島根県松江市の私立松江西高校で、教育課程の変更に反対した教員13人が懲戒処分を受けた問題で、学校を運営する学校法人永島学園と元教員側との和解が成立した。
10月20日、元教員の代表と代理人弁護士が会見を開き、法人側が13人への懲戒処分を撤回し、元教員や生徒、保護者、学校関係者に謝罪することで合意したと明らかにした。
元教員側は、処分をめぐって求めていた総額1540万円の慰謝料請求を放棄する。一方、別に争われていた未払い残業代の訴訟では、法人側が労務管理上の不備を認め、約1800万円の解決金を支払うことで和解した。
教育課程の変更に反対 13人を停職・減給などの処分
問題の発端は2022年度、永島学園が就職を重視した学校への転換を進めたことだった。
法人側は、生徒数の減少を背景に、新学科の設置や教育課程の変更を計画。これに対し、一部の教員が方針の見直しを求め、2023年3月、保護者に説明会への参加などを呼びかける文書を生徒に配布した。
文書は校長の承認を得ずに配布されていた。法人側は就業規則に違反し、学校運営を妨げたなどとして、同年7月に12人を懲戒処分とした。さらに2024年11月、別の教員1人を停職14日の処分とした。
13人は処分を不当として、損害賠償などを求めて提訴した。
なお、2023年3月に予定されていた教育課程の変更は、教員らの反対や生徒・保護者からの意見を受けて撤回された。また、法人が申請した新学科の設置などについても、同年11月27日、島根県知事が不認可としている。
一審は懲戒処分をおおむね容認 2人の給与減額は一部無効
2026年1月19日、松江地方裁判所は、教員らによる無許可の文書配布が就業規則上の懲戒事由に該当すると判断した。
裁判所は、教育課程の変更について教員が反対意見を述べることはできるとしながらも、学校側の最終的な決定に従う義務があると指摘。懲戒権の濫用には当たらないとして、教員側の請求の大部分を退けた。
一方、教員2人に対する戒告処分に伴う給与10%の減額については、労働基準法91条が定める減給制裁の上限を超えていると認定した。
裁判所は超過部分を無効とし、法人側にそれぞれ1万9426円と1万9145円の支払いを命じた。
また判決では、学校側が教育課程の変更を進めるにあたり、具体的な教育内容の検討や、生徒・保護者への説明に十分な時間が確保されていなかった点にも言及している。
教員側は一審判決を不服として控訴していたが、今回の和解によって法人側が13人への懲戒処分を撤回することになった。
ただし、今回の撤回は当事者間の合意によるものであり、控訴審で懲戒処分全体が違法と認定されたわけではない。
未払い残業代2600万円超を請求 約1800万円で和解
懲戒処分をめぐる裁判とは別に、元教員らは未払い残業代2600万円余りの支払いも求めていた。
この訴訟についても和解が成立し、法人側が労務管理を怠っていたことを認め、約1800万円の解決金を支払うことで合意した。
懲戒処分をめぐる慰謝料1540万円の請求放棄と、未払い残業代約1800万円の解決金は、それぞれ異なる訴訟の和解条件となる。
約1800万円は、懲戒処分に対する慰謝料ではない。
元教員13人は全員退職 法人側は関係者に謝罪
訴訟を起こした13人は、2026年3月末までに全員が松江西高校を退職している。
今回の和解を受け、法人側は関係者に心配や不安を与えたことを謝罪。裁判の長期化を避けたいとの考えも示している。
一方、懲戒処分撤回後の人事記録の取り扱いや、関係者への具体的な謝罪方法、約1800万円の解決金の支払時期などは確認できていない。
今回の和解により、教育課程の変更に端を発した懲戒処分と未払い残業代をめぐる訴訟は決着した。
週刊TAKAPI 編集部/一条
松江西高校の懲戒処分撤回と和解
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