「焼きたてのかるび」と「韓丼」。
どちらもカルビ丼を看板商品に掲げ、ロードサイドを中心に展開するファストカジュアル型の飲食店です。
メニューを見ればカルビ丼、韓国系スープ、焼肉をイメージさせる商品などが並び、「あれ?この店、韓丼と似ていない?」と感じる人がいても不思議ではありません。
実際、外食業界では以前から両ブランドが競合関係にあると分析されてきました。2024年時点の業界記事でも、「韓丼」に対する「焼きたてのかるび」や吉野家系の「かるびのとりこ」の参入が紹介されています。
では、なぜここまで似た業態が生まれたのでしょうか。
結論から言えば、「焼きたてのかるび」が韓丼を意識した可能性を考えることはできても、両社が似ている最大の理由は、カルビ丼という市場そのものに大きな成長余地があるからと考えるのが自然です。
「焼きたてのかるび」と「韓丼」はなぜ似ている?
まず両ブランドの共通点を整理してみましょう。
比較項目
韓丼
焼きたてのかるび
主力商品
カルビ丼
カルビ丼
業態
ファストカジュアル
ファストカジュアル
主な立地
ロードサイドなど
ロードサイドなど
コンセプト
焼肉を気軽に
焼肉を気軽に
韓国系メニュー
スン豆腐
ユッケジャンなど
焼肉イメージ
強い
強い
低価格・日常利用
◎
◎
「韓丼」は京都発祥で、2010年にスタート。
カルビ丼とスン豆腐を専門的に扱う業態として成長し、カルビ丼ブームの火付け役とも紹介されています。
一方、「焼きたてのかるび」は物語コーポレーションが展開。
同社は「焼肉きんぐ」で知られる企業で、「焼きたてのかるび」についても、熟成肉を使ったカルビ丼とユッケジャンスープを軸とするファストカジュアル業態と説明しています。
つまり、
韓丼=カルビ丼専門店という市場を先に開拓した存在
に対して、
焼きたてのかるび=焼肉業界の大手企業がカルビ丼市場へ本格参入した存在
と見ることができます。
韓丼が先行していたカルビ丼市場
ここが、この2ブランドを考えるうえで重要なポイントです。
韓丼は2010年から展開しており、カルビ丼とスン豆腐という組み合わせを武器に店舗網を拡大してきました。
韓丼を運営する株式会社やる気は、カルビ丼について厳選した牛肉と秘伝の熟成醤油生だれを使用し、注文後に調理するスタイルを打ち出しています。
つまり、韓丼は単なる「焼肉店の丼メニュー」ではなく、
「焼肉をファストフード化する」
という市場を作ったと考えられます。
ここが非常に大きい。
従来、焼肉といえば、
- 家族で焼肉店へ行く
- 自分で肉を焼く
- ある程度の時間をかけて食事する
というスタイルが一般的でした。
しかしカルビ丼なら、
「焼肉の満足感を、もっと短時間・低価格で楽しむ」
ことができます。
この発想は、牛丼やラーメンなどの外食市場とも相性が良い。
カルビ丼が「牛丼の次の肉系ファストフード」になり得ると考えれば、外食企業が参入したくなる理由も見えてきます。
なぜ物語コーポレーションが参入したのか?
ここが「焼きたてのかるび」を考察するうえで最大のポイントです。
運営する物語コーポレーションは、愛知県豊橋市発祥の外食企業。
代表ブランドには「焼肉きんぐ」「丸源ラーメン」「ゆず庵」などがあります。
つまり、同社はもともと、
「外食チェーンを多店舗展開するノウハウ」
を持っています。
その会社がカルビ丼市場に参入した。
これは非常に合理的な戦略です。
なぜなら、焼肉きんぐで培った
- 肉の調達
- 肉の商品開発
- 焼肉業態のノウハウ
- ロードサイド出店
- 店舗運営
- ブランドマーケティング
などを、新しい業態に転用できるからです。
「焼きたてのかるび」は2021年8月から展開が始まり、物語コーポレーションは2023年には「焼きたてのかるび事業部」を新設。
つまり単なる実験的な店舗ではなく、成長ブランドとして本格的に育てようとしていたことが分かります。
実は「韓丼をコピー」するより「市場をコピー」したと考えた方が分かりやすい
ここは重要です。
「韓丼にそっくりだから、韓丼を真似したのでは?」
という見方はできます。
しかし、実際にはもっと大きな市場構造があります。
それが、
「焼肉を低価格・短時間で食べたい」
という消費者ニーズです。
カルビ丼という商品は、このニーズに非常に適しています。
そのため、
韓丼
↓
カルビ丼市場の成長
↓
大手外食企業が参入
↓
焼きたてのかるび
↓
吉野家系「かるびのとりこ」
という流れが生まれました。
実際、業界記事でもカルビ丼専門店の台頭について、韓丼に続いて物語コーポレーションや吉野家が参入したことが紹介されています。
つまり競争相手は韓丼だけではありません。
「カルビ丼」という新しい外食カテゴリーそのものを巡る競争
になっているのです。
「焼きたてのかるび」は韓丼の弱点を狙った?
ここからは考察です。
韓丼の強みは、
カルビ丼+スン豆腐
という明確な専門性。
一方、焼きたてのかるびは、
カルビ丼+ユッケジャンスープ+盛岡冷麺+焼肉系商品
という方向性を取っています。
物語コーポレーション自身も、焼きたてのかるびを「熟成肉を使用した焼きたてのカルビ丼」と「ユッケジャンスープ」の専門店として位置付けています。
ここには差別化戦略が見えます。
韓丼が、
韓国料理×カルビ丼
なら、
焼きたてのかるびは、
焼肉×カルビ丼
に寄せたブランドとも考えられます。
似ているようで、実は少し違う。
最大の違いは「企業規模」と「出店力」
両社の競争を考えるうえで、商品だけを見るのは不十分です。
物語コーポレーションは、「焼肉きんぐ」をはじめ複数の大型外食ブランドを展開しています。
2025年12月末時点で、同社は国内外合わせて多数の店舗を展開しており、「焼きたてのかるび」も専門店・新業態カテゴリーのブランドとして位置付けられています。
さらに2026年に入ってからも、
- 仙台六丁の目店
- 東加古川店
- 朝霞溝沼店
などの出店が確認できます。
これは非常に重要です。
「良い商品を作る」だけではチェーンは大きくなりません。
必要なのは、
商品開発+物件開発+人材+出店ノウハウ+ブランド力
です。
物語コーポレーションは、そこを持っている。
だからこそ、韓丼が開拓したカルビ丼市場に対して、強力な競合として入っていけるわけです。
なぜ「焼きたてのかるび」はロードサイドと相性がいいのか?
カルビ丼業態はロードサイドと非常に相性がいいと考えられます。
理由はシンプルです。
① 車で入りやすい
地方では外食=車というケースも多く、駐車場を備えたロードサイド店は日常利用との相性が良い。
② 一人でも家族でも利用できる
焼肉店よりも利用ハードルが低い。
③ テイクアウトに対応しやすい
カルビ丼は持ち帰り商品としても成立しやすい。
④ 客単価を抑えやすい
焼肉店より気軽に利用できます。
つまり、
「今日は焼肉を食べたい。でも焼肉店に行くほどではない」
という消費者を取り込める。
ここがカルビ丼業態最大の魅力ではないでしょうか。
実は「韓丼vs焼きたてのかるび」は牛丼業界に近い?
面白いのは、カルビ丼市場が牛丼市場と似た構造になりつつあることです。
牛丼市場では、
- 吉野家
- すき家
- 松屋
などが競争しています。
しかしカルビ丼市場では、
- 韓丼
- 焼きたてのかるび
- かるびのとりこ
などが競争する構図が生まれました。
つまり、
「カルビ丼」という商品が一つの独立したファストカジュアル市場になりつつある
とも考えられます。
2023年にはITmediaも、カルビ丼専門店の台頭を取り上げ、韓丼、焼きたてのかるび、かるびのとりこを同じ市場のプレーヤーとして紹介しています。
韓丼にとって「焼きたてのかるび」は脅威なのか?
結論としては、かなり意識すべき競合だと考えられます。
ただし、韓丼にも強みがあります。
最大の武器は、
「カルビ丼+スン豆腐」というブランドイメージ
です。
韓丼は2010年からこの業態を展開してきた先行者。
一方、焼きたてのかるびは後発ながら、物語コーポレーションの店舗展開力を持つ。
この違いが面白いところです。
韓丼
「カルビ丼市場を作った先行者」
焼きたてのかるび
「大手外食企業の力で市場拡大を狙う後発」
この構図で見ると、両社の競争がかなり分かりやすくなります。
さらに吉野家まで参入した理由
カルビ丼市場の面白さは、ここにあります。
吉野家も「かるびのとりこ」を展開しました。
つまり、
牛丼最大手クラスの企業までカルビ丼市場に入ってきた
わけです。
2024年には「かるびのとりこ」が3店舗目を出店する一方、「焼きたてのかるび」は22店舗まで拡大していたと報じられています。
これは、カルビ丼が単なるニッチ商品ではなく、
大手外食企業が新しい成長市場として注目した
ことを示していると考えられます。
では「焼きたてのかるび」は韓丼を超えられるのか?
ここは今後の最大の注目ポイントです。
焼きたてのかるびには、物語コーポレーションという強力なバックボーンがあります。
しかも2026年には「500万食突破記念」の商品を発売するなど、ブランドとしての販売実績も積み上げています。
一方、韓丼は先行者としてのブランド力があります。
したがって、今後は、
韓丼=専門性
焼きたてのかるび=チェーン展開力
という戦いになる可能性があります。
【考察】本当のライバルは「韓丼」ではなく「牛丼」
個人的に最も重要だと思うのがここです。
「焼きたてのかるび」の最大のライバルを韓丼だと考えると、少し視野が狭くなります。
本当の競争相手は、
牛丼・焼肉・ラーメン・定食など、日常の外食全体
なのではないでしょうか。
例えば、
「今日は何を食べよう?」
となったとき、
牛丼を選ぶ人もいれば、
ラーメンを選ぶ人もいる。
定食を選ぶ人もいる。
その中に、
「カルビ丼」という選択肢をどこまで定着させられるか
が重要です。
だからこそ、韓丼と焼きたてのかるびが競争することで、カルビ丼市場そのものが成長する可能性があります。
まとめ|「そっくり」なのは偶然ではなく、同じ市場を狙っているから
「焼きたてのかるび」と「韓丼」が似ているのは事実です。
しかし、それを単純に「パクリ」と結論づけるのは適切ではありません。
むしろ、
韓丼が先行してカルビ丼という市場を開拓し、その市場の可能性を大手外食企業が見つけ、焼きたてのかるびが参入した
と見るほうが、外食業界の構造を理解しやすいでしょう。
韓丼は「カルビ丼+スン豆腐」という専門性。
焼きたてのかるびは「焼肉きんぐ」を展開する物語コーポレーションの店舗開発力。
そして吉野家も「かるびのとりこ」で参入。
カルビ丼市場は、すでに一つの競争市場になっています。
今後の注目は、
「韓丼が先行者としてブランドを守るのか」
それとも、
「焼きたてのかるびが出店力を武器に一気に店舗網を広げるのか」
という点でしょう。
カルビ丼は、もしかすると「牛丼」「ラーメン」に続く、次世代の国民的ファストカジュアルになっていくのかもしれません。
両社がカルビ丼を中心とした似た業態を展開していることから、競合関係にあると見ることはできますが、「パクリ」と断定するのは避けるべきでしょう。
焼きたてのかるびは2021年8月から展開が始まりました。
同社は「焼肉きんぐ」「丸源ラーメン」などを展開する外食企業です。
特記事項
本記事では、「焼きたてのかるび」と「韓丼」が似ている理由について、公開されている企業情報や外食業界の記事をもとに考察しました。
両ブランドが似ていることは確認できますが、「韓丼をコピーした」「模倣した」などの断定的な表現は、公式な根拠がないため避けています。
むしろ注目すべきなのは、カルビ丼という商品が一つの外食カテゴリーとして成長し、大手外食企業まで参入する市場になったことです。
今後は「韓丼 vs 焼きたてのかるび」というブランド競争だけでなく、牛丼・焼肉・ラーメン・定食などを含めた「日常外食のシェア争い」という視点で見ると、さらに面白い展開が見えてきそうです。
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