愛知県蒲郡市の市立小中学校では、令和5年度から令和7年度までの3年間、いじめ防止対策推進法上の「重大事態」として取り扱った事案が0件だったことが、週刊TAKAPIの独自取材で分かった。
週刊TAKAPIは蒲郡市教育委員会に対し、重大事態の件数、学校から教育委員会への報告、重大事態としての判断、調査開始までの流れ、スクールカウンセラー(SC)とスクールソーシャルワーカー(SSW)の配置や支援状況など18項目を書面で取材した。
市教委は、重大な被害の疑いや事故については学校から「その日のうち」に報告を受け、重大事態に該当するかどうかを「1週間以内」に判断する運用を明らかにした。
一方、直近3年間に重大事態として取り扱った実例がないため、調査委員会へ連絡してから実際に調査が始まるまでにどの程度時間を要するかについては「わからない部分が多い」と回答した。
日常的な相談支援では、SCを各中学校区に1人ずつ計7人配置。SSWは令和5、6年度の1人から令和7年度は2人に増員している。一部の学校からは、SCの「相談日数を増やしてほしい」との要望も出ている。
令和5~7年度 重大事態は3年連続0件
市教委によると、市内小中学校で重大事態として取り扱った件数は、
令和5年度 0件
令和6年度 0件
令和7年度 0件
だった。
生命、心身または財産に重大な被害が生じた疑いのある事案や、相当期間にわたり学校を欠席することを余儀なくされた疑いのある事案について、重大事態として取り扱ったケースはなかった。
児童生徒本人または保護者から重大事態に該当するとの申し立てを受け、重大事態として取り扱ったケースについても、市教委は「ありません」と回答している。
このため、直近3年間には、学校が事案を把握してから教育委員会への報告、市長への報告、調査開始までに実際に何日を要したかという実績値はない。
重大な被害の疑いは「その日のうち」に報告
重大事態として扱った事案は0件だったが、市教委は重大な被害の疑いや事故が生じた場合の初動について、具体的な時間軸を示した。
週刊TAKAPIが、市の基本方針で「直ちに」としている報告を実務上どの程度の期間として運用しているのか尋ねたところ、市教委は、
「1日以内に報告、1週間以内に判断」
と回答した。
さらに、
「重大事態にかかわらず、重大な被害の疑いや事故の報告は、その日のうちに報告していただいています」
としている。
学校で重大な被害の疑いや事故を把握した場合は当日中に教育委員会へ報告し、重大事態に該当するかについては1週間以内に判断する運用だという。
30日以上判断に要した事案は「なし」
学校側の把握から重大事態としての判断まで30日以上を要した事案があるかについて、市教委は「ありません」と回答した。
児童生徒本人や保護者から重大事態に該当するとの申し立てがあった後、重大事態として扱うまで一定期間を要した事案についても「ありません」とした。
ただし、直近3年間に重大事態として取り扱った事案そのものがないため、実際の重大事態で判断に何日を要したかを示す実績ではない。
市教委「迅速に対応する体制はできている」
現在の重大事態への対応体制について、市教委は、
「これまで重大事態としてとりあつかう事案がなく、調査委員会による調査日程の調節がスムーズにできるかなど、わからないことはありますが、迅速に対応する体制はできています」
と回答した。
一方、十分な体制であると評価する際の具体的な指標や数値については「ありません」としている。
市教委は初動について一定の時間軸を設けているものの、重大事態を実際に経験した上で調査開始までを検証した実績はない。
調査開始までの時間「わからない部分が多い」
市教委が課題として挙げたのは、重大事態と判断した後の調査だった。
週刊TAKAPIが、現在の体制で具体的に課題と考えている点を尋ねると、
「調査委員会へ連絡してから調査が始まるまでの待ち時間など、わからない部分が多い点が課題だととらえています」
と回答した。
重大事態として判断するまでについては「1週間以内」とする一方、調査委員会への連絡後、委員の日程調整などを経て実際の調査開始まで何日かかるかについては、直近3年間に実例がなく、現時点では分かっていない。
スクールカウンセラーは7人 各中学校区に1人
市教委によると、SCは令和5年度から令和7年度まで、いずれも7人。
各中学校区に1人ずつ配置している。
相談を希望した場合について、市教委は、
「保護者の希望日時が空いていれば、すぐに相談していただけます」
と回答した。
希望日にほかの相談が入っている場合は次の希望日時まで待つ必要があり、午後5時以降などSCの勤務時間外を希望した場合も、別の日程で予約してもらうとしている。
学校から「相談日数を増やしてほしい」
SCを各中学校区に配置している一方、学校現場からは相談機会をさらに増やしてほしいとの要望も出ている。
市教委は、
「SCについては、相談日数を増やしてほしいと希望する学校があります」
と回答した。
SCが配置されていないという状況ではなく、一部の学校では、現在より相談できる日数を増やすことを希望している。
市教委は、SC・SSWの配置や活用について十分な体制と評価するための具体的な数値指標は「ありません」としている。
SSWは1人から2人へ増員
家庭環境や福祉面での支援に関わるSSWについては、令和5年度と令和6年度は1人、令和7年度は2人となった。
市教委によると、SSW1人当たりの担当校数は10校。
依頼件数は19件で、対象は19家庭。支援への介入は186件と回答した。
市教委は今後について、
「SSWの存在や役割を生徒・保護者に広く周知し、家庭環境に不安がある児童・生徒と一人でも多くつながりをもっていく必要があると考えています」
としている。
初動ルールを設定、日常の支援も継続
蒲郡市では令和5~7年度、いじめ重大事態として取り扱った事案は3年連続で0件だった。
一方、市教委は重大な被害の疑いや事故について当日中に報告を受け、重大事態に該当するかを1週間以内に判断する運用を設けている。
日常の相談支援ではSCを各中学校区に配置し、SSWも令和7年度から2人体制とした。
その一方で、市教委は、実際の重大事態が発生した際の調査開始までの時間には分からない部分があることや、一部の学校からSCの相談日数増を求める声があることも明らかにしている。
編集部まとめ
蒲郡市では令和5~7年度、いじめ重大事態は3年連続0件だった。
市教委は重大な被害の疑いや事故について当日中の報告、1週間以内の判断を運用する一方、学校からはSCの相談日数を増やしてほしいとの要望も出ている。
SSWは令和7年度から2人体制となり、市教委は児童生徒や保護者への周知を進めるとしている。
週刊TAKAPI編集部/成田
特記事項
本稿は、週刊TAKAPIが蒲郡市教育委員会に対して実施した18項目の書面取材への回答を基に構成しています。
令和5~7年度に「いじめ重大事態として取り扱った事案が0件」だったことは、市内でいじめ、不登校、児童生徒への被害、家庭環境上の問題や相談そのものがなかったことを意味しません。
「1日以内に報告、1週間以内に判断」は蒲郡市教育委員会が説明した実務上の運用であり、全国一律の法定期限を示すものではありません。
SCについて市教委は「勤務日数約60日、対応件数約150件(学校により異なる)」と回答していますが、約150件の集計単位は今回の回答では明確になっていないため、本文では主要な評価材料として使用していません。
SSWについても「勤務日数約200日、対応件数約500件」との回答がありますが、「支援への介入186件」との集計範囲の違いが明確でないため、本文では確定している依頼19件・19家庭、支援介入186件を中心に記載しました。
重大事態が3年間0件だったことと、SC・SSWによる相談・支援との因果関係は確認されていません。
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