《独自検証》東三河の介護は持続できるか 事業所の半数が「職員不足」 東栄町・豊根村で浮かんだ数字

東三河8市町村の介護を支える現場で、人手不足への懸念が広がっている。

東三河広域連合が実施した「高齢者等実態把握調査・介護保険事業者実態調査」で、回答した介護事業所の50.1%が「職員が不足していると感じている」と答えた。

さらに18.2%は、現在は不足していないものの「今後1年以内に不足する見込みがある」と回答した。

単純に合計すれば68.3%。

ただし、この数字だけをもって「東三河の介護が崩壊している」と結論づけることはできない。

調査が示しているのは、人員配置基準を満たしていない事業所の割合ではなく、あくまで事業者が感じている「不足感」と今後の見通しだからだ。

それでも資料を詳しく見ていくと、見過ごせない地域差が浮かび上がる。

東栄町77.8%、豊根村80%

週刊TAKAPIの調べによると、「職員が不足している」と回答した割合は、豊橋市46.0%、豊川市51.7%、蒲郡市55.8%、新城市44.9%、田原市53.8%だった。

北設楽郡では設楽町62.5%、東栄町77.8%、豊根村80.0%となっている。

特に東栄町では、「現在不足している」の77.8%に加えて11.1%が「今後1年以内に不足する見込み」と回答した。

合わせれば88.9%となる。

ただ、ここには重要な注意点がある。

回答事業所数は豊橋市187、豊川市149だったのに対し、設楽町8、東栄町9、豊根村5にとどまる。

母数が非常に小さいため、「東栄町の介護事業所の約9割が不足する」と地域全体へ一般化することは適切ではない。

それでも、回答した事業所の中でこれだけ高い割合が人材不足を訴えている事実は、北設楽郡の介護サービスが今後も維持できるのかを検証する材料になる。

利用者側からも気になる数字

問題は働く側だけではない。

要介護・要支援認定者に「現時点で施設への入所・入居を検討しているか」と尋ねたところ、東三河全体では22.0%が「すでに入所・入居の申し込みをしている」と回答した。

東栄町では35.1%。

豊根村では38.5%だった。

こちらも東栄町の回答者は74人、豊根村は26人と少なく、地域全体の実態をそのまま表しているとは断定できない。

だが、人材不足感の高かった地域と重なる。

さらに気になる数字がある。

2025年7月に介護保険サービスを「利用していない」と回答した要介護等認定者は、東三河全体では35.4%。

新城市では41.3%、東栄町43.2%、豊根村では65.4%だった。

ここも注意が必要だ。

「利用していない」ことと「利用したくても利用できない」ことは全く違う。

調査では、サービスを利用していない理由として「現状では、サービスを利用するほどの状態ではない」が34.2%で最も多く、「本人にサービス利用の希望がない」も16.3%あった。

したがって、豊根村の65.4%という数字だけから「介護サービスが不足している」と結論づけることはできない。

むしろ問うべきなのは、なぜ豊根村では未利用という回答がこれほど高かったのかという点だ。

「家で介護」も簡単ではない

一方、高齢者側からは在宅サービスの充実を求める声が強い。

「高齢社会において、さらに充実させた方がよいと考えるもの」では、「高齢者の在宅での生活を支援するサービスの充実」が最も高い2.6点となった。

ところが、家庭で介護を担う人たちの数字を見ると、その生活も決して余裕があるとは言い難い。

介護上の負担や悩みを感じている中心介護者では、

「精神的負担が大きい」63.5%。

「身体的負担が大きい」39.3%。

「自分以外に介護できる人がいない」37.4%。

「経済的負担が大きい」25.8%だった。

介護の中心を担う人の年齢も、60代が33.8%で最多。70代20.7%、80歳以上も17.0%だった。

高齢者を高齢の家族が支える「老老介護」につながり得る構造が数字から見える。

半数以上は「将来は施設で」

もう一つ、介護政策を考える上で無視できない変化がある。

要介護認定を受けていない一般高齢者に、将来介護が必要になった際にどこで介護を受けたいか尋ねたところ、「施設」が51.6%、「在宅」が40.5%だった。

前回の2022年度調査では施設46.9%、在宅45.7%。

単純比較では、施設を希望する割合は4.7ポイント上昇した。

そして実際に要介護等認定を受けている人でも38.0%が施設を希望している。

「住み慣れた地域で暮らし続ける」という介護政策と、施設介護を求める住民の意向をどう両立させるのか。

ここにも課題がある。

施設を造ろうとしても「応募なし」

さらに週刊TAKAPIが東三河広域連合の公表資料を調べると、別の事実も確認できた。

広域連合は第9期介護保険事業計画に基づき、豊橋市、豊川市、蒲郡市、田原市の南部圏域で「地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護」を2か所整備する事業者を募集した。

ところが、当初の募集では応募がなかった

広域連合はその後、再公募を実施している。

これは直ちに「施設不足」を意味するものではない。

しかし、施設を利用したいという住民側の需要、人材不足を訴える介護現場、そして施設整備の担い手募集という三つの数字・事実を合わせると、東三河の介護サービスを将来どう維持するのかという問いは避けて通れない。

実は行政も以前から課題としていた

今回の調査で初めて問題が表面化したわけでもない。

東三河広域連合が2024~2026年度を対象に策定した第9期介護保険事業計画では、

「介護人材の確保と定着」

「家族介護者の負担軽減」

そして、

「北部圏域における介護サービスの事業継続支援」

を重点項目に位置付けている。

第8期計画から引き続く重点課題だ。

つまり広域連合自身が、少なくとも計画策定段階から北部圏域の介護サービスを継続することを重要な政策課題として認識していたことになる。

そして2025年の実態調査では、回答した501事業所の半数が現在の職員不足を訴えた。

「介護崩壊」と呼ぶのはまだ早い

では、東三河の介護は「崩壊」に向かっているのか。

現段階でそう断定する根拠はない。

今回確認できた資料だけでは、市町村別の介護職員の絶対数、利用希望者に対するサービス供給量、訪問介護を断った件数、施設の実待機者数、事業所の休廃止件数などが十分に分からないからだ。

一方で、行政自身が「介護人材の確保」「家族介護者の負担軽減」「北部圏域の事業継続」を重点課題としている中、最新調査でも事業者の50.1%が職員不足を回答した。

ここまで数字が揃えば、次に問われるのは「不足していると感じる」で終わらせず、実際にサービス提供へどんな影響が出ているのかだろう。

週刊TAKAPIでは今後、2018年度の介護保険事業広域化以降について、東三河8市町村の介護事業所の開設・廃止・休止状況、施設待機者、介護人材、サービス供給状況などを調査する。

東三河の介護は、これからも8市町村すべてで維持できるのか。

数字の先にある現場を追う必要がある。

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