文部科学省が公表した国立大学法人の2025年度決算で、東京大学や東京科学大学など12法人が損益計算書上の赤字となったことが分かった。
患者数や診療単価の増加によって附属病院の収入は伸びたものの、医薬品・診療材料の価格上昇、人件費や光熱費の増加がそれを上回った。高度医療と地域医療を支える国立大学病院の経営悪化が、大学全体の財務を圧迫している。
国立大学85法人のうち12法人が赤字 東京大学も該当
文部科学省が9月11日に明らかにした国立大学85法人の2025年度決算では、東京大学や東京科学大学など12法人が、損益計算書上で赤字となった。
単純計算すると、全法人の約14%が赤字だったことになる。
国立大学法人は教育・研究だけでなく、附属病院の診療、先端医療の開発、医師の養成、地域への医療人材供給なども担う。特に附属病院を運営する大学では、病院部門の収支が法人全体の決算に大きく影響する。
今回の赤字法人にも、医療機能を持つ大規模大学が含まれた。
患者数が増えても利益が残らない 医薬品・人件費が上昇
大学病院では患者数や診療単価が伸び、診療収入そのものは増加した。しかし、物価高騰に伴う医薬品や診療材料、医療機器、電気・ガスなどの経費増加が重くのしかかった。
さらに、医師や看護師をはじめとする医療従事者の確保には、人件費の引き上げや勤務環境の改善が欠かせない。収入を増やしても、それ以上のペースで支出が膨らむ構造になっている。
国立大学病院長会議によると、全国44の国立大学病院の2025年度決算速報では、経常損益が総額244億円の赤字となった。前年度より赤字幅は縮小したものの、依然として厳しい経営状況が続いている。
「大学の赤字」と「資金不足」は同じではない
今回の数字を見る際に注意したいのは、損益計算書上の赤字が、直ちに大学の資金枯渇や経営破綻を意味するわけではない点だ。
文部科学省は、12法人が赤字になった一方で、これらの大学で直ちに資金ショートが生じている状況ではないと説明している。
国立大学法人の決算には、減価償却や施設・設備の会計処理など、民間企業とは異なる要素も含まれる。そのため、赤字額だけで大学の経営状態を判断することはできない。
ただし、物価や人件費の上昇が続けば、手元資金の減少や設備投資の先送りにつながる可能性がある。単年度の会計処理だけでなく、現金収支や資金残高の推移を確認する必要がある。
病院赤字が教育・研究を圧迫する恐れ
より深刻なのは、附属病院の赤字を補うため、大学本体の資金が使われる可能性だ。
病院経営への支援が長期化すれば、研究機器の更新、研究者の採用、施設の修繕、学生支援などに回せる財源が細る。診療現場の問題が、大学の本来機能である教育と研究に波及しかねない。
一方で、国立大学病院は採算性だけでは測れない役割を担う。高度・先進医療や難病治療、医師の教育、災害時医療などは、必要性が高くても十分な収益を確保しにくい。
病院単独の経営努力だけで解決を求めれば、採算性の低い医療の縮小や、医療従事者の負担増加を招く恐れもある。
【編集部の考察】経営努力だけで解決できる段階なのか
今回の決算は、一部大学の経営判断だけではなく、国立大学病院を取り巻く構造的な問題を示している。
診療報酬は公的に定められているため、大学病院が薬品費や光熱費の上昇分を自由に価格へ転嫁することはできない。一方、救急医療や高度医療、若手医師の育成といった公的役割を簡単に縮小することも難しい。
大学側に業務効率化や調達方法の見直しを求めることは必要だ。ただし、それだけで物価・賃金・医療材料費の継続的な上昇を吸収できるかは疑問が残る。
国は大学ごとの赤字額を示すだけでなく、病院部門から大学本体への資金負担がどれだけ発生しているのか、教育・研究費や設備更新にどのような影響が出ているのかを継続的に公表する必要がある。
国立大学病院を社会インフラとして維持するのであれば、診療報酬や運営費交付金、設備整備費を含めた支援策を一体的に検討すべき局面に入っている。
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週刊TAKAPI編集部:黒木
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