愛知県豊橋市が、高師町と牟呂内田町にある市有地3物件の売却を進めている。最低売却価格の合計は1億934万4,000円。週刊TAKAPIが市財産管理課に直接取材したところ、高師町の土地は約70年前に建設された旧「西口母子住宅」の跡地であることが分かった。さらに、売却収入の使い道や、市が保有する45万平方メートル超の未利用地の実態も明らかになった。
豊橋市は2026年10月15日、「令和8年度第1回市有地売却に係る一般競争入札」を発表した。
売却対象は高師町字北原の1物件と、牟呂内田町の2物件。入札日は12月4日で、参加申込は11月13日まで受け付ける。
なぜ、これらの土地を今売却するのか。土地の価格はどのように決まり、売却で得た収入は何に使われるのか。
週刊TAKAPI編集部は豊橋市財産管理課に取材を行い、土地売却の背景を調べた。
豊橋市が売却する市有地3物件はどこ?所在地・面積・最低価格を一覧で紹介
今回の売却対象は次の3物件だ。
| 所在地 | 面積 | 最低売却価格 |
|---|---|---|
| 牟呂内田町1番7 | 166.95㎡ | 1,529万3,000円 |
| 牟呂内田町1番8 | 166.93㎡ | 1,514万1,000円 |
| 高師町字北原3番1 | 1,902.06㎡ | 7,890万円 |
| 合計 | 2,235.94㎡ | 1億934万4,000円 |
※出典:豊橋市「令和8年度第1回市有地売却に係る一般競争入札」
3物件の合計面積は約2,236平方メートル。最低売却価格の合計は1億円を超える。
ただし、この金額はあくまで入札の最低価格であり、実際の売却額は落札結果によって決まる。
豊橋市の市有地入札はいつ?申込期間と落札方法
今回の入札日程は次のとおり。
- 公告日:2026年10月15日
- 参加申込期間:2026年10月15日~11月13日
- 入札日:2026年12月4日
- 売却方法:一般競争入札
予定価格以上で最も高い金額を提示した入札者が落札者となる。
参加資格や提出書類、保証金などの詳細は、市が公表する入札案内書で確認する必要がある。
【独自取材】高師町7,890万円の土地は「西口母子住宅」の跡地だった
今回、特に注目されるのが、高師町字北原3番1の土地だ。
面積は1,902.06平方メートルで、最低売却価格は7,890万円。
市財産管理課への取材で、この土地には以前、市営の「西口母子住宅」が建っていたことが分かった。
市営住宅等長寿命化計画によると、西口母子住宅は1955年度(昭和30年度)に建設された施設で、住宅機能を西口住宅へ集約する方針のもと、2024年度に用途廃止する計画が示されていた。
約70年前に建設された市営住宅の跡地が、今回、民間への売却対象となった。
昭和30年代から豊橋市が所有 土地の歴史とは
市財産管理課の担当者は、土地の所有経緯について「昭和30年代ぐらいから豊橋市の土地です」と説明した。
また、それ以前は軍関係の土地だったと聞いているという。
ただし、戦前・戦後の具体的な利用状況や、市が土地を取得した経緯については、今回の取材では確認できていない。
この点は、土地の登記記録や当時の行政資料などによる追加検証が必要だ。
なぜ今、旧西口母子住宅跡地を売却するのか?豊橋市が説明した理由
市財産管理課によると、西口母子住宅の使用終了後、建物は解体され、土地は更地となった。
市は売却を決める前に、他の部署で利用できないか検討したという。
しかし、行政として具体的な活用予定は見つからなかった。
一方、土地を保有し続ければ、草刈りなどの維持管理費が発生する。
担当者は、こうした管理負担を考慮し、売却する方が財政面でも合理的だと判断した経緯を説明した。
市営住宅の集約・再編と土地売却の関係
今回の売却は、単に使われなくなった土地を処分するだけの話ではない。
豊橋市の市営住宅等長寿命化計画では、住宅の老朽化や敷地条件などを踏まえ、西口母子住宅の機能を西口住宅へ集約する方針が示されていた。
市営住宅の再編によって不要となった土地を、行政がどのように活用するか。
その結果として選択されたのが、民間への売却だった。
今後、落札者がどのような用途で土地を利用するのかによって、周辺地域の土地利用にも変化が生じる可能性がある。
高師町の土地は坪単価約13万7,000円 売却価格の根拠は?
高師町の土地は約575坪。
最低売却価格7,890万円を坪単価に換算すると、約13万7,000円となる。
では、この価格はどのように決められたのか。
市財産管理課に尋ねたところ、担当者は不動産鑑定士による鑑定評価を基に設定した金額だと説明した。
周辺の土地価格とのバランスなども、鑑定評価の中で考慮されているという。
ただし、坪単価だけで土地の割安・割高を判断することは難しい。
道路との接道状況や土地の形状、用途地域、建築上の制限などによって、実際の利用価値は異なるためだ。
売却後は住宅地になる?商業施設の建設も可能?
土地の利用方法についても確認した。
市財産管理課によると、高師町の土地には、住宅用地や商業施設用地など、特定の用途を指定する売却条件は設けていないという。
そのため、落札者は法令の範囲内で利用方法を検討できる。
ただし、用途地域や建築基準法などの規制は適用されるため、どのような建物でも自由に建設できるわけではない。
今後、住宅開発や事業用地として活用されるのか、入札結果と合わせて注目される。
牟呂内田町の2区画はなぜ売却?土地区画整理事業で売れ残った保留地
今回の3物件のうち、牟呂内田町の2区画は、高師町とは異なる事情で売却対象となった。
市財産管理課によると、対象地は「豊橋牟呂坂津土地区画整理事業」で保留地として販売されていた土地だ。
保留地とは、土地区画整理事業の事業費を確保するためなどに設けられる土地を指す。
しかし、今回の2区画は事業終了時点で売却に至らなかったという。
その後、市が管理する土地となり、当初は保留地として販売していた際の価格を引き継いでいた。
市は価格を改めて精査し、一般競争入札によって売却することにした。
豊橋市の公式資料によると、豊橋牟呂坂津土地区画整理事業では2025年10月に換地処分が行われている。
旧市営住宅の跡地である高師町と、区画整理事業で売却できなかった牟呂内田町。
同じ市有地売却でも、その背景には異なる事情がある。
【独自取材】豊橋市の市有地売却収入は何に使われる?公共施設等整備基金へ
今回の取材で、もう一つ確認したのが売却収入の使い道だ。
市有地を売却すれば、市にはまとまった収入が入る。
では、そのお金はどこに使われるのか。
週刊TAKAPI編集部が市財産管理課に質問したところ、担当者から折り返しの回答があった。
売却収入は「公共施設等整備基金」に積み立てる方針だという。
この基金は、公共施設の大規模改修や更新などに備えるためのものだ。
豊橋市の「公共施設等総合管理計画2026-2055」にも、施設の最適化に伴う土地などの売却収入を基金へ積み立て、将来の大規模更新費用の財源とする方針が示されている。
つまり、使われなくなった市有地を売却し、その収入を将来の公共施設整備に役立てる仕組みとなる。
ただし、今回の3物件の売却収入を具体的にどの施設へ充てるのかについては、取材時点で明らかになっていない。
豊橋市の未利用地は45万6,141㎡ 約88%が山林という実態
今回の追加取材では、市が保有する未利用地についても質問した。
市財産管理課の担当者は、未利用地が約45万平方メートルあり、そのうち約40万平方メートルが山林などであると説明した。
さらに、市が2026年3月に策定した公共施設等総合管理計画を確認すると、2025年4月1日時点の具体的な数値が記載されていた。
| 区分 | 面積 | 割合 |
|---|---|---|
| 未利用地全体 | 456,141.80㎡ | 100% |
| 山林 | 402,311.11㎡ | 約88.2% |
| その他 | 53,830.69㎡ | 約11.8% |
※出典:豊橋市公共施設等総合管理計画2026-2055。割合は編集部算出。
未利用地全体の約88%が山林であることになる。
45万6,141平方メートルは約45.6ヘクタール。東京ドームの敷地面積で換算すると、約9.8個分に相当する。
もちろん、これらの土地が一か所にまとまっているわけではない。
また、山林などは道路条件や地形、法規制などによって利用方法が限られる場合があり、すべてを簡単に売却できるわけではない。
豊橋市の未利用地は今後も増えるのか?
未利用地が増加傾向にあるのかについても質問した。
担当者は、増えているという認識は示さなかったものの、今回の取材では過去からの面積推移を示す具体的な統計までは確認できなかった。
そのため、未利用地が減少していると断定することもできない。
今後は、年度ごとの未利用地面積や維持管理費を確認することが、行政資産の実態を把握するうえで重要になる。
相続した不要な土地を豊橋市に寄付できる?市の回答は
今回の取材では、市民からの土地の寄付相談についても尋ねた。
市財産管理課によると、土地を市に寄付したいという相談が寄せられることがあるという。
しかし、市がすべての土地を受け入れるわけではない。
行政の事業に活用できる土地であれば寄付を検討する可能性はあるものの、使い道が見込めない山林や農地などについては、基本的に受け入れていないとの説明だった。
土地を無償で取得しても、草刈りや安全管理など、その後の維持管理に費用がかかるためだ。
なお、相続によって取得した土地については、一定の条件を満たす場合、国に土地の所有権を移転できる「相続土地国庫帰属制度」がある。
ただし、対象となる土地には条件があり、審査手数料や負担金も必要となる。
【週刊TAKAPIの視点】土地を売るだけでは解決しない行政資産の課題
今回の取材で見えてきたのは、豊橋市が抱える土地資産の二つの側面だ。
一つは、行政として利用予定のない土地を売却し、維持管理費を抑えながら公共施設の整備財源を確保すること。
もう一つは、売却や活用が難しい土地を今後どのように管理していくかという問題だ。
高師町の旧西口母子住宅跡地や牟呂内田町の保留地は、民間への売却によって新たな土地活用が期待される。
一方、市が保有する未利用地45万平方メートル超の大部分は山林であり、売却だけですべての課題が解決するわけではない。
今後、行政資産の管理を考えるうえでは、売却による収入だけでなく、維持管理費の削減効果や、売却後の土地利用についても検証する必要がある。
「売れる土地をどう活用するか」だけでなく、「売れない土地をどう管理するか」。
今回の市有地売却は、豊橋市の財政運営と土地資産のあり方を考える一つの機会となりそうだ。
取材先・参考資料
週刊TAKAPI 編集部/黒木
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