【独自取材】東海市の地下水汚染、工場外の調査は井戸1本 愛知製鋼知多工場内では「12本中10本」でふっ素基準超過

愛知県が2026年9月4日に公表した、愛知製鋼知多工場(東海市荒尾町)の地下水汚染に関する続報を巡り、週刊TAKAPIは9月7日、県環境局環境政策部水大気環境課に取材を行った。

県は、工場から半径約500メートル以内で確認した周辺井戸1本を調査し、地下水環境基準に適合していたことから、「周辺への地下水汚染の拡大は認められなかった」としている。

一方、工場内では、ふっ素が12本中10本の井戸で地下水基準を超過している。工場外で実際に調査できた井戸は1本にとどまり、県担当者も取材に対し、「確認できる範囲でしか確認できない」との認識を示した。

県による今回の調査は終了し、今後は愛知製鋼が地下水を監視する。ただし、モニタリングの地点数や頻度、公表方法などは明らかにされなかった。


東海市の地下水汚染、周辺井戸の調査が1本だった理由

週刊TAKAPIは9月7日、周辺井戸の調査が1本に限られた理由について、愛知県環境局環境政策部水大気環境課に確認した。

県によると、愛知製鋼知多工場の敷地外について、半径約500メートル以内に井戸が存在するか調べたところ、確認された周辺井戸は1本だけだった。

県は、この井戸の地下水を調査した結果、環境基準に適合していたことから、少なくとも調査した地点には汚染が到達していないと判断した。

半径約500メートル以内で確認された井戸は1本

県担当者は、工場外の周辺井戸について、次の趣旨で説明した。

半径500メートルの範囲内で調べたが、確認されたのはこの1本だった。

井戸が複数存在する中から1本だけを選んだのではなく、県が確認した範囲では、調査対象となる周辺井戸が1本だったという説明だ。

ただし、今回の取材では、井戸の存在をどのような方法で確認したのかについて、具体的な説明は得られなかった。


井戸1本で「地下水汚染の拡大なし」と判断した根拠

県「この地点には到達していない」

週刊TAKAPIは、井戸1本の調査結果をもって「周辺への地下水汚染の拡大は認められない」と判断した根拠についても尋ねた。

県担当者は、次の趣旨で回答した。

確認できる範囲でしか確認できない。確認できた井戸が1本で、そこで基準超過が出ていないため、その地点には汚染が到達していないということになる。

県の判断は、工場周辺の地下水を面的に調査した結果ではなく、半径約500メートル以内で確認できた井戸1本が環境基準に適合していたことを根拠としている。

したがって、今回確認されたのは「調査した1本では基準超過がなかった」という事実だ。工場外のすべての地下水について、汚染がないことを確認したわけではない。

地下水の流向や井戸の深さは明らかにならず

地下水汚染の広がりを判断する際には、調査地点の位置だけでなく、地下水の流向や井戸の深さ、帯水層なども重要な要素となる。

しかし、今回の電話取材では、こうした条件を確認した上で調査地点を評価したのかについて、具体的な回答は得られなかった。

県の発表にある「周辺への地下水汚染の拡大は認められなかった」という表現については、実際に調査できた範囲と併せて受け止める必要がある。


愛知製鋼知多工場内、ふっ素が12本中10本で基準超過

工場外で調査された井戸は地下水環境基準に適合していた一方、愛知製鋼知多工場の敷地内では、ふっ素が12本中10本の井戸で地下水基準を超過している。

週刊TAKAPIが、工場内の多くの井戸で基準超過が確認されているにもかかわらず、工場外への拡大は認められないとした理由を尋ねたところ、県は、周辺井戸から基準超過が確認されなかったことを挙げた。

県は、工場内で確認された基準超過とは分けて、工場外にある周辺井戸の調査結果を基に拡大状況を判断している。

工場内と工場外で調査地点数に大きな差

工場内では複数の井戸から基準超過が確認された一方、工場外の調査は1地点に限られた。

県が確認可能な範囲で調査した結果ではあるものの、工場外の汚染状況を判断する材料が1本の井戸に限られていることは、今回の発表を読み解く上で重要な点だ。

今後は、愛知製鋼による地下水モニタリングで新たな変化が確認されるかが焦点となる。


砒素・ふっ素・ほう素の取扱履歴、汚染原因は特定できず

漏えい事故などの記録は確認されていない

愛知製鋼知多工場には、砒素、ふっ素、ほう素の取扱履歴がある。

県によると、対象物質を取り扱っていた履歴はあるものの、漏えい事故などの記録は確認されていない。

このため、県は、地下水汚染が工場の操業に由来するのか、自然由来なのかを特定できず、原因不明としている。

取扱履歴があることだけで工場の操業が原因だとは断定できない。一方、自然由来と確定したわけでもなく、どちらが有力かについて県は判断を示していない。


県の原因調査は終了、今後は愛知製鋼が地下水を監視

週刊TAKAPIは、汚染原因を特定するための調査を今後も継続するのか、県に確認した。

県担当者は、今回の調査については終了し、今後は事業者が地下水を監視していくとの趣旨で回答した。

原因が特定されないまま、県による原因調査から、愛知製鋼による地下水モニタリングへ移行することになる。

モニタリングの地点数や頻度は非公表

週刊TAKAPIは、愛知製鋼が今後実施する地下水モニタリングについて、次の点を質問した。

  • 調査地点数
  • 調査頻度
  • 開始時期
  • 調査結果の公表方法

しかし、県担当者は、具体的な内容は公表できないとの趣旨で回答した。

このため、どの井戸を、どの程度の頻度で調査するのか、結果が住民に公表されるのかは明らかになっていない。


健康相談や体調不良の申告は確認されず

県によると、9月7日の取材時点で、周辺住民や工場従業員から、今回の地下水汚染に関連する具体的な健康相談や体調不良の申告は確認されていない。

県は、現段階で健康影響調査を実施する予定はないとしている。

一方、今後、具体的な健康相談が寄せられたり、汚染範囲の拡大が確認されたりした場合には、必要な対応を検討する可能性があるとの説明だった。


新たな井戸で基準超過なら追加調査

県担当者は、今後、周辺で別の井戸が確認され、その井戸から環境基準を超える物質が検出された場合には、追加調査を行うと説明した。

ただし、今回確認した周辺井戸は基準に適合しており、県による現在の調査はこれで終了する。

週刊TAKAPIが次回の調査結果の公表時期を尋ねたところ、県担当者は「これはもうこれで終わりです」と回答した。

現時点で、県が次回の調査結果を定期的に公表する予定は示されていない。


【編集部検証】「工場外に汚染なし」と断定できる調査ではない

今回の県の調査で確認されたのは、半径約500メートル以内で見つかった工場外の井戸1本が、地下水環境基準に適合していたという事実だ。

これは重要な調査結果である一方、工場外の地下水全体を面的に調べ、汚染が存在しないと証明したものではない。

確認できた内容を整理すると、次の通りとなる。

  • 工場内では、ふっ素が12本中10本で地下水基準を超過
  • 半径約500メートル以内で確認された工場外の井戸は1本
  • 調査した周辺井戸1本は地下水環境基準に適合
  • 操業由来か自然由来かは特定できず
  • 県による今回の原因調査は終了
  • 今後は愛知製鋼が地下水を監視
  • モニタリングの地点数や頻度、公表方法は非公表
  • 周辺で新たな基準超過が確認された場合は追加調査を実施
  • 健康相談や体調不良の申告は取材時点で確認されていない

県担当者自身も、「確認できる範囲でしか確認できない」と説明している。

「調査した井戸では基準超過がなかった」ことと、「工場外に汚染が存在しないことが証明された」ことは同じではない。今後は、愛知製鋼によるモニタリングがどのように実施され、その結果が地域住民へ示されるのかを継続して確認する必要がある。


Q今回の調査結果は「工場外に汚染がない」という意味ですか?
A工場外の地下水全体に汚染がないと証明されたわけではありません。半径約500メートル以内で確認された周辺井戸1本を調査し、その井戸では基準超過が確認されなかったという結果です。
Q汚染原因が不明なのに調査は終了するのですか?
A県による今回の調査は終了し、今後は愛知製鋼が地下水を監視します。操業由来か自然由来かは特定されていません。
Qモニタリング結果を住民が確認することはできますか?
A9月7日の取材では、モニタリングの地点数、頻度、開始時期、公表方法は明らかにされませんでした。
Q新たな井戸で基準超過が確認された場合はどうなりますか?
A県は、周辺の別の井戸で新たな基準超過が確認された場合には、追加調査を行うと説明しています。
Q健康影響調査は実施されますか?
A取材時点で具体的な健康相談や体調不良の申告がないため、県は健康影響調査を予定していません。今後、具体的な相談や汚染拡大が確認された場合には、必要な対応を検討するとしています。

取材日時:2026年9月7日
取材方法:電話取材
回答部署:愛知県環境局環境政策部 水大気環境課

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週刊TAKAPI編集部:黒木

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