名古屋港水族館は2026年9月7日、8月4日に生まれ、人工哺育を続けていたベルーガ(シロイルカ)の雄の赤ちゃんについて、9月6日に安楽死処置を行い、死亡を確認したと発表した。
赤ちゃんは、水族館生まれのベルーガ「ナナ」が出産した国内初の第2世代として注目されていた。しかし、生まれた後に母親から授乳を受けられず、職員が24時間体制で人工哺育を実施。発熱や腹水の貯留などが確認され、9月6日には自力で泳ぐことも難しい状態になったという。
ベルーガの赤ちゃんは9月6日に死亡 名古屋港水族館が発表
名古屋港水族館の発表によると、死亡したのはベルーガ「ナナ」が2026年8月4日午前5時6分に出産した雄の赤ちゃん。
ナナは2007年7月25日に名古屋港水族館で生まれたベルーガで、水族館生まれのベルーガが出産したのは国内で初めてだった。
赤ちゃんは「水族館生まれの親から生まれたベルーガ」、いわゆる水族館2世として誕生したが、生後約1カ月で死亡した。
母親から授乳を受けられず人工哺育へ
赤ちゃんは誕生後、母親のナナから授乳を受けることができなかった。
水族館は8月6日から職員による人工哺育を開始。母親から採取したミルクと人工ミルクを使い、24時間体制で状態を観察しながら、2時間おきに哺乳を続けていた。
同館が8月に公開した飼育記録によると、ナナにとって今回が初めての授乳だったため、授乳に必要な体勢を取ったり、赤ちゃんとタイミングを合わせたりすることが難しかったという。
赤ちゃんには、母乳を飲めなかったことによる血糖値の低下など、栄養面の異常も確認されていた。
初乳を飲めず免疫力にも不安 発熱や腹水を確認
赤ちゃんは8月18日から発熱が続くようになった。
生まれた直後の赤ちゃんにとって重要な初乳を飲めていなかったため、水族館側は免疫力への不安があると判断。各種検査の結果を踏まえ、細菌感染や真菌感染の可能性も視野に入れた投薬治療を行った。
しかし、8月27日の超音波検査では、腹部に大量の腹水がたまっている状態が確認された。
水族館はその後も、
- 腹水の穿刺検査
- 腹圧の管理
- レントゲン撮影
- 免疫力を補うための血漿輸液
- 投薬治療
などを続けた。
それでも症状は改善せず、9月6日未明から呼吸が浅くなり、動きも非常に弱くなった。最終的には、自力で泳ぐことが困難な状態に陥ったという。
なぜ安楽死を選択したのか
9月6日午後1時、飼育展示部長、獣医師、担当飼育員らが、それまでの治療経過や検査数値を踏まえて対応を協議した。
水族館が公表した判断時の状態は次の通り。
- 体温の異常な低下
- 循環血液量の低下
- 酸素飽和度を中心とした血液状態の悪化
- 心拍の微弱化と心拍数の低下
- 胸水、腹水の貯留
- 気胸
- レントゲンで確認された肺の状態悪化
- 消化不良と通過障害
- 自力での遊泳、浮遊ができない状態
水族館側は、これ以上治療を続けても回復を見込めず、さらに苦痛が増す可能性があると判断。アニマルウェルフェア(動物福祉)の観点から、安楽死処置が適切との結論に至ったとしている。
同館を運営する公益財団法人名古屋みなと振興財団のガイドラインに基づき、苦痛を感じないよう配慮した方法で処置を実施し、同日午後2時18分に死亡を確認した。
「病気で死亡」ではなく、回復困難と判断して安楽死
今回の発表を伝える際には、赤ちゃんが病気によってそのまま死亡したのではなく、重篤な状態となり、回復が見込めないとの判断から安楽死処置が行われた点を区別する必要がある。
一方、発熱や胸腹水、肺の状態悪化などを引き起こした根本的な死因については、現時点で確定していない。
水族館は今後、岐阜大学応用生物科学部共同獣医学科で解剖を行い、詳しい死因を調べる予定としている。
国内初の繁殖事例から得られた課題
母親のナナは名古屋港水族館生まれの19歳。父親は推定19歳の「ニコ」だった。
名古屋港水族館は2004年に国内で初めてベルーガの出産に成功。その後も鯨類の繁殖研究を続けてきた。今回の出産は、施設内で生まれたナナが母親となったことで、国内初の第2世代誕生となった。
ただし、出産の成功と、その後の新生児の生存・成長は別の課題である。特に今回は、母子間の授乳が成立しなかったことや、免疫物質を多く含む初乳を十分に飲めなかったことが、人工哺育を難しくする要因となった。
水族館は、赤ちゃんを約1カ月にわたり人工哺育した経験を、今後のベルーガ新生児の飼育に役立てたいとしている。
編集部の視点 安楽死の判断過程を公表した意味
今回の発表では、安楽死という結論だけでなく、処置に至るまでの症状や検査結果、判断に参加した職員の構成が具体的に示された。
動物の安楽死は来館者にとって受け止めることが難しい判断である。一方、回復の見込みがない状態で治療を続けることが、かえって動物の苦痛を長引かせる可能性もある。
そのため水族館には、今後公表される解剖結果に加え、人工哺育の経過や治療内容、今回得られた課題を可能な範囲で示すことが求められる。国内初の繁殖事例で得られた知見を、施設内だけでなく、他の飼育・研究機関とどのように共有するかも重要になる。
現段階では、授乳を受けられなかったことと死亡との因果関係や、感染症の有無を断定することはできない。詳しい評価には、岐阜大学で予定されている解剖結果を待つ必要がある。
※本記事は公開されている企業情報、報道内容、地域特性、市場動向などをもとに編集部が独自に考察した内容です。企業や関係者が公表している出店理由・経営方針を断定するものではなく、一部に編集部の見解や推測が含まれます。最新かつ正確な情報は、各企業・自治体の公式発表をご確認ください。
各種ご相談、情報提供、現地写真・動画、関係者からの証言などをお持ちの方は、メール(info@108takapi.jp)、各種SNSのDM、または公式LINEまでお寄せください。週刊TAKAPI編集部が内容を確認のうえ、取材・報道の参考とさせていただきます。
週刊TAKAPI編集部:黒木
サイト訪問者数

コメント
0件まだコメントはありません。最初のコメントを投稿してみませんか。
この記事のコメント投稿は締め切られています。