【教育連載②】「教育委員に机も部屋もなかった」国会証言――橋下徹氏らが問うた教育委員会の責任

学校で深刻ないじめが発生したとき、責任を負うのは誰なのか。かつて国会では教育委員会の形骸化が追及され、橋下徹氏ら歴代首長も制度改革を訴えた。2015年の法改正から11年。教育行政の責任体制は本当に変わったのか。

教育連載 第2回|週刊TAKAPI
担当記者:週刊TAKAPI編集部
記事作成日:2026年10月19日
資料検証対象:国会会議録、首長記者会見、文部科学省公表資料


いじめ重大事態1,405件――学校を監督する教育委員会の責任

いじめによって、子どもの生命や心身に重大な被害が生じる。

保護者が学校に相談しても、十分な対応が行われない。学校が教育委員会に報告しても、問題の解決に至らない。

そのような事態が発生したとき、誰が責任を負うのか。

文部科学省が公表した2024年度の調査によると、全国の学校で認知されたいじめは約76万9,000件。いじめ重大事態は1,405件に上った。

重大事態の件数は前年度から99件増加した。

ただし、重大事態の増加がすべて学校や教育委員会の対応不備によるものだと断定することはできない。認知や報告の徹底によって、これまで把握されなかった事案が明らかになっている可能性もある。

それでも、重大事態に至るまでにいじめとして認知されていなかった事案が相当数存在するという問題は重い。

学校が問題を把握できなかった場合、教育委員会はどのように監督するのか。

学校が適切に対応しなかった場合、誰がその判断を検証するのか。

そして、教育委員会自身の対応に問題があった場合、どこに救済を求めればよいのか。

こうした疑問は、決して新しいものではない。

十数年前、国会では教育委員会の責任体制が厳しく問われていた。

「教育委員会という機関が責任を持っている」――中田宏氏の問題提起

2013年、衆議院の委員会審議。

元横浜市長の中田宏氏は、教育委員会という合議制の機関が教育行政を担う制度について疑問を呈した。

中田氏は、当時の制度について次のように述べた。

「地方の教育行政に責任を持っているのは教育委員会ですね。法律上」

そして、責任を負う主体が個人ではなく合議制の機関であることを問題視した。

「教育委員会という機関が責任を持っているという、こういう組織がね、責任を持った、例えば会社経営だとか、例えば地方行政だとか、例えばその他のマネジメント、これできますか」

中田氏の主張は、住民から見た責任者の分かりにくさに向けられていた。

当時の教育委員会は、教育委員長を置く合議制の執行機関であり、教育長が事務を執行する仕組みだった。

複数の教育委員が合議で方針を決めることには、多様な意見を反映し、特定の人物への権限集中を防ぐ利点がある。

しかし、教育委員会が形式的な意思決定だけを行い、実際の判断を事務局に依存していれば、合議制の意義は失われかねない。

中田氏は、横浜市長時代の経験から、その問題を指摘した。

月1~2回の会議で事務局案を了承――横浜市の実態

中田氏によると、2002年に横浜市長に就任した当時、横浜市教育委員会の会議は月1~2回程度、短時間で終了していたという。

事務局が作成した議案が提出され、教育委員が了承する。

中田氏は、十分な議論が行われていなかったと説明した。

さらに、教育委員の選任についても、医師会、大学、校長会などの団体や役職に基づく慣例的な人選が行われていたと批判した。

教育委員に専門家や地域の代表者を登用すること自体は問題ではない。

問われるのは、教育委員が事務局の説明を主体的に検証し、必要な場合に異議を唱えることができるかどうかだ。

教育委員会の会議が開かれていることと、実質的な議論が行われていることは同じではない。

「机も部屋もなかった」――義家弘介氏の国会証言

この国会質疑では、横浜市教育委員を経験した義家弘介文部科学大臣政務官も答弁した。

義家氏は、教育委員に就任した当時の状況について、次のように述べた。

「その教育委員の机もなければ部屋もなかったんです」

義家氏によると、教育委員には専用の机や部屋、パソコンが十分に用意されていなかった。

中田市政の下で教育委員会改革が進められ、執務環境が整備されたほか、教科書採択についても教育委員自身が資料を読み込み、議論する仕組みへと見直されたという。

しかし、義家氏は制度の限界にも言及した。

横浜市教育委員会は当時、500校を超える学校を所管していた。

学校で発生する事故や問題に関する書類は膨大な量に上る。

非常勤の教育委員が、限られた時間でそれらを把握し、適切な判断を下すことができるのか。

義家氏の証言が示したのは、教育委員会に権限を与えるだけでは、実効性が確保されるとは限らないという問題である。

十分な情報、時間、専門的支援がなければ、教育委員は事務局に依存せざるを得なくなる。

そして、その依存が強まれば、教育委員会は事務局の判断を追認する組織になりかねない。

WEEKLY TAKAPI — OFFICIAL CONTACT

TAKAPI LEAKS

その情報が、社会を動かす。

情報提供・取材相談・記事の訂正や削除依頼を
全国から受け付けています。

◆ ご連絡内容は慎重に取り扱います

情報提供・各種お問い合わせ ↗

記事の訂正・削除依頼もこちらから