豊橋市の財務事務をめぐり、「地域型保育給付費の算定誤りによる過払い」と「少額随意契約における不適切な事務処理」の2件が、内部統制上の「運用上の重大な不備」と判断されていたことが分かった。
週刊TAKAPIが令和7年度の内部統制評価報告書に対する監査委員の審査意見と、前年度の内部統制関係資料を確認した。
監査委員は令和7年度について、評価手続と評価結果に係る記載を「相当」としたうえで、付記意見で「前年度に引き続き内部統制が有効に運用されていないと判断されている」と指摘している。
前年度の資料をさらに遡ると、令和6年度には制度リスクで6件、個別リスクで21件の「運用上の不備」が確認されていた。
そこには、保育・給付事務における過大・過少な支給や、契約手続き、積算などをめぐる複数の不備も含まれる。
市は当時、「複数人による確認」「チェックリストの作成・改良」「確認体制の強化」などを是正策として掲げていた。
それでも翌年度、なぜ保育給付と契約で「重大な不備」が発生したのか。
「重大な不備」2件 保育給付費の過払いと少額随意契約
2026年8月24日付の「令和7年度豊橋市内部統制評価報告書に関する審査意見」によると、監査委員が確認した運用上の重大な不備は次の2件だ。
①地域型保育給付費の算定誤りによる過払い
②少額随意契約における不適切な事務処理
監査委員は、関係部局などから説明を聴取するとともに、その他の監査などで得られた結果も活用。評価手続や、不備を「重大な不備」と判断したことが適切だったかを審査した。
その結果、「評価手続及び評価結果に係る記載は相当である」としている。
ここでいう「重大な不備」は、単なる事務ミスをすべて指すものではない。
豊橋市は内部統制資料で、事務の管理・執行が法令に適合していない、または適正に行われていないことにより、市や市民に「大きな経済的・社会的不利益」を生じさせる可能性が高いもの、または実際に生じさせたものと定義している。
監査委員「前年度に引き続き」
今回、特に注目されるのが監査委員による付記意見だ。
監査委員は、
「当年度は、内部統制の運用開始から6年目であったが、前年度に引き続き内部統制が有効に運用されていないと判断されている」
と指摘した。
そのうえで、不備があった事例について「要因や再発防止策の全庁共有の徹底」を求め、内部統制の目的、基本方針、運用方法についても改めて全庁に周知するよう求めている。
つまり、「2年連続」は週刊TAKAPI独自の評価ではない。
監査委員自身が「前年度に引き続き」と明記している。
前年度は「運用上の不備」27件
では、前年には何が起きていたのか。
令和6年度の内部統制資料を確認すると、全庁的な内部統制については「有効に整備され、かつ、運用されている」と評価された。
一方、実際の個々の業務をみる「業務レベルの内部統制」では状況が異なる。
制度リスクでは整備上の不備は0件だったものの、運用上の不備が6件。
個別リスクでは148のリスクが設定され、整備上の不備は0件だった一方、運用上の不備が21件確認された。
合わせて27件になる。
個別リスク21件の内訳は、収入4件、支出12件、契約5件。
このうち1件が「重大な不備」と判断された。
令和6年度の重大な不備はNHK受信契約
令和6年度に重大な不備とされたのは、NHK受信契約をめぐる問題だった。
防災危機管理課、財務部、健康部、環境部、上下水道局、消防本部、教育部、議会局で、NHK放送を受信できるテレビまたはカーナビゲーションシステムを設置していたにもかかわらず、受信契約を締結していなかった。
これを受け、市はカーナビゲーションシステム付き車両について原則としてテレビアンテナを取り外すほか、受信設備の設置状況を確認する際には複数の職員で確認するなど、管理体制を強化するとした。
市は最終的に令和6年度について、
「本市の財務に関する事務に係る内部統制は、評価対象期間において有効に運用されていない」
と判断している。
そして翌年度も同じ結論となった。
前年度にもあった「保育」「給付」の不備
令和7年度に重大な不備となった一つが、「地域型保育給付費の算定誤りによる過払い」だ。
前年度の内部統制資料を確認すると、保育・給付・補助金関係ですでに複数の不備が確認されていた。
例えば、届出保育施設の利用者3人について、確認不足から施設等利用費の償還払いを認定期間終了後の期間まで含めた金額で支払っていた。
市が示した是正事項は「複数人による確認を徹底」だった。
また、豊橋市法人保育所等地域子ども・子育て支援事業費補助金では、要綱改正による補助単価の変更を反映していない算出調書を配布し、そのまま受け付けた結果、補助金を過少に交付していた。
潜在保育士本格復職前短期雇用費補助金でも、交付要綱の確認不足による算定ミスで過大交付が発生している。
もちろん、これら令和6年度の不備と、令和7年度の地域型保育給付費の過払いが同一原因だったと現段階で断定することはできない。
しかし、前年にも保育や給付、補助金の算定・確認に関係する不備が複数確認されていたことは、市の資料から確認できる。
契約でも前年から不備
もう一つの重大な不備は、「少額随意契約における不適切な事務処理」だ。
契約関係も前年度から複数の問題が確認されていた。
令和6年度の制度リスクでは、契約事務に関係する運用上の不備が3件あった。
「明海大橋(仮称)橋梁上部工事」では、予定価格の積算に誤りがある状態で契約を締結したため、契約解除となった。
物品修繕では、施設設備の修繕と同じ基準だと誤って解釈。本来は契約検査課に契約事務を依頼すべきところ、原課で見積合わせを行い業者を決定したため、再度見積合わせを行うことになった。
さらに、予算額50万円を超える委託契約について、必要な委託審査会部会の審査を経ずに受託者を決定した事例もあった。
個別リスクでも契約分野で5件の運用上の不備が確認され、道路、舗装、配水管、公園遊具、浚渫などの工事で、積算や公告文書などの誤りによる入札公告の取り下げが発生している。
市はこうした不備に対し、チェックリストの作成・改良、複数人による確認、複数課によるチェック、検算時のエラーチェックなどを是正策として掲げていた。
「複数人で確認」それでも翌年度に重大な不備
令和6年度資料を通して目立つのが、「複数人による確認」という再発防止策だ。
給付、補助金、契約など複数の不備に対して、確認の徹底やチェックリストの活用などが是正事項として繰り返し記載されている。
さらに市は内部統制について、過去に発生した事例や監査指摘事項などを踏まえ、各部署が所管する財務事務全体を対象にリスクを識別すると説明している。
各課による自己評価だけではない。
内部統制推進担当や評価担当がヒアリングなどを行い、リスクへの対応策が実際に実施されているか確認する仕組みも設けられている。
それでも令和7年度、保育給付費の過払いと少額随意契約の不適切な事務処理が「重大な不備」と判断された。
前年の不備を受けて設定した再発防止策は、実際の現場でどこまで機能していたのか。
ここが今回の問題を検証するうえで重要になる。
過払いはいくらだったのか
一方、監査委員の審査意見だけでは分からないことも多い。
地域型保育給付費については、「算定誤りによる過払い」とされているものの、公表された審査意見からは、過払いの総額、対象期間、対象施設数、具体的にどの算定項目を誤ったのか、過払い金の返還・回収状況までは確認できない。
少額随意契約についても、「不適切な事務処理」とされているが、審査意見だけでは担当部署、対象となった契約件数、契約総額、契約相手方、具体的にどの事務処理が不適切だったのかは明らかではない。
重大な不備がどの段階で発覚したのか、事前にリスクとして認識されていたのかも検証する必要がある。
週刊TAKAPIでは、公表資料だけでは明らかになっていない点について豊橋市への取材を進める。
問われるのは「ミスがあったか」だけではない
内部統制は、あらゆるミスを完全に防ぐ制度ではない。
豊橋市自身も、内部統制について「全てのリスクを防止」したり、リスクの顕在化をすべて適時に発見したりできない可能性があると説明している。
だからこそ、今回問われるのは「ミスが発生した」という事実だけではない。
令和6年度には27件の運用上の不備が把握され、重大な不備も1件あった。
市はその都度、確認の徹底やチェックリスト、管理体制の強化などを掲げた。
しかし令和7年度には、保育給付費と少額随意契約で2件の重大な不備が確認され、監査委員から再び「内部統制が有効に運用されていない」と指摘された。
前年の不備から何を改善し、それでも何が機能しなかったのか。
2年連続という結果を検証するには、個々の担当者のミスだけでなく、リスクを把握し、確認し、是正策を全庁で共有する仕組みそのものが実際にどう運用されていたのかを見る必要がある。
この記事のポイント
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