大規模災害などで首都機能が停止した場合に備え、東京都以外の地域へ国の中枢機能を分散させる「副首都構想」が新たな段階に入った。
関連法の成立を受け、大阪府、愛知県、福岡県が相次いで副首都への指定を目指す考えを表明。さらに北海道や宮城県も前向きな姿勢を示しており、今後は全国各地で誘致競争が本格化する可能性がある。
副首都とは何か
副首都関連法では、災害時でも国の行政機能を維持できる体制づくりを目的として、東京都以外の道府県を「副首都」として指定できる制度が創設された。
指定には、
- 国の出先機関が集積していること
- 人口や経済規模など一定の都市機能を備えていること
- 特別区設置や道府県・政令市による「連携協約」など行政体制を整えていること
などが要件とされている。
指定後は規制緩和や税制優遇などの支援策が講じられる見込みだ。
愛知・大阪・福岡が相次ぎ名乗り
大阪府の吉村洋文知事は、「副首都は複数あるべきだ」と述べ、大阪が日本の成長を支える中核都市になるべきとの考えを示した。
愛知県では、大村秀章知事が法成立直後に会見を開き、「副首都に必要な機能は愛知・名古屋に全てある」として、全国で最も早く名乗りを上げる考えを表明。名古屋市との連携を強化し、指定を目指す方針だ。
福岡県も福岡市と北九州市との連携協約を軸に、副首都指定を目指す姿勢を打ち出している。
北海道・宮城も検討へ
北海道は札幌市との具体的な協議を進める方針を示し、宮城県も制度の詳細が固まり次第、条件を満たせば申請を検討するとしている。
複数都市を副首都として指定できる制度であることから、今後さらに立候補する自治体が増える可能性がある。
東京都は「東京一極集中是正」に警戒感
一方で東京都は、「東京一極集中の是正」という考え方に慎重な姿勢を示している。
小池百合子知事は、「東京に責任を転嫁するような議論には危機感を覚える」と述べ、地方交付税制度などの課題まで東京に求める考え方を批判した。
都関係者からは、「首都機能のバックアップは立川市などでも整備している」との指摘もあり、副首都構想の実効性について慎重な見方も出ている。
副首都はなぜ必要なのか
首都直下地震や大規模災害が発生した場合、東京に行政・経済機能が集中していることで、国全体の機能が大きく停滞するリスクが指摘されてきた。
副首都構想は、こうしたリスクを分散し、日本全体の危機管理能力や経済活動を維持することを目的としている。
今後は政府が指定基準の詳細を政令などで定める予定で、各自治体による誘致活動や地域間競争が本格化するとみられる。
編集部まとめ
副首都構想は、単なる「第二の東京」をつくる話ではない。首都直下地震や南海トラフ地震など、広域災害が発生した際に、国の行政・経済機能をどこまで継続できるかという国家的な危機管理の問題だ。
大阪、愛知、福岡はいずれも、人口、交通、産業、行政機能の面で有力候補といえる。一方で、指定を巡る競争が地域振興策や税制優遇の獲得競争だけに傾けば、本来の目的が見えにくくなるおそれもある。
重要なのは、どの地域が選ばれるかだけではない。中央省庁の機能移転、通信網、医療体制、物流、電力、データのバックアップまで含め、実際の災害時に機能する仕組みを整えられるかが問われる。
東京一極集中の是正を巡っては、東京都側の反発も予想される。しかし、東京を弱くするのではなく、日本全体の耐久力を高めるという視点で議論を進める必要がある。副首都構想が看板政策で終わるのか、それとも現実的な危機管理体制につながるのか、今後の制度設計を注視したい。
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