知県内でも、住宅の修繕や水回り設備の交換、外壁塗装、耐震改修など、さまざまなリフォーム工事が行われている。
特に地域密着型の中小事業者では、限られた人員で複数の工事を担当する場合もあり、工期管理や資材調達、外注費の変動への対応が重要になる。
東三河のリフォーム会社にも共通する経営上の課題
豊橋市、豊川市、蒲郡市、田原市、新城市などの東三河地域でも、住宅リフォームを手がける事業者にとって、工事原価と受注価格のバランスは重要だ。
今後、地域のリフォーム市場を検証するうえでは、次の点が注目される。
- 建築資材や住宅設備の仕入れ価格がどの程度上昇しているか
- 職人不足によって工期や外注費にどのような影響が出ているか
- 工事費用の値上げを顧客に説明できているか
- 地域の中小工務店が適正な利益を確保できているか
ただし、東三河地域で同様の問題がどの程度発生しているかについては、地域事業者への取材などによる確認が必要だ。
リフォーム会社の倒産が増えると住宅所有者にはどんな影響がある?
リフォーム会社の倒産は、工事を依頼する住宅所有者にとっても無関係ではない。
特に注意したいのが、工事契約から完成までの期間だ。
工事会社が経営難に陥った場合、工事の中断や完成時期の遅延などが発生する可能性がある。
また、前払いした工事代金の返還や、施工途中の建物を別の業者に引き継いでもらう際に問題が生じる場合もある。
工事契約前に確認しておきたいこと
住宅所有者は、見積金額だけでなく、契約内容や施工体制も確認する必要がある。
特に、工事代金の支払い時期、追加工事が発生した場合の費用負担、工期が延長された場合の対応などは重要だ。
極端に安い見積もりが提示された場合には、その金額で必要な工事が適切に実施できるのか、工事内容や使用材料を確認することが望ましい。
もっとも、見積金額が安いことだけを理由に、施工会社の経営状態が悪いと判断することはできない。
価格だけでなく、施工実績や契約条件、保証内容などを総合的に比較することが重要になる。
【編集部の考察】リフォーム業界は「安さの競争」から「適正価格の競争」へ転換できるか
今回の倒産増加で注目すべきなのは、販売不振だけでなく、赤字累積による倒産が大幅に増えている点だ。
工事会社にとって、受注を増やすことは事業継続のために欠かせない。
しかし、資材価格や人件費が上昇するなかで、従来と同じ価格で工事を引き受け続ければ、利益率は低下する。
例えば、工事代金300万円の案件で、当初の原価が270万円だった場合、粗利益は30万円となる。
しかし、資材費や外注費の上昇によって原価が290万円になれば、粗利益は10万円に減少する。
さらに顧客の要望によって工事代金を280万円に値引きした場合、単純計算では10万円の赤字となる。
これはあくまで仮定の計算だが、工事単価と原価の変化が利益に大きく影響することが分かる。
今後、リフォーム会社には、単に安い価格を提示するだけでなく、工事品質や保証、施工管理などの価値を適切に説明することが求められるのではないか。
一方、消費者側にも、工事費用の上昇が必ずしも企業の利益増加を意味しないという理解が必要になる。
リフォーム市場が持続的に成長するためには、発注者と施工会社の双方が納得できる適正価格の形成が重要になると考えられる。
リフォーム会社の倒産は今後も増える?2026年の見通し
東京商工リサーチは、2026年の建築リフォーム工事業の倒産が年間120件を超える可能性を指摘している。
今後の動向を左右するのは、資材価格、人件費、受注競争、住宅市場の変化などだ。
工事会社が価格上昇分を十分に転嫁できない状況が続けば、利益率の低下や資金繰りの悪化につながる可能性がある。
一方、適正な工事価格の確保や施工体制の効率化が進めば、経営環境の改善につながる余地もある。
今回の倒産増加は、単なる一時的な企業倒産の増加ではなく、住宅リフォーム業界の収益構造を考えるうえで重要な動きといえる。
契約内容や工事の進捗状況、倒産手続き、会社の財産状況などによって対応が異なる。
工事完成保証制度などに加入している場合は、一定の条件で保証を受けられる可能性がある。
契約前に保証制度の有無と適用条件を確認しておくことが重要だ。
ただし、すべての倒産情報が無料で公開されるわけではない。
また、会社の経営状況を判断する際には、倒産情報だけでなく、法人情報や事業実績なども確認する必要がある。
ただし、既存の工事内容や施工状況を確認する必要があり、追加費用が発生する可能性もある。
契約解除や工事代金の精算については個別の事情によって異なるため、専門家への相談が必要になる場合がある。
また、消費者契約に関する問題については、消費者ホットライン「188」を通じて、最寄りの消費生活相談窓口につながる。
まとめ|リフォーム工事業の倒産96件、問われる業界の収益構造
2026年1~9月の建築リフォーム工事業の倒産は96件となり、2002年の統計開始以来、同期間で過去最多を更新した。
倒産原因では販売不振が最多となった一方、赤字累積による倒産が前年同期比70.0%増加したことも注目される。
資材価格の高騰や職人不足、人件費の上昇に加え、値引き要求や受注競争によって利益を確保しにくい状況が続いている。
中古住宅への関心が高まるなか、リフォーム工事を担う事業者の経営基盤をどう維持していくのか。
住宅リフォーム業界は、受注件数だけでなく、適正な利益を確保できる事業構造への転換を迫られている。
※本記事は、東京商工リサーチなどが公表した調査資料をもとに構成しています。「編集部の考察」には、公開情報を踏まえた独自の分析を含みます。個別企業の経営状況や倒産理由を断定するものではありません。
週刊TAKAPI 編集部/黒木
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