山形市内の小学校に勤務する50代の教頭が、同窓会費や補助金、募金など学校が管理する複数の会計から約330万円を着服していたことが分かった。
山形市教育委員会によると、教頭は2024年5月から2026年5月にかけ、複数の通帳から現金を引き出したり、本来入金すべき現金を入金しなかったりする行為を約60回繰り返したとされる。
着服した金はギャンブルや借金の返済、生活費などに充てていたという。
さらに、この教頭が前任校でも約60万円を不適切に口座から引き出し、その後補填していたことも判明した。当時の学校から市教育委員会への報告はなかったとされる。
今回の問題では、教頭個人による着服だけでなく、本来別々の担当者が管理することになっていた通帳と銀行印を教頭1人が管理していたこと、さらに出金に必要な書類も自ら作成していたという学校側の会計管理体制が大きな焦点となる。
2024年5月から約2年間 約60回にわたり着服か
山形市によると、着服が行われたとされる期間は2024年5月から2026年5月まで。
約2年間にわたり、複数の学校関係口座から約60回の出金などが行われたという。
確認されている着服額は約330万円。
内訳では、同窓会費が約155万円と最も多く、このほか交通安全の啓発費用約22万円、資源回収で得た報奨金約19万円などが含まれているとされる。
一度に多額の現金を引き出したのではなく、複数の会計から長期間にわたり繰り返し資金が動かされていたことになる。
教頭自ら校長に申し出て発覚
問題が発覚したのは9月29日。
教頭自身が校長に「不適切な会計処理をした」という趣旨の申し出をしたことがきっかけだった。
市教委の聞き取りに対し、教頭は着服したことを認めている。
また、現金についてはギャンブルや借金の返済、生活費などに使ったと説明しているという。
教頭は弁済する意向も示しているとされる。
一方、現時点では全額が返済されたとの情報は確認できていない。
本来は「通帳と印鑑を別々に管理」
今回の事案で特に問題となるのが、学校の会計管理だ。
学校関係口座については、本来、通帳と銀行印を別々の担当者が管理する指針があった。
しかし、この学校では教頭が通帳と印鑑の双方を管理していた。
さらに、現金を引き出すために必要となる書類も教頭自身が作成していたとされる。
つまり、資金を動かすために必要な複数の手続きが、実質的に1人の管理下へ集中していたことになる。
市教育委員会は、校長による適切な会計管理や確認が行われていれば、今回の着服を防ぐことができたとの認識を示している。
指針があっても機能しなかった「1人管理」
今回の問題は、「ルールが存在しなかった」という事案ではない。
通帳と印鑑を分けて管理するというルール自体は存在していた。
それにもかかわらず、実際の学校現場では教頭1人が双方を管理していた。
この点は再発防止を考える上で重要だ。
指針やマニュアルを作成するだけではなく、
実際に各学校がそのルールどおり運用しているかを誰が確認するのか
という問題が残る。
市教委が今後すべての学校を直接訪問し、管理状況を確認するとしているのも、この運用部分に問題があったためとみられる。
前任校でも約60万円を不適切に引き出し
さらに、市教委の確認で重大な事実が判明した。
今回の教頭は、現在の勤務校だけでなく、前任校でも約60万円を不適切に口座から引き出していたという。
この約60万円については、その後補填された。
しかし、前任校から市教育委員会への報告はなかったとされる。
ここは今回の事案を考える上で極めて重要だ。
前任校で資金の不適切な引き出しが把握され、市教委まで情報共有されていれば、その後の勤務校での会計担当や金銭管理について別の対応が取られた可能性がある。
現時点では、前任校でいつ不適切な出金が発覚し、当時の校長や管理職がどの程度把握していたのかまでは明らかになっていない。
前任校でなぜ市教委へ報告されなかったのか
前任校の約60万円については、補填されたことで処理が終わったのか。
なぜ市教委へ報告されなかったのか。
当時、教頭本人への指導や処分は行われたのか。
現在の勤務校へ異動する際、その情報は引き継がれていたのか。
これらは再発防止を考える上で確認が必要になる。
今回の約330万円の着服だけを見るのではなく、前任校で生じていた問題を組織として把握し、次の不正を防ぐ仕組みが機能したのかという検証が必要だ。
前年には市立高校でも約840万円着服
山形市では、学校会計を巡る別の大きな不祥事も起きていた。
2025年5月には、市立山形商業高校の50代男性教員が、約4年間にわたり同窓会費約840万円を着服していたことが発覚している。
この事案でも、男性教員が同窓会の会計を1人で担当し、校長や教頭の決裁なしに口座から出金できる状態だった。
着服した金は主にギャンブルに使ったと説明していた。
つまり、山形市教育委員会にとって、学校会計の「1人管理」に関連する問題は今回が初めてではない。
前年の事案を受けて再発防止に取り組んでいた中で、再び学校内の金銭管理を巡る大規模な着服が明らかになったことになる。
「再発防止後」に再び発覚 何が機能しなかったのか
もちろん、今回の着服自体は2024年から始まっており、前年の市立高校での問題発覚より前から続いていた。
そのため、「前年の再発防止策を実施した後に新たに着服を始めた」という構図ではない。
一方で、前年5月に別の着服事件が明らかになった後も、今回の学校では通帳と印鑑の1人管理が続き、約330万円の着服が本人の申告まで発覚しなかった。
ここは検証すべきポイントだ。
再発防止策が、
通知を出しただけだったのか
各学校の会計管理状況まで確認したのか
「1人管理」が残っている学校を把握していたのか
という実効性が問われる。
市教委、全校を直接訪問へ
山形市教育委員会は今回の問題を受け、臨時校長会を開き、金銭管理を厳格に行うよう改めて指導する方針を示した。
さらに、教育委員会事務局の職員が市内すべての学校を直接訪問し、会計管理の改善状況を確認して指導するとしている。
単なる文書通知ではなく、現場へ出向いて運用状況を確認する形になる。
今回の事案では、ルールそのものではなく、既存ルールが現場で守られていなかったことが問題となっているため、実際の管理状況を確認することが再発防止の鍵になる。
被害届・刑事告訴は関係団体と協議
市教育委員会は警察へ相談しており、被害届や刑事告訴については、同窓会など関係団体と相談した上で判断するとしている。ライブドアニュース
現時点では、教頭が逮捕、送検、起訴されたとの情報は確認されていない。
そのため、本記事では市教委が認定している「着服」と、刑事上の横領罪などが成立するかどうかは分けて扱う。
編集部まとめ
山形市の小学校で明らかになった約330万円の着服問題は、50代教頭個人の金銭問題だけではない。
2024年5月から約2年間、約60回にわたり学校関係の資金が動かされていた。
その背景には、本来別々に管理するはずだった通帳と銀行印を教頭1人が管理し、出金書類まで自ら作成できる状態があった。
さらに、教頭は前任校でも約60万円を不適切に引き出し、補填していたにもかかわらず、市教育委員会へ報告されていなかった。
前年には、市立山形商業高校でも1人で会計を担当していた教員による約840万円の着服問題が発覚している。
今回問われるのは、単に「ルールを再周知する」ことではない。
なぜ既存の指針が守られなかったのか。
なぜ前任校での問題が市教委まで共有されなかったのか。
前年の着服事件後、各学校の会計管理をどこまで実際に確認したのか。
ここまで検証しなければ、再発防止策の実効性は見えてこない。
週刊TAKAPIでは、前任校での約60万円の処理経緯、当時の管理職の対応、市教委への報告がなかった理由、約330万円の弁済状況、刑事手続きについて今後も確認を続ける。
週刊TAKAPI 編集部/一条
特記事項
本記事は、2026年10月9日に山形市教育委員会が会見で明らかにした内容と、これまでに確認された学校会計を巡る事実を基に構成しています。
約330万円について教頭本人は着服を認めていますが、現時点で刑事上の横領罪などが確定したものではありません。
前任校での約60万円については、不適切な引き出しの後に補填されたとされていますが、市教育委員会への報告はなかったとされています。

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