大阪府内で2016年から2022年にかけ被害 裁判員裁判は「卑劣・悪質の極み」と非難
大阪府内で小学生女児10人に対して長期間にわたり性加害を繰り返したとして、強制性交等致傷罪などに問われた元病院職員、柳本智也被告(30)側が、5月25日付で最高裁判所に上告した。
1審の大阪地裁は、裁判員裁判で無期懲役を言い渡した。2審の大阪高裁も5月11日、1審判決を支持し、被告側の控訴を棄却した。被告側は、この無期懲役判決を不服として上告した形だ。
事件は、単なる個別の性犯罪ではない。
判決で認定された内容は、児童を狙った長期的な見張り、生活時間の把握、住居周辺での待ち伏せ、刃物を示した脅迫、写真や動画の撮影などを含む。被害に遭った女児らは当時、小学生だった。
裁判所が重く見たのは、犯行の回数だけではない。
柳本被告は、被害児童や家族の行動を事前に確認し、帰宅時間や家族の在宅状況を記録していたとされる。最長で犯行の11カ月前から機会をうかがっていた事案もあった。子どもたちが生活する集合住宅、自宅周辺、帰宅途中の動線が、加害のために利用された。
本来であれば、子どもにとって自宅やその周辺は最も安全であるべき場所だ。
しかし、この事件では、その生活圏が長期間にわたり狙われた。
1審の大阪地裁は、犯行について「卑劣・悪質の極み」と厳しく非難し、検察の求刑通り無期懲役を言い渡した。2審の大阪高裁も、裁判員裁判で示された判断を尊重し、無期懲役を維持した。
被告側は公判で起訴内容を認め、治療や更生の意思を示していた。だが、高裁は、弁償が一部行われたことなどを踏まえても、量刑を左右する事情にはならないと判断した。
今回の上告により、審理の場は最高裁に移る。
最高裁が上告を棄却すれば、無期懲役が確定する。一方で、最高裁がどこまで量刑や審理過程を検討するかも注目される。児童性犯罪で、これほど多数の被害児童と長期の犯行が認定された事案に対し、司法がどのような最終判断を示すのかが問われている。
この事件が社会に突きつけている問題は、判決の重さだけではない。
第1に、子どもが日常生活の中で狙われた点だ。
登下校、留守番、集合住宅の共用部、自宅周辺の移動。親が常に付き添うことができない時間帯や場所が、犯行の機会にされた。
第2に、加害者が時間をかけて被害児童の生活を把握していた点だ。
突発的な犯行ではなく、見張り、記録、機会の確認があったと認定されている。地域の見守りや防犯カメラだけで防ぎきれない危険を示している。
第3に、被害の回復が判決だけでは終わらない点だ。
女児らは、事件後も恐怖や不安を抱え続けている。照明を消せない、男性への恐怖が残る、家族が安全だと思っていた場所に不安を抱く。刑が重くても、被害者と家族の生活が元に戻るわけではない。
児童性犯罪では、事件が発覚した後の支援が極めて重要になる。
被害児童への長期的な心理支援、家族への相談支援、学校や地域での配慮、捜査や裁判で二次被害を出さない対応が必要になる。
再発防止も避けて通れない。
加害者への治療プログラム、出所後の監督、子どもと接する職場での確認制度、地域での異変察知、保護者への情報共有。これらを個別の努力に任せるだけでは、計画的な児童性犯罪には対応しきれない。
今回の事件で、1審・2審が無期懲役を選んだ意味は重い。
被害児童の人数、犯行期間、計画性、脅迫の態様、被害後の影響。裁判所は、これらを総合して、有期懲役の枠を超える重大事件だと判断した。
一方で、社会が考えるべきなのは、厳罰だけで十分かという点だ。
重い刑罰は必要だ。
しかし、事件が起きた後に重く裁くだけでは、次の被害を防げない。
子どもが日常の中で狙われる事件をどう見つけるのか。
見張りやつきまといの段階で、地域や警察がどこまで介入できるのか。
被害児童が声を上げられない場合に、周囲の大人がどのように気づくのか。
この事件は、児童性犯罪を「加害者個人の異常な犯行」として片づけてはいけないことを示している。
子どもの生活圏に入り込み、時間をかけて狙い、恐怖で支配する。そうした手口に対し、家庭、学校、地域、警察、司法がどう備えるかが問われている。
柳本被告側の上告により、事件は最高裁の判断を待つ段階に入った。
だが、被害児童と家族にとって、裁判の終わりが被害の終わりではない。
この事件が問うているのは、無期懲役の妥当性だけではない。
子どもを狙う性犯罪を、社会がどこまで本気で防ぐのか。
被害を受けた子どもを、どこまで長く支え続けるのか。
その答えが、司法判断の先に求められている。
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編集部まとめ
大阪府内で2016年から2022年にかけ、小学生女児10人に対する性加害を繰り返したとして、強制性交等致傷罪などに問われた元病院職員、柳本智也被告側が最高裁に上告した。
1審の大阪地裁は、裁判員裁判で「卑劣・悪質の極み」と非難し、無期懲役を言い渡した。2審の大阪高裁も1審判決を支持し、無期懲役を維持した。
事件では、被害児童の生活時間を把握し、住居周辺で機会をうかがうなど、長期的で計画的な犯行が認定された。今後は最高裁の判断とともに、児童性犯罪の再発防止、被害児童への長期支援、地域での早期発見体制が問われる。
事件のポイントQ&A
Q1. 被告側はなぜ最高裁へ上告したのですか?
1審・2審で言い渡された無期懲役判決を不服として、最高裁へ上告しました。今後、最高裁が上告をどう扱うかが焦点になります。
Q2. 1審・2審はどのように判断しましたか?
1審の大阪地裁は、裁判員裁判で無期懲役を言い渡しました。2審の大阪高裁も1審判決を支持し、被告側の控訴を棄却しました。
Q3. この事件が社会問題として重い理由は何ですか?
被害児童が10人に上り、犯行が長期間かつ計画的だったと認定されたためです。子どもの生活圏が狙われた点、被害後の長期支援、再発防止策の強化が問われています。

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