敦賀市立看護大学が在学生を対象に実施した調査で、卒業後の勤務地として県外を希望する学生が64.5%に上った。
敦賀市内での就職希望は10.8%だった。
2027年4月に名古屋市立大学「蒲郡キャンパス」の開設を予定する蒲郡市でも、看護大学の設置を地域の看護人材確保へどこまで結び付けられるかが今後の検証対象となる。
蒲郡校の入学定員は1学年50人。ただし、卒業後に三河地域の医療機関で働く義務はない。
地域医療への効果を確認するには、入学者数だけでなく、学生の出身地域、地域医療機関の採用状況、実習先、修学資金の利用状況、卒業後の地域就職率を継続して追う必要がある。
週刊TAKAPIは、敦賀の最新調査や他地域の実績を踏まえ、蒲郡キャンパス開設後に確認すべき5つの指標を整理した。
1 入学者はどこから来るのか
最初に確認すべきなのは、入学者の出身地域だ。
敦賀市立看護大学では、県外出身学生が多いことを大学自身が課題としている。
2021年度の入学者56人では、福井県内出身が22人、県外出身が34人だった。
学生が県外から進学した場合、卒業後に出身地域へ戻るケースも想定される。
蒲郡キャンパスでも、50人の入学者のうち、
- 蒲郡市内
- 東三河
- 愛知県内のその他地域
- 県外
からそれぞれ何人が入学するのかを継続して確認する必要がある。
この構成は、4年後の地域就職率を分析するための基礎データになる。
2 地域医療機関は何人の看護師を必要としているのか
二つ目は、地域医療機関側の人材需要だ。
大学で50人を受け入れても、地域の病院が実際に何人の看護師を必要としているのかが分からなければ、大学設置による人材確保の効果は測れない。
確認すべき数字は、
- 現在の看護職員数
- 必要人数
- 欠員数
- 年間の採用予定人数
- 実際の採用人数
- 退職者数
- 今後の退職見込み
などだ。
特に蒲郡市民病院については、地域の中核医療機関として今後どの程度の看護人材を必要としているのかが重要になる。
蒲郡校の定員50人と、病院側の採用需要は同じ数字ではない。
大学側の供給と、医療機関側の需要を分けて確認する必要がある。
3 実習先と就職先はどこまでつながるのか
三つ目は、実習先と就職先の関係だ。
蒲郡市立ソフィア看護専門学校では、蒲郡市民病院などが主要な実習施設となってきた。
看護教育では、医療機関での臨地実習が重要な位置を占める。
大学化後も、
- どの医療機関で実習するのか
- 東三河でどの程度の実習機会を確保するのか
- 実習先へ何人が就職するのか
を確認する必要がある。
実習先と就職先の関係を継続して把握できれば、地域医療機関との接点が卒業後の就職にどの程度つながったのかを検証できる。
4 修学資金は地域就職につながるのか
四つ目は経済的支援だ。
蒲郡市では看護師等修学資金制度があり、2027年4月から貸与額を月額4万円から5万円へ引き上げる。
一定の条件を満たした場合には、返還免除の仕組みも設けられている。
今後確認すべきなのは、
- 年間の利用者数
- 貸与総額
- 利用者の卒業後の就職先
- 返還免除対象者数
- 地域での勤務継続年数
だ。
制度が地域定着にどの程度つながったかは、利用後の就職実績と継続勤務の数字で確認する必要がある。
制度の存在だけでは、成果は判断できない。
5 最終的には「地域就職率」と「定着率」
五つ目は卒業後の進路だ。
敦賀市立看護大学の最新調査では、県外就職希望が64.5%だった。
一方、愛知県立大学看護学部では、2022年度から2024年度までの3年間に、看護師として愛知県内へ206人、県外へ20人が就職している。
看護師就職者226人に占める県内就職者の割合は約91.2%となる。
敦賀は在学生の「希望勤務地」、愛知県立大学は「実際の就職先」であり、統計の性質が異なるため直接比較はできない。
ただ、看護系大学でも地域就職の状況に差があることは確認できる。
蒲郡キャンパスについても、開設後に確認すべき最終的な指標は、卒業生が実際にどこへ就職し、その後どの程度地域に定着したかになる。
蒲郡校50人を評価するために必要な数字
蒲郡キャンパスでは、1学年50人という数字がすでに示されている。
一方、地域医療政策として評価するには、さらに複数の指標が必要だ。
最低限、今後追うべきなのは、
- 志願者数
- 入学者数
- 定員充足率
- 入学者の出身地域
- 卒業者数
- 看護師国家試験合格者数
- 蒲郡市内への就職者数
- 東三河への就職者数
- 蒲郡市民病院への就職者数
- 修学資金利用者の地域就職実績
- 卒業後3年、5年時点の地域定着率
となる。
入学者50人だけを追っても、大学化が地域の看護人材確保にどの程度効果を上げたかは判断できない。
KPIを設定するのかも焦点
もう一つの重要な確認事項が、蒲郡市や大学側がこれらの数字を事業のKPIとして設定するかどうかだ。
大学化には市費も投入される。
そのため、開設後に事業効果を検証するのであれば、
「何人入学したか」だけでなく、
「何人が地域へ就職したか」
「何人が一定期間地域に定着したか」
まで継続して把握する仕組みが必要になる。
具体的な数値目標を設定するのか。
設定する場合、どの指標を採用するのか。
結果を毎年度など定期的に市民へ公表するのか。
こうした点も、蒲郡キャンパスの政策効果を判断する上で重要になる。
編集部まとめ
敦賀市立看護大学では、在学生の64.5%が県外での就職を希望した。
地域に看護大学があることと、卒業生がその地域で就職・定着することは同じではない。
2027年4月開設予定の名市大蒲郡キャンパスについても、1学年50人という定員だけでは地域医療への効果を判断できない。
入学者の出身地域、地域医療機関の採用状況、実習先、修学資金、卒業後の地域就職率と定着率。
この5項目を継続して確認することで、大学化が蒲郡市や東三河の看護人材確保にどの程度結び付いたかを検証できる。
週刊TAKAPIでは現在、公開資料だけでは確認できない地域就職の数値目標、事業評価の指標、市が想定する看護人材確保の具体的な数字についても確認を進めている。
新たな事実が確認された場合は続報する。
週刊TAKAPI 編集部/成田
特記事項
敦賀市立看護大学の64.5%は、2026年の在学生調査で県外就職を「希望」した学生の割合であり、実際の県外就職率ではありません。
愛知県立大学の約91.2%は、2022年度から2024年度までの看護師就職者について、実際に愛知県内へ就職した人数から算出した割合です。
両者は統計の対象と性質が異なるため、本記事では直接的な優劣比較を行っていません。
また、蒲郡キャンパス開設後の地域就職者数や地域定着率について、現時点で具体的な成果が出ているわけではありません。今後の実績を確認する必要があります。
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