「トリドール」と聞くと、多くの人がまず思い浮かべるのは丸亀製麺だ。打ち立てのうどん、揚げたての天ぷら、店内で麺を打つライブ感。外食チェーンの中でも、丸亀製麺はかなり強いブランドになっている。
ただ、いまのトリドールホールディングスを「丸亀の会社」とだけ見ると、かなり見誤る。
2026年3月期のトリドールグループの売上収益は2787億円規模。主力の丸亀製麺セグメントは1371億円超で、売上全体の約半分を占める。つまり丸亀製麺は今も圧倒的な柱だが、裏を返せば残り半分は、国内の別業態や海外事業が積み上げているということだ。
ここが面白い。
トリドールは、うどん一本で勝ち続ける会社から、カフェ、焼鳥、ラーメン、居酒屋、肉業態、海外ブランドを抱える“外食ポートフォリオ企業”へ進化しようとしている。
数字で見るトリドール 丸亀依存から多ブランド企業へ
2026年3月期の主な数字を整理すると、トリドールの現在地が見えやすい。
| 区分 | 売上収益の目安 | 全体に占める比率 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 丸亀製麺 | 約1371億円 | 約49% | 国内主力。ブランド力・集客力の中心 |
| 国内その他 | 約396億円 | 約14% | コナズ珈琲、ずんどう屋、晩杯屋、とりどーるなど |
| 海外事業 | 約1019億円規模 | 約37% | MARUGAME UDON、Tam Jai、英国ブランドなど |
| 合計 | 約2787億円 | 100% | 過去最高水準の売上規模 |
この表で重要なのは、丸亀製麺が強いことではない。
丸亀以外も、すでに無視できない規模になっていることだ。
国内その他セグメントには、コナズ珈琲、ラー麺ずんどう屋、肉のヤマ牛、晩杯屋、天ぷらまきの、とりどーる、長田本庄軒などが含まれる。しかもこの領域は売上収益で前期比2ケタ増となり、過去最高を更新している。
一方で、原材料費や人件費の上昇を吸収しきれず、利益面では減益となった。ここにトリドールの課題がある。新業態は伸びる可能性があるが、すぐに丸亀製麺並みの利益エンジンになるとは限らない。
注目の新業態「KNOWS COFFEE」は何を狙うのか
最近の動きで注目したいのが、新ブランド「KNOWS COFFEE」だ。
トリドールはすでに、ハワイアンカフェ業態のコナズ珈琲を展開している。コナズ珈琲は、外食というより“休日感”を売るブランドに近い。パンケーキ、コーヒー、ハワイアンな空間。丸亀製麺の「早い・うまい・日常」とはまったく違う楽しみ方を作っている。
そこに新たに出てきたKNOWS COFFEEは、商業施設や都市型需要を意識したカフェ業態と見られる。カフェは、ランチ、休憩、スイーツ、テイクアウト、若年層、女性客と相性がいい。うどんでは取りにくい時間帯と客層を拾える。
ここでの狙いは明確だ。
昼食需要に強い丸亀製麺だけでは、朝・午後・カフェ利用・買い物ついでの休憩需要までは取り切れない。トリドールは、うどんで取れない時間帯をカフェで取りに行っている。
外食企業にとって、客単価だけでなく「利用シーン」を増やすことは大きい。丸亀製麺が昼の主役なら、カフェは午後の主役になれる可能性がある。
原点回帰の焼鳥 「とりどーる」再強化の意味
トリドールの原点は焼鳥店だ。
その意味で、「やきとり屋とりどーる」の再強化は単なる横展開ではなく、原点回帰でもある。
焼鳥業態の強みは、丸亀製麺と利用シーンがかぶりにくいことだ。丸亀製麺は昼食や日常食に強い。一方、焼鳥は夜、家族外食、アルコール、週末需要を取り込める。
これはかなり重要だ。外食企業が成長するには、同じ客に別の時間帯でも使ってもらう必要がある。
昼は丸亀製麺。
午後はカフェ。
夜は焼鳥や居酒屋。
週末は家族でコナズ珈琲。
この流れが作れれば、トリドールは単なるうどんチェーンではなく、生活の複数場面に入り込む外食グループになる。
海外ではMARUGAME UDONが300店舗突破
海外展開も見逃せない。
MARUGAME UDONは、海外店舗が300店舗を突破している。国内の丸亀製麺は800店舗超、海外のMARUGAME UDONも300店舗超となり、丸亀ブランドは国内外で1000店舗を超える規模に広がっている。
トリドールグループ全体では、約20ブランドを世界各地で展開しており、海外はすでに成長戦略の中心に近い位置にある。
海外事業の強みは、日本発の外食ブランドを現地市場に合わせて展開できる点だ。うどんは日本食でありながら、ラーメンや寿司ほど競争が過密ではない地域もある。セルフ式、ライブ調理、天ぷらとの組み合わせは、海外でも“わかりやすい日本食体験”として打ち出しやすい。
ただし、海外は簡単ではない。為替、現地人件費、賃料、食材調達、オペレーション教育、競合チェーンとの戦いがある。海外店舗数が増えれば増えるほど、出店スピードと収益性のバランスが問われる。
なぜ今、新業態なのか
トリドールが新業態を増やす理由は、単に「新しいことをしたいから」ではない。国内外食市場が成熟しているからだ。
うどん市場で丸亀製麺が強いのは間違いない。しかし、国内人口は減り、人件費も上がり、原材料費も上がっている。既存店の成長だけでグループ全体を伸ばし続けるのは簡単ではない。
だからこそ、多ブランド化が必要になる。
これは他の外食大手にも共通する流れだ。すかいらーくは複数ブランドで幅広い客層を取り、ゼンショーは牛丼、回転寿司、ファミレス、海外事業まで抱える。外食企業は一つの看板だけではなく、複数の業態を持つことで、景気変動や消費者の好みの変化に対応している。
トリドールも同じフェーズに入っている。
丸亀製麺という強烈な柱を持ちながら、その周辺にカフェ、焼鳥、ラーメン、居酒屋、海外ブランドを積み上げる戦略だ。
リスクは「全部が丸亀級にはならない」こと
ただし、新業態にはリスクもある。
丸亀製麺が強すぎるため、他ブランドが相対的に小さく見えやすい。さらに、カフェや焼鳥、居酒屋は競争が激しい。カフェならスターバックス、ドトール、コメダ、タリーズ。焼鳥や居酒屋なら鳥貴族、串カツ田中、地域密着の個人店とも戦うことになる。
加えて、原材料費と人件費の上昇は重い。国内その他セグメントが増収でも減益となった点は、まさにここを示している。売上が伸びても、利益がついてこなければ評価は上がりにくい。
新業態は話題性だけでは続かない。
出店立地、回転率、客単価、リピート率、人件費、食材ロスまで含めて、収益モデルとして成立するかが問われる。
トリドールの面白さは「外食のエンタメ化」にある
それでも、トリドールの新業態戦略には面白さがある。
同社の強みは、単に食べ物を出すだけではなく、“体験”を作ることにある。丸亀製麺の店内製麺、揚げたての天ぷら、コナズ珈琲のハワイ感、とりどーるの炭火感。どれも、食事そのものにライブ感を持たせている。
いまの外食は、安いだけでは勝てない。
おいしいだけでも差別化が難しい。
必要なのは、「わざわざ行きたい理由」だ。
トリドールはそこを、店内の空気、調理の見せ方、ブランドごとの世界観で作ろうとしている。
だから、トリドールの次の一手は外食業界でも注目に値する。丸亀製麺という巨大な柱を持ちながら、カフェ、焼鳥、海外展開をどこまで育てられるか。ここに、同社の次の成長ストーリーがある。
今後の注目ポイント
今後見るべきポイントは4つある。
1つ目は、丸亀製麺の国内成長がどこまで続くか。価格改定後も客数とブランド支持を維持できるかが重要になる。
2つ目は、KNOWS COFFEEやコナズ珈琲などカフェ業態の拡大。商業施設型や都市型で成功すれば、丸亀とは違う成長軸になる。
3つ目は、とりどーるや晩杯屋など夜需要の取り込み。昼に強い丸亀と、夜に強い業態を組み合わせられるかが焦点だ。
4つ目は、海外事業の収益性。店舗数の拡大だけでなく、国ごとの採算、ブランド管理、フランチャイズ戦略が問われる。
トリドールはもう、「丸亀製麺だけの会社」ではない。
丸亀を軸にしながら、外食のあらゆる時間帯とシーンを取りに行く企業になっている。
次に伸びるのは、うどんか。カフェか。焼鳥か。海外か。
その答えが見え始めるのが、これからのトリドールの面白いところだ。
担当:週刊TAKAPI編集部/黒木
編集部まとめ
トリドールホールディングスは、丸亀製麺を主力としながら、カフェ、焼鳥、ラーメン、居酒屋、肉業態、海外ブランドへと展開を広げている。2026年3月期の売上収益は2787億円規模で、丸亀製麺は全体の約半分を占める一方、国内その他や海外事業も大きな柱になりつつある。
注目されるのは、KNOWS COFFEEなどの新業態、やきとり屋とりどーるの再強化、MARUGAME UDONの海外展開だ。特に海外ではMARUGAME UDONが300店舗を超え、国内外で丸亀ブランドの存在感が増している。
一方で、新業態には競争激化、原材料費・人件費上昇、収益化の難しさというリスクもある。今後は、丸亀製麺の安定成長に加え、カフェ業態、夜需要、海外事業がどこまで利益を生む柱になれるかが焦点となる。
特記事項:本記事は、企業発表、決算資料、公開情報、各社報道、ブランド展開情報をもとに週刊TAKAPI編集部が整理・構成しました。売上、店舗数、ブランド展開、出店計画は公表時点の情報であり、今後変更される可能性があります。
サイト訪問者数

コメント
0件まだコメントはありません。最初のコメントを投稿してみませんか。