過去最多1,405件の重大事態。子どものSOSはなぜ届かないのか。失われた命と繰り返される悲劇から考える。
週刊TAKAPI|編集長コラム
いじめによって、子どもが学校に通えなくなる。
心身に深刻な被害を受け、時には命を落とす。
そのたびに報道では「いじめ問題」という言葉が使われ、学校や教育委員会の対応が問われる。
第三者委員会が設置され、調査報告書がまとめられ、再発防止策が発表される。
しかし、それで何が変わったのだろうか。
全国では今も、いじめに苦しむ子どもたちがいる。
助けを求めても、その声が十分に受け止められなかった事例が、調査によって明らかになることもある。
私たちは、いつまで同じことを繰り返すのだろうか。
「いじめ問題」という言葉は、あまりにも広く使われるようになった。
だが、その言葉の向こうには、一人ひとりの人生がある。
単なる学校内のトラブルでも、統計上の数字でもない。人間の尊厳と命に関わる問題である。
だからこそ、週刊TAKAPIは学校と教育委員会の対応を追い続けている。
過去最多の重大事態1,405件――数字が示す現実
文部科学省が2025年10月に公表した2024年度の調査によると、全国の小中学校、高校、特別支援学校におけるいじめの認知件数は76万9,022件に上った。
いじめ重大事態の発生件数は1,405件。
いずれも過去最多となった。
重大事態とは、いじめによって児童生徒の生命や心身、財産に重大な被害が生じた疑いがある場合や、相当期間の欠席を余儀なくされている疑いがある場合などを指す。
注目すべきは、単に件数が増えたことだけではない。
重大事態1,405件のうち490件は、重大な被害を把握する前に、いじめとして認知されていなかった。
約35%に当たる。
つまり、重大な被害が明らかになるまで、学校側がいじめとして把握できていなかった事案が相当数存在するということだ。
一方、認知件数の増加については、学校が従来見逃していた行為を積極的に把握するようになった側面も考慮する必要がある。
認知件数が増えたことだけをもって、いじめがそれと同じ割合で増加したとは断定できない。
問題は、認知した後に何が行われたのかである。
子どもの安全は確保されたのか。
被害の訴えは適切に記録されたのか。
保護者への説明は十分だったのか。
そして、学校だけで対応が困難な場合に、教育委員会や外部機関が適切に関与したのか。
いじめを認知することと、子どもを守ることは、同じではない。
広島県呉市の事案が問いかけるもの
2026年10月16日、広島県呉市教育委員会は、市立中学校の生徒が2022年に亡くなった事案について、第三者委員会の調査報告書と再発防止策を公表した。
調査では、生徒が小学校から中学校にかけて、差別的な言葉を向けられるなどのいじめを受けていたと認定された。
報道によると、第三者委員会はいじめと自死との関連性も認めている。
また、学校がいじめを行った児童らへの計画的な個別支援に至っていなかったことなども指摘された。
呉市教育委員会は、調査結果を踏まえ、再発防止に取り組むとしている。
この事案で考えなければならないのは、いじめが認定されたという事実だけではない。
なぜ、子どもが生きている間に十分な対応につながらなかったのか。
当時の学校は何を把握し、どのような対応を取っていたのか。
再発防止策は、今後の学校現場でどのように実行されるのか。
命が失われた後に真相を明らかにすることは重要である。
しかし、最も重要なのは、命が失われる前に子どもを守ることではないだろうか。
