愛知県豊橋市は2026年10月28日、障害者向けグループホーム「Ohana」(同市大岩町)で、実際には提供していないサービスの費用を請求するなど、複数の不正が確認されたとして、事業所の指定を取り消す行政処分を決定した。不正請求額は5278万158円。40%の加算金を含む返還対象額は7389万2221円に上る。市は同日、運営する有限会社K&Mに処分を通知した。
行政監査では、実際の勤務状況と異なるタイムカードやシフト表を提出したほか、夜勤に従事した職員について事実と異なる説明をしていたことも確認された。市は障害者総合支援法に基づく不正請求、虚偽報告、虚偽答弁の3点を処分理由に挙げ、12月1日付で指定を取り消す。現在の利用者は同日以降、事業所を利用できなくなる。
利用者が不在の日にも請求 夜間支援加算で複数の不正
処分対象は、2021年6月1日に指定を受けた「グループホーム Ohana」。障害のある人が共同生活を送りながら、日常生活に必要な援助を受ける介護サービス包括型共同生活援助を提供していた。
市の発表によると、夜間支援等体制加算では、利用者数の変更届が適用される前の月にまでさかのぼり、変更後の人数を用いて加算を請求していた。また、共同生活住居の平均利用者数に応じた適切な届出をせず、実態と異なる人数で過大に請求したことも認定された。
さらに、利用者が外泊などで住居におらず、夜間支援を行っていない日にも加算を請求していた。夜間にどの程度の支援が必要で、実際にどのようなサービスが行われたのかという基本的な事実と、給付費の請求が一致していなかったことになる。
職員配置不足でも減算せず 基本サービス費にも不正
不適切な請求は、夜間支援の加算に限らなかった。共同生活援助サービス費についても、届け出た世話人の配置区分を満たす人数を確保していないにもかかわらず、その区分に基づく費用を受け取っていた。
世話人や生活支援員が人員基準を下回る状態でも、本来必要となるサービス提供職員欠如減算を適用していなかったほか、大規模住居等減算の対象となる住居で、必要な減算を行わずに請求していた。
また、利用者が不在で共同生活援助を提供していない日にも、基本サービス費を請求していた。市が認定した不正には、利用者数の届出、職員配置、減算の適用、サービス提供の有無という、給付費算定の複数の要素が含まれている。
監査では虚偽のタイムカード 夜勤従事者についても事実と異なる答弁
今回の行政処分で見過ごせないのは、不正請求に加え、監査の過程でも事実と異なる報告が行われたことだ。
市は、実際の勤務実態とは異なるタイムカードとシフト表が提出され、虚偽の報告があったと認定した。さらに、夜勤従事者についても実際の勤務状況とは異なる証言が行われたとして、虚偽答弁に該当すると判断している。
障害福祉サービスの給付費は、利用者数や職員配置などに基づいて算定される。行政が適正な請求かどうかを確認するうえで、勤務記録と実際の配置状況は重要な資料となる。今回、その確認に使われる記録自体が実態と異なっていたことは、事業所の運営管理に関わる問題だ。
ただし、勤務記録を誰が作成し、誰の判断で提出したのか、法人の代表者や管理者がどの時点で把握していたのかについては、市の発表資料では明らかにされていない。
返還対象7389万円 豊橋市分6966万円は確定
市が示した不正請求額は5278万158円。障害者総合支援法第8条第2項に基づく40%の加算金2111万2063円を加えた返還対象額は、7389万2221円となる。
このうち豊橋市分は、不正請求額4975万7863円、加算金1990万3145円の合計6966万1008円で確定している。
給付費は利用者の居住地の自治体が支給するため、今回の返還対象には豊橋市以外の自治体が支払った分も含まれる。市は、最終的な返還請求額は各自治体が精査して確定すると説明しており、現段階の総額は概算だ。
また、返還対象額が確定することと、実際に公費が回収されることは別である。今後は返還請求の時期、法人の支払い状況、未回収が生じた場合の対応も焦点となる。
12月1日から利用できず 入居者の移転先確保が課題
指定取消しは12月1日に発効する。これに伴い、現在の利用者は同日以降、グループホーム Ohanaを利用できなくなる。
豊橋市は運営法人に対し、発効日までに移行先となる共同生活住居を確保するよう指導する方針を示した。確保が難航した場合には、市も市内のグループホームの空き状況を確認し、相談支援事業所と連携して移行先の確保を支援するとしている。
一方、市の発表資料には、現在の利用者数や移転先がどこまで決まっているかは記されていない。障害の特性や必要な支援によっては、住み慣れた環境や支援者が変わることで生活への影響が生じる可能性もある。
行政処分によって不正な運営を是正することと、サービスを必要とする人の生活を途切れさせないことは、同時に実現しなければならない課題だ。
不正をいつ把握したのか 行政監督と回収の実効性が問われる
今回確認されたのは、利用者が不在の日の請求、必要な職員を配置しないままの請求、法令上の減算を適用しない請求、監査での虚偽報告と虚偽答弁という複数の問題である。
事業所が指定を受けたのは2021年6月だが、不正がいつから続いていたかを示す具体的な期間は公表されていない。行政が問題を把握した時期、監査開始までの経緯、過去の指導や確認の有無についても、今回の資料だけでは判断できない。
不正請求額が5000万円を超え、加算金を含む返還対象額が約7400万円に達した経緯を明らかにするには、請求内容と届出内容の不一致を行政がどの段階で確認できたのかという検証が欠かせない。
今後、豊橋市には不正請求額の回収と指定取消し後の利用者支援に加え、監査に至る経緯や、同様の問題を防ぐための確認体制についても説明が求められる。
編集部まとめ
豊橋市の障害者グループホームで、利用者の不在日や職員配置の実態に合わない給付費請求が行われ、不正請求額は5278万円、加算金を含む返還対象額は約7389万円に上った。監査では虚偽の勤務記録と答弁も確認され、市は12月1日付で指定を取り消す。今後の焦点は、返還金の回収に加え、利用者の移転先確保、不正の開始時期、行政が問題を把握した経緯の解明だ。事業者の責任を追及するとともに、障害のある人の生活を守る対応が求められている。
特記事項
豊橋市が2026年10月28日に公表した報道発表資料全2ページと、市の公式行政処分案内を確認した。不正請求額、加算金、返還対象額、指定取消日、虚偽報告・虚偽答弁の内容を一次資料で照合し、不正の開始時期、監査経緯、返還金の回収状況、利用者の移行先について未公表の事実は断定していない。
週刊TAKAPI編集部/成田
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