教員による児童生徒の盗撮事件が相次いだ名古屋市が、2027年度から一部の市立小中学校への防犯カメラ設置を検討していることが分かった。
CBCテレビが2026年10月21日に報じたところによると、名古屋市教育委員会は設置を希望する学校を対象に、1校あたり500万円を見込んで来年度予算の要求を準備している。
背景にあるのは、2025年に発覚した教員らによる児童の盗撮画像共有事件だ。全国の教員がSNSのグループを通じて画像を共有していた事件では、6人に有罪判決が言い渡されたと報じられている。
名古屋市内では、この事件とは別に校内での盗撮事件も発覚。市教育委員会が2026年3月にまとめた再発防止策では、教員の意識改革や施設点検に加え、防犯カメラの導入についても検討する方針が示されていた。
子どもを守る立場にある教員によって、なぜ盗撮事件が繰り返されたのか。防犯カメラの設置は再発防止につながるのか。学校現場の安全確保とプライバシー保護の両立が問われている。
市内全小中学校にアンケート 複数校が設置を希望
報道によると、名古屋市は2026年、市内の全市立小中学校を対象に防犯カメラの設置に関するアンケートを実施した。
その結果、複数の学校から設置を希望する回答が寄せられたという。
名古屋市教育委員会学校施設課の櫻井英貴課長はCBCテレビの取材に対し、盗撮事件を受けて再発防止策を講じてきたと説明し、来年度から設置を始めるため予算要求の準備を進めていることを明らかにした。
現時点で、設置を希望した学校の具体的な数や、設置するカメラの台数、総事業費などは明らかになっていない。
また、今回の方針は予算要求に向けた検討段階であり、設置が正式に決定したわけではない。
2025年には盗撮などの事案で学校関係者4人を懲戒免職
名古屋市では2025年、児童生徒に対する盗撮などの事件が相次いで発覚した。
市教育委員会が2026年3月に公表した「児童生徒性暴力等の防止等に関する総合的な対策」によると、次の4人が盗撮などの事案を理由に懲戒免職となっている。
2025年3月に逮捕された市立小学校教諭
学校外での事件をきっかけに捜査が進み、児童の着替えを盗撮してSNSに動画を投稿していたことなどが明らかになった。
2025年6月に逮捕された市立小学校主幹教諭
児童の下着を撮影し、加工した画像をSNSに投稿したことなどが問題となった。盗撮画像共有グループの管理者と報じられた人物である。
2025年9月に逮捕された市立小学校教諭
児童の下着を盗撮した事案で逮捕された。校内に盗撮目的のカメラを設置したとされ、市教委が再発防止策を検討している最中に発覚した事件だった。
2025年12月に逮捕された市立中学校の部活動外部顧問
校内の女子トイレ個室内で生徒を盗撮した事案で逮捕され、2026年2月に懲戒免職となった。
4人はいずれも名古屋市立学校の関係者だが、すべてが同一の盗撮画像共有事件に関与したわけではない。
複数の事件が相次いだ事実は、学校現場で盗撮行為をどのように防ぎ、発見するのかという課題を浮き彫りにした。
教員7人が関与した盗撮画像共有事件 学校の信頼を揺るがす
一連の事件の中でも社会的な衝撃が大きかったのは、複数の教員がSNS上で児童の盗撮画像を共有していた事件だ。
名古屋市教育委員会の第三者調査報告書によると、2025年11月までの捜査で、全国5都道県の公立学校教員ら7人が逮捕などされていたことが判明した。
2026年には元教員らに対する裁判が進み、実刑判決も相次いで言い渡された。
教育活動を通じて児童生徒の生活に深く関わる教員が、その立場を悪用して盗撮などに及んだことは、被害に遭った子どもたちだけでなく、学校に通う児童生徒や保護者の信頼を大きく損なうものとなった。
今回の防犯カメラ設置の検討は、こうした事件を受けた施設環境面での再発防止策の一つと位置付けられる。
第三者調査で浮かんだ課題 学校側が把握した17件、教委への報告確認は6件
防犯設備だけでは解決できない課題も明らかになっている。
名古屋市教育委員会が2026年3月23日に公表した第三者調査報告書では、市立学校園などの職員約1万4,000人に情報提供を呼びかけ、寄せられた情報のうち23件を調査した。
その結果、23件について、法令上の児童生徒性暴力等に該当する行為は認められなかった。
一方、過度な身体接触や児童生徒との不適切な関わり方などが指摘され、学校組織の対応にも課題が示された。
特に注目されるのが、学校から教育委員会への情報共有である。
調査対象23件のうち17件は、問題となった行為があったとされる当時、校長ら管理職への報告が行われていた。
しかし、その17件のうち教育委員会事務局への報告が確認できたのは6件にとどまっていた。
第三者委員は、教育委員会への報告がなかった事案のすべてを不適切な対応と判断したわけではない。
それでも、性暴力等が疑われる事案については、初動段階から学校と教育委員会が一体となって対応する必要があると指摘している。
防犯カメラを設置することと、不適切な行為を見逃さない組織をつくることは、別々に考えるべき問題ではない。
週刊TAKAPIは2026年9月21日、この第三者調査報告書について、教員と児童生徒の不適切な関わり方や情報共有の課題を報じている。
防犯カメラは万能ではない 有識者から慎重意見も
防犯カメラの導入には、犯罪抑止や発生後の事実確認につながる効果が期待される。
一方、市教育委員会が公表した再発防止策では、有識者から慎重な意見も示されていた。
具体的には、カメラの設置による児童生徒への心理的影響、撮影できない死角で盗撮などが行われる可能性、費用対効果、プライバシー保護などである。
市教育委員会は、必要最小限の場所に設置することは可能としながらも、設置場所や運用ルールを検討し、児童生徒や保護者らの理解を得る必要があるとの考え方を示している。
特に、撮影した映像を誰が確認するのか、どのくらいの期間保存するのか、目的外の閲覧をどのように防ぐのかは重要な論点となる。
盗撮を防止する目的で導入した設備が、子どものプライバシーを侵害することのないよう、慎重な運用が求められる。
国も防犯カメラ活用を検討 性暴力防止の取り組み広がる
学校や保育施設などでの子どもへの性暴力を防ぐ取り組みは、国レベルでも進められている。
こども家庭庁が公表した「こども性暴力防止法施行ガイドライン」では、施設内の防犯カメラ映像を、被害が疑われる際に保全すべき客観的証拠の一つとして位置付けている。
また、関連する国の検討資料では、防犯カメラの利用にあたり、撮影範囲や映像の保存、閲覧権限などの管理と、子どものプライバシーへの配慮が必要とされている。
防犯カメラは安全確保のための手段であり、設置すること自体が最終的な目的ではない。
Q&A 名古屋市の学校防犯カメラ設置で何が変わる?
問われるのは防犯設備だけではない 子どもを守る学校組織の実効性
学校は本来、子どもたちが安心して学び、生活できる場所でなければならない。
しかし、名古屋市で相次いだ事件では、児童生徒を守るべき立場の学校関係者による盗撮行為が明らかになった。
再発防止のために防犯カメラを設置することは、一つの対策となり得る。
ただし、防犯設備を整備しただけで、教員による不適切な行為がなくなるとは限らない。
不審な行動や児童生徒からの訴えを学校がどのように受け止め、教育委員会がどの段階で関与し、必要に応じて警察などと連携するのか。
そして、被害を受けた子どもが安心して相談し、適切な支援を受けられる仕組みが整っているのか。
今後は、防犯カメラの設置希望校数や総事業費に加え、映像管理の仕組み、保護者との合意形成、設置後の効果検証の方法についても説明が求められる。
子どもたちを守るために、学校は何を変えなければならないのか。
名古屋市の今回の検討は、防犯設備の導入にとどまらず、教育現場の安全管理と信頼回復のあり方が問われる問題でもある。
担当:週刊TAKAPI編集部
資料・報道確認日:2026年10月21日
記事更新日:2026年10月21日
参考資料・関連報道
- 名古屋市教育委員会「児童生徒性暴力等の防止等に関する総合的な対策」
- 名古屋市教育委員会「市立学校園における児童生徒性暴力等に係る調査報告書」
- CBCテレビ・2026年10月21日の報道
- 週刊TAKAPI関連記事「名古屋市立学校の教員調査23件」
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