愛知県の住宅地、東三河だけ下落 新城市は県内最大のマイナス2.2%、なぜ地価上昇から取り残されたのか

愛知県が9月16日に公表した基準地価で、県全体の地価は全用途平均で6年連続の上昇となった。

住宅地は県平均で1.3%上昇。名古屋市では2.7%上昇した一方、東三河地域は0.2%下落し、県内の地域別区分で唯一マイナスとなった。

市町村別では、新城市の住宅地が2.2%下落。愛知県内で最大の下落率を記録した。商業地でも田原市が2.7%下落、新城市が2.1%下落しており、名古屋圏との地価格差が鮮明になっている。

なぜ、愛知県全体の地価が上昇するなかで、東三河だけが下落したのか。人口動態や住宅需要、交通利便性などから考える。


愛知県の基準地価、住宅地・商業地・工業地がそろって上昇

今回の調査では、愛知県全体で住宅地、商業地、工業地のすべてが上昇した。主な平均変動率は次の通り。

住宅地:前年比1.3%上昇
商業地:前年比2.5%上昇
工業地:前年比3.2%上昇

名古屋市熱田区では、住宅地が5.7%上昇、商業地が7.8%上昇した。再開発や交通利便性、都心への近さを評価する需要が地価を押し上げたとみられる。

その一方で、東三河の住宅地は0.2%下落。県全体の上昇基調とは異なる動きを示した。


新城市の住宅地は2.2%下落、愛知県内で最大

東三河のなかでも厳しい結果となったのが新城市だ。

新城市の住宅地は前年比で2.2%下落し、県内市町村で最大の下落率となった。商業地も2.1%下落している。

田原市でも商業地が2.7%下落した。住宅だけでなく、店舗や事業所などに使われる土地でも需要の弱さが表れている。

ただし、東三河全域の土地が一律に下落しているわけではない。豊橋駅周辺や利便性の高い住宅地など、一定の需要が見込まれる場所と、郊外・中山間地域との二極化が進んでいる可能性がある。


なぜ東三河の住宅地だけ下落したのか

人口減少が住宅需要を押し下げている

最も大きな要因として考えられるのが、人口減少と高齢化だ。

住宅地の価格は、最終的には「その地域に住みたい人がどれだけいるか」に左右される。人口や世帯数が減り、住宅を購入する中心世代が少なくなれば、土地を求める人も減少する。

とりわけ新城市は、市街地だけでなく広い中山間地域を抱えている。若年層の転出や高齢化が進む地域では、相続した家や土地が売却されても買い手が見つかりにくい。

供給される土地に対して需要が不足すれば、価格には下落圧力がかかる。


名古屋通勤圏としての距離が住宅需要を左右する

名古屋市周辺や西三河では、鉄道や高速道路を利用した通勤需要が地価を支えている。

名古屋市中心部の住宅価格が上昇すると、購入者が春日井市、日進市、長久手市、刈谷市、安城市などへ流れる。こうした地域では、名古屋市や西三河の主要企業へ通勤できることが住宅購入の判断材料になる。

一方、東三河は名古屋市から距離がある。豊橋駅周辺などを除けば、名古屋圏の住宅価格上昇がそのまま波及しにくい。

つまり、愛知県全体が上昇しているように見えても、実際には名古屋市とその通勤圏が平均値を押し上げている面がある。


新城市では車への依存度が高い

新城市では、日常生活に自動車が欠かせない地域が少なくない。

土地の価格が比較的安くても、駅や商業施設、医療機関、学校まで距離がある場合、購入希望者は車の維持費や将来の移動手段まで考えなければならない。

特に高齢になって運転できなくなった場合の生活を考えると、駅や商業施設に近い住宅地を選ぶ動きが強まりやすい。人口減少地域では、土地の広さや安さだけでは住宅需要を呼び込みにくくなっている。


建築費の上昇で「土地が安くても家を建てにくい」

近年は、資材価格や人件費の上昇によって住宅建築費が高止まりしている。

土地価格が安い東三河でも、建物本体や外構、造成、上下水道の接続などにかかる費用は大きく下がらない。土地代を抑えられても、住宅取得の総額が想定以上に膨らむことがある。

その結果、新築戸建ての購入を見送ったり、中古住宅や賃貸住宅を選んだりする世帯が増えれば、土地の需要は弱くなる。


郊外では土地の供給余力が大きい

名古屋市内のように利用できる土地が限られている地域では、希少性が地価を押し上げる。

これに対し、東三河の郊外には比較的広い土地が残る。既存住宅の売却、相続した土地、空き家の増加などによって、購入需要以上に物件が供給される地域も考えられる。

土地が不足している都市部と、土地の選択肢が多い郊外では、同じ愛知県内でも価格の動きは大きく異なる。


商業地も下落する新城・田原、地域経済の変化が影響か

新城市と田原市では、商業地の下落も目立った。

商業地の価格は、店舗や事務所を出した場合にどれだけの収益を期待できるかによって左右される。人口減少に加え、郊外型商業施設やインターネット通販への消費流出が進めば、既存市街地への出店需要は弱まる。

田原市には農業や臨海部の工業という強い産業基盤があるが、それが市内商業地全体の需要増加に直結するとは限らない。

新城市も観光や製造業などの地域資源を持つ一方、日常的な買い物需要や新規出店需要をどこまで確保できるかが課題となる。


編集部の考察――「愛知県全体が上昇」という数字だけでは実態を見誤る

今回の結果から見えるのは、単純な「名古屋対地方」ではなく、雇用、交通、人口が集まる地域と、それ以外の地域との格差だ。

名古屋市では、住宅地や商業地の希少性、再開発、交通利便性が地価を押し上げている。西三河でも、自動車産業を中心とした雇用や所得が住宅需要を下支えする。

これに対して東三河では、豊橋市を中心とする独立した生活・経済圏が形成されているものの、名古屋圏ほど人口や投資を吸収する力は強くない。新城市や田原市のように市域が広い自治体では、中心部と周辺部の差も表面化しやすい。

ただし、地価の下落を一概に「地域の衰退」と決めつけるべきではない。

住宅取得を考える人にとっては、土地価格が比較的安いことは利点になる。リモートワーク、移住支援、子育て環境、自然の近さなどを住宅需要につなげられれば、下落傾向を緩和できる可能性もある。

重要なのは、土地の安さだけを売りにするのではなく、公共交通、医療、買い物、教育、通信環境を含めた「暮らしやすさ」をどう示すかだろう。


東三河の地価は今後どうなるのか

今後の地価を左右するのは、人口減少だけではない。

道路整備や企業進出、駅周辺の再開発、住宅団地の造成、移住施策などによって、特定地点の需要が高まる可能性はある。反対に、生活サービスの縮小や空き家の増加が進めば、郊外を中心に下落が続くことも考えられる。

東三河では、地域全体の平均値だけでなく、駅に近いか、災害リスクはどうか、生活施設が維持されるかといった地点ごとの条件が、これまで以上に重要になる。

愛知県の地価上昇が続いても、その恩恵が県内全域へ均等に広がるわけではない。今回の基準地価は、県内で進む住宅需要の二極化を改めて示した結果といえそうだ。


基準地価とは何ですか

都道府県が毎年7月1日時点の土地価格を調査し、公表する指標です。土地取引の目安や公共事業における用地取得価格の参考などに使われます。

地価が下落すると固定資産税もすぐに下がりますか

基準地価と固定資産税評価額は別の制度です。基準地価が下落しても、固定資産税が直ちに同じ割合で下がるわけではありません。

東三河のすべての住宅地が値下がりしたのですか

違います。東三河の平均変動率が0.2%の下落だったという意味です。交通利便性や周辺環境などによって、上昇した地点、横ばいの地点、下落した地点があります。

地価が下がった地域は住宅を買う好機ですか

取得価格を抑えられる可能性はありますが、将来の売却しやすさ、公共交通、医療、買い物環境、災害リスクなども確認する必要があります。価格だけで判断するのは注意が必要です。

公示地価と基準地価の違いは何ですか

公示地価は国が毎年1月1日時点、基準地価は都道府県が毎年7月1日時点の価格を調査します。調査地点や根拠法令は異なりますが、いずれも一般の土地取引における重要な参考指標です。


※本記事は公開されている企業情報、報道内容、地域特性、市場動向などをもとに編集部が独自に考察した内容です。企業や関係者が公表している出店理由・経営方針を断定するものではなく、一部に編集部の見解や推測が含まれます。最新かつ正確な情報は、各企業・自治体の公式発表をご確認ください。

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週刊TAKAPI編集部:黒木

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