農業実習中に男子生徒死亡 三本木農業高の牛舎事故、遺族が青森県など提訴 民事裁判始まる

青森県十和田市の県立三本木農業高校(現・三本木農業恵拓高校)の牛舎で、農業実習中だった男子生徒が頭部に重傷を負い、その後死亡した事故を巡り、遺族が青森県と当時の実習助手だった男性に損害賠償を求めた民事裁判が青森地裁で始まった。

事故から約5年。刑事事件では当時の実習助手が不起訴となった一方、県教育委員会が設置した事故調査委員会は、学校の「組織的な安全対策の不十分さ」を事故発生の最大の要因として指摘している。

民事裁判では、学校側の安全管理や実習助手の行為について、法的な責任が認められるのかが改めて問われることになる。

2021年、牛舎で実習中に事故

事故が起きたのは2021年12月27日。

当時高校2年生だった水野歩夢さんは、三本木農業高校の肉牛舎で実習中、頭部に重傷を負った。

訴状などに基づく報道によると、実習中に牛が興奮した際、当時の実習助手が農業用フォークを振り下ろし、水野さんの頭部に刺さったと遺族側は主張している。

水野さんは事故後、意識が戻らない状態が続き、2024年3月、19歳で亡くなった。

遺族は、実習助手による危険な行為や、学校側の危機管理体制の不備などが事故につながったとして、県などの責任を追及している。

事故調査委「組織的な安全対策の不十分さ」

事故を受け、青森県教育委員会は外部の専門家らによる事故調査委員会を設置した。

県教委によると、調査委員会は「実習中の事故を防止できなかった学校の管理上の問題」を解明し、再発防止につなげることを目的として調査を実施。

2023年10月にまとめられた最終報告では、学校における組織的な安全対策が十分ではなかったことが、事故発生の最大の要因だったと指摘された。

具体的には、牛の飼養管理や安全対策に関するマニュアルが存在していなかったことや、教職員の危機管理に対する意識が十分高まっていなかったことなどが問題点として挙げられた。

また、実習助手が農具を振り下ろして牛をたたいた行為について、調査委員会は「極めて危険で不適切」と評価した。

一方で、報告書は水野さんが負傷した際の具体的な状況について、断定には至らなかったとしている。

22項目の再発防止策を提言

事故調査委員会は、同様の事故を防ぐため22項目の再発防止策を示した。

牛の状態について教職員間で情報共有することや、牛の除角、ヘルメットなど保護具の着用、農具の適正使用、実習中の緊急時対応マニュアルの作成・運用などが盛り込まれた。

農業高校では、生徒が大型の家畜や農業機械などを扱う実習も行われる。

教育活動として実習を実施する以上、学校側にどこまで危険を予測し、生徒の安全を確保する体制が求められるのか。この事故は学校現場に重い課題を突きつけた。

刑事事件では元実習助手を不起訴

事故を巡っては、当時の実習助手だった男性が業務上過失傷害の疑いで書類送検された。

しかし、検察は2024年2月、男性を不起訴とした。

刑事責任については不起訴となったものの、今回の民事裁判では別の観点から、県や元実習助手に損害賠償責任があるかどうかが審理される。

刑事事件で不起訴になったことが、そのまま民事上の責任がないことを意味するわけではない。

遺族が青森県などを提訴

水野さんの両親は2025年6月、学校の設置者である青森県と当時の実習助手を相手取り、青森地裁に損害賠償を求める訴えを起こした。

2026年9月11日には、この訴訟の民事裁判が行われた。

最新の報道では、次回となる12月の裁判で判決が言い渡される予定とされている。

事故発生から約5年。

県教育委員会自身が設置した事故調査委員会が「組織的な安全対策の不十分さ」を指摘した事故について、司法が学校側や当時の実習助手の法的責任をどのように判断するのかが焦点となる。

週刊TAKAPIでは、今後の裁判の動きを引き続き確認する。


編集部まとめ

Q1 三本木農業高校で何があった?

2021年12月27日、青森県十和田市の県立三本木農業高校の肉牛舎で、農業実習中だった当時高校2年の男子生徒が頭部に重傷を負う事故が発生しました。

Q2 男子生徒はその後どうなった?

事故後、意識が戻らない状態が続き、2024年3月に19歳で亡くなりました。

Q3 事故調査委員会は何を問題視した?

青森県教育委員会が設置した事故調査委員会は、組織的な安全対策の不十分さを事故発生の最大の要因と指摘しました。安全対策に関するマニュアルがなかったことや、危機管理意識などについて問題点を挙げています。

Q4 実習助手は逮捕された?

当時の実習助手は業務上過失傷害の疑いで書類送検されましたが、2024年2月に不起訴となっています。

Q5 不起訴なら今回の裁判でも責任はない?

そうとは限りません。刑事責任と民事上の損害賠償責任は別の制度です。今回の民事訴訟では、県や元実習助手に損害賠償責任があるかが裁判所によって判断されることになります。

Q6 なぜ青森県も訴えられている?

三本木農業高校が県立高校であり、遺族側が学校の安全管理体制にも問題があったと主張しているためです。県側に法的責任があるかどうかは裁判で審理されます。

Q7 今後の裁判は?

2026年9月11日に民事裁判が行われ、最新報道では次回となる12月の裁判で判決が言い渡される予定です。

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