医療機関の倒産が過去最多59件 クリニック・歯科医院で急増、後継者不足も深刻化 地域医療に迫る危機

2026年1~9月の医療機関倒産が過去最多59件となったことを伝える週刊TAKAPIの報道画像

全国で医療機関の倒産が増加している。

信用調査会社の東京商工リサーチが2026年10月18日に発表した調査によると、2026年1月から9月までに倒産した病院、クリニック、歯科医院などの医療機関は59件に達し、同期間として過去最多を更新した。

前年同期の46件から13件増加し、増加率は28.2%。これまで最多だった2009年の53件も上回った。

特に深刻なのが、地域住民にとって身近なクリニックや歯科医院の経営悪化だ。

物価高騰や人手不足に加え、医師の高齢化に伴う後継者不足も医療機関の存続を脅かしている。

このまま倒産が増え続ければ、住み慣れた地域で医療を受けることが難しくなる可能性もある。

医療機関の倒産は59件 前年から28.2%増加

東京商工リサーチによると、医療機関の倒産件数は、新型コロナウイルス感染拡大期にいったん減少したものの、2024年以降は高い水準で推移している。

2026年1~9月の倒産件数を過去と比較すると、その増加が明確になる。

医療機関の倒産件数の推移

2020年は16件、2021年は19件だったが、2024年には49件へ増加。2025年も46件と高止まりし、2026年は59件に達した。

東京商工リサーチは、現在のペースが続けば年間の倒産件数が70件を超え、2025年の年間67件を上回る可能性があると指摘している。

クリニック29件、歯科医院22件 身近な医療機関ほど苦境に

業態別に見ると、倒産が増加しているのは病院よりもクリニックや歯科医院だ。

医療機関2025年1~9月2026年1~9月
病院9件8件
クリニック18件29件
歯科医院19件22件
合計46件59件

クリニックは前年から11件増加し、同期間の過去最多を更新。歯科医院も3件増加し、過去最多だった2024年と同じ22件となった。

一方、20床以上の入院設備を持つ病院の倒産は8件で、前年より1件減少している。

つまり、今回の倒産増加を押し上げているのは、地域の外来診療を支える比較的小規模な医療機関だといえる。

倒産原因は何か 後継者不足と人手不足が深刻化

後継者難による倒産は14件 前年の約3倍

今回の調査で注目されるのが、後継者不足による倒産の増加だ。

2026年1~9月の「後継者難」倒産は14件で、前年同期の5件から大幅に増加した。

内訳は病院2件、クリニック7件、歯科医院5件。すべての業態で前年を上回っている。

院長が高齢になっても、診療所を引き継ぐ医師が見つからなければ、医療機関の存続は難しくなる。

人手不足による倒産も7件に増加

看護師や歯科衛生士などの人材確保も課題となっている。

人手不足を要因とする医療機関の倒産は、前年同期の4件から7件に増加した。

医療機関は、医師だけでなく看護師、医療事務、歯科衛生士など多くの専門職によって支えられている。

必要な人材を確保できなければ、診療体制の維持そのものが難しくなる。

光熱費・医療材料費の上昇も経営を圧迫

東京商工リサーチは、後継者難や人手不足のほか、光熱費や備品の価格上昇、人口減少による患者数の減少、医療設備の老朽化などを経営上の課題として挙げている。

医療機関では、公的医療保険の対象となる診療の価格が診療報酬制度によって定められており、一般の店舗のように自由に値上げできるわけではない。

そのため、経費が増えても収入に転嫁しにくい構造がある。

倒産の96.6%が破産 再建の難しさも浮き彫りに

2026年1~9月の医療機関倒産59件のうち、57件が破産だった。

全体の96.6%を占めており、事業を再建することの難しさがうかがえる。

医療機関が倒産した場合、患者は別の医療機関を探す必要が生じることがある。

特に、高齢者や慢性疾患で定期的な通院が必要な患者にとって、近隣の診療所がなくなる影響は小さくない。

東京商工リサーチも、医療機関の倒産が患者の受診機会の喪失につながるとして、対策の必要性を指摘している。

愛知県・東三河への影響は 地域医療をどう守るか

豊橋・豊川・蒲郡などでも無関係ではない問題

今回の調査は全国集計であり、愛知県や東三河に限定した倒産件数は示されていない。

そのため、豊橋市、豊川市、蒲郡市、新城市、田原市で医療機関の倒産が増加しているとまでは判断できない。

しかし、医療機関の後継者不足や人材確保は、地域医療を維持するうえで重要な課題だ。

特に、かかりつけ医として長年地域を支えてきた診療所が閉院した場合、患者の通院先や医療サービスの継続に影響する可能性がある。

編集部の考察|医療機関の事業承継が今後の焦点に

今回の調査で見逃せないのは、倒産件数の増加だけではない。

後継者難による倒産が14件に達したことだ。

医療機関の経営問題を考える際には、経営悪化への支援だけでなく、後継者の確保や円滑な事業承継をどう進めるかという視点が必要になる。

また、医療機関の倒産件数だけでは、地域医療の実態を十分に把握できない。

倒産に至らず自主的に閉院した診療所や、医師の引退によって診療を終了した医療機関も含めて調べる必要がある。

週刊TAKAPIでは、東三河5市の医療機関の開設・廃止状況や、医師の高齢化、事業承継支援の実態についても、今後の取材課題としたい。

Q倒産59件には、すべての閉院が含まれていますか?
Aいいえ。今回の調査は、病院・一般診療所・歯科診療所のうち、負債1,000万円以上の倒産を対象としている。

院長の引退などによる自主的な閉院が、すべて含まれているわけではない。

Q医療機関が倒産した場合、診療記録はどうなりますか?
A医療機関には診療録などの保存義務がある。診療を終了する場合でも、法令に沿った記録の保存や適切な管理が必要となる。

患者が転院する場合は、診療情報提供書などについて医療機関に確認することが重要だ。

Q通院しているクリニックが突然閉院したらどうすればよいですか?
Aまず、医療機関の公式案内や掲示などで閉院日、診療情報の引き継ぎ、問い合わせ先を確認する。

継続的な治療や薬の処方が必要な場合は、早めに別の医療機関へ相談したい。

Q愛知県でも医療機関の倒産は増えていますか?
A今回の全国調査だけでは判断できない。愛知県内の倒産件数や、豊橋・豊川など東三河の状況については、地域別データの追加確認が必要だ。

週刊TAKAPI 編集部/黒木

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