【岩手】不祥事はいつまで続くのか 教職員13人処分、今度は盛岡市教委で177万円私費払い 問われる信頼回復

盛岡市役所の庁舎を使用した週刊TAKAPI報道画像。盛岡市教育委員会の177万円私費払い問題と岩手県教育委員会の教職員不祥事、信頼回復への課題を検証

岩手県内で、公的機関の職員による不祥事や不適切な事務処理の発覚が続いている。

10月26日、盛岡市は教育委員会事務局の40代係長級職員を停職3カ月の懲戒処分とした。任用した職員6人への報酬支払いを遅らせ、177万円を私費で支払ったほか、源泉徴収票を偽造し、医療機関との業務委託契約に必要な手続きも行っていなかったという。

岩手県教育委員会では、2026年度の教職員の懲戒処分者が10月21日時点で13人に達した。2025年度には6人の教職員が逮捕され、今年度も10月20日時点で3人が逮捕されている。逮捕者と懲戒処分者は重複するため合算できず、今回の盛岡市の職員も県教委の13人には含まれない。

それでも、教育行政に関わる複数の組織で問題が公表され続けている現状を、個別の職員の責任だけで片づけてよいのだろうか。

週刊TAKAPIはこれまで2度にわたり岩手県教育委員会を独自取材し、従来の再発防止策の限界や管理監督責任について回答を得てきた。

県教委は対策を見直し、専門家を交えた研修にも着手している。しかし、信頼回復に必要なのは、対策を実施したという報告だけではない。その後、何が変わったのかを県民が確かめられる説明である。

177万円を私費で支払い、源泉徴収票まで偽造 盛岡市で新たな処分

26日に明らかになった盛岡市の問題では、40代の係長級職員が2025年度に任用した6人について必要な報酬支払い事務を行わず、2025年6月から2026年2月分の報酬に遅延を生じさせた。

職員は延べ10件、総額177万円の報酬相当額を自分の資金から支払っていた。さらに対象者のうち1人に偽造した源泉徴収票を交付していたほか、職員の健康管理に関する医療機関への業務委託契約でも事務処理を怠っていた。

市は上司に当たる50代の課長補佐級職員にも、管理監督責任として文書訓告を行った。

報酬の支払いが遅れたのであれば、本来はその原因を確認し、正式な手続きを進めなければならない。なぜ担当職員は私費での支払いを選び、それが延べ10件になるまで是正されなかったのか。

源泉徴収票の偽造は、単なる支払い遅延とは性質が異なる。医療機関との委託契約の未処理も含め、複数の業務で問題が生じていたことになる。

現時点では、177万円の最終的な精算状況や偽造書類の訂正、未処理の委託契約による実際の影響は確認できていない。

問われるのは職員個人の行為だけではない。通常の事務処理や上司の確認によって、なぜ問題を早期に把握できなかったのか。盛岡市には、停職処分に至った経緯とともに、組織的な管理体制についても説明が求められる。

県教委は「注意喚起だけでは十分でなかった」 本誌への独自回答

岩手県教育委員会の不祥事について、週刊TAKAPIが最初に本格的な検証を行ったのは8月27日だった。

当時、2026年度の懲戒処分者は9人。編集部は県教委に対し、不祥事の原因分析、再発防止策の実効性、性的な非違行為への対策など9項目を質問した。

9月4日に掲載した独自取材記事で、県教委は従来の取り組みについて、服務規律の周知や注意喚起にとどまっていた部分が多く、十分ではなかったとの認識を示した。

県教委は、不祥事を職員個人の規範意識だけの問題とは捉えず、職場でのストレスや孤立などが相互に影響すると分析。犯罪社会学の知見を取り入れた研修や管理職の面談力向上を進める方針も説明した。

ただし、県教委自身が7月15日の記者会見で明らかにしたように、それまでの対策は十分な抑止効果を発揮していなかったという認識が、新たな取り組みの出発点となっている。

行政が自ら過去の対策の不足を認めた以上、次に必要なのは新しい施策の紹介ではなく、その効果を検証することである。

2度目の独自取材では校長の監督責任を追及

週刊TAKAPIは9月25日にも、県立学校の20代女性教職員による18歳未満の相手へのわいせつ事案について、県教委への独自取材結果を報じた。

県教委によると、事案を把握したのは5月中旬。被害関係者からの情報提供を受け、その後の事実確認を経て9月に懲戒免職とした。

県教委は本誌に対し、問題となった行為について児童生徒性暴力等防止法上の「児童生徒性暴力等に該当するものと思われる」と回答している。

同じ学校の校長も戒告処分を受けたが、その理由について県教委は、部下職員への指導監督に適正を欠いていたと説明。一方、校長が具体的に把握すべき事項を把握していなかったという事実を認定したものではないとも回答した。

この説明は、管理監督責任を問う際の判断基準がどのようなものなのか、さらに検証する必要性を示している。

今回の盛岡市の事案でも、上司に文書訓告が行われた。しかし、県立学校の校長に対する戒告と、盛岡市教育委員会事務局の課長補佐級職員に対する文書訓告は、責任主体も措置の性質も異なる。

それぞれの組織が、上司に何を確認する義務があったと判断したのか。その具体的な説明が必要となる。

教職員13人処分 人数だけで「全国最悪」とは言えないが

岩手県教委の懲戒処分者は、8月時点の9人から10月20日に11人、翌21日には13人となった。

10月20日、佐藤一男教育長は県立学校長ら約100人を前に、不祥事の根絶に取り組むよう求めた。その翌日、県教委は16歳未満の少女に対する不同意性交等の罪で起訴された27歳男性教諭を懲戒免職とし、勤務先の校長にも戒告処分を行った。

ただし、問題となった行為は7月に発生したものであり、教育長の発言翌日に新たな事件が起きたわけではない。

人数の評価にも注意が必要だ。県内の公立学校に勤務する本務教職員は約1万1800人規模だが、今回の13人には管理監督責任で処分された職員も含まれる。全国の都道府県と比較するには、対象職員の範囲、同じ年度・期間、処分の種類をそろえる必要がある。

したがって、13人という数字だけで岩手県の不祥事発生率が全国で突出していると断定することはできない。

しかし、単純な人数の比較だけで問題の深刻さが決まるわけでもない。児童生徒への性暴力に関係する事案と、管理監督責任による処分を同じ1人として数えてしまえば、それぞれの性質や影響を見失う。

県教委が示すべきなのは、処分人数の累計だけでなく、どのような問題が、いつ起き、いつ把握され、どの段階で防止できなかったのかという実態である。

10月31日に研修期限 それで信頼は回復するのか

県教委は7月に新たな不祥事防止対策をまとめ、8月下旬から専門家監修の研修動画を学校などに配信した。10月31日までに対象職員が動画を視聴し、グループワークを行うことになっている。

県教委は週刊TAKAPIへの9月の回答で、研修の効果を評価する方法について、受講後のアンケート結果などを踏まえて検討するとの考えを示していた。

10月26日時点で期限までは残り5日となったが、研修の完了率や効果を測る具体的な指標について、最新の確定情報は確認できていない。

研修の開始以前に発生した不祥事が後から処分された場合、その件数をもって新しい対策が失敗したと結論づけることはできない。一方、研修を全員が受講したという結果だけでも、再発防止が実現したとは言えない。

県教委は少なくとも、問題行為の発生時期と発覚・処分の時期を分け、相談や通報を受けた後の対応、管理職による確認状況、研修後に把握された事案を継続的に検証する必要がある。

学校現場に求められているのは、研修を受けたという記録ではなく、児童生徒や保護者が安心して相談でき、不適切な行為を早期に発見できる仕組みである。

県庁、市役所、教育現場 異なる組織で問われる説明責任

岩手県内では、教育関係だけでなく県庁の幹部職員による不適切出張問題も議会で追及されている。

千葉幸也企画理事は公務出張中の予定外の施設訪問や勤務時間中の飲酒などを理由に8月31日付で戒告処分となったが、10月23日の県議会では旅費返還や報告書の内容について議論が続いた。

県庁、県教育委員会、盛岡市教育委員会は異なる組織であり、今回の事案を共通の原因によって発生したものと考える根拠はない。

それでも、処分の公表後に、何が是正され、どのような管理上の問題が残っているのかを住民に示す責任は、それぞれの機関にある。

盛岡市で今回明らかになった報酬177万円の私費払いも、その経緯が十分に説明されなければ、停職3カ月という処分だけで問題の全体像を理解することは難しい。

信頼回復は「謝罪」ではなく、改善を検証できる仕組みから

行政組織への信頼は、不祥事が発覚した際に謝罪し、関係職員を処分するだけでは回復しない。住民が確認できる形で、再発防止の取り組みとその結果を示すことが必要になる。

岩手県教育委員会には、まず新たな研修の実施状況を明らかにするとともに、対策前後の事案を発生時期ごとに整理し、管理職の監督や相談体制にどのような変化があったのかを公表することが求められる。

盛岡市教育委員会については、任用職員6人への報酬の精算状況、偽造された源泉徴収票への対応、委託契約の未処理が他にもないかを調べ、確認手続きの改善につなげることが課題となる。

さらに、改善策が予定通り実施されたかを内部だけで判断するのではなく、監査や外部有識者による検証などを活用し、結果を公表することも選択肢となる。

重要なのは、問題が起きた後の対応だけでなく、次の問題を防ぐために何が機能したのかを継続して確認することだ。

編集部まとめ

岩手県内で相次ぐ不祥事をめぐり、週刊TAKAPIはこれまで2度の独自取材を通じ、県教育委員会の再発防止策と管理監督責任を検証してきた。

県教委は、従来の注意喚起中心の対策が十分ではなかったことを認め、専門家を交えた研修などに取り組んでいる。その結果を評価するには一定の期間が必要だが、効果の測定方法まで明確にして初めて、対策が機能しているかを判断できる。

盛岡市の新たな処分では、職員が報酬177万円を私費で支払い、源泉徴収票を偽造する事態に至った。県教委による教職員の処分とは別の問題であるものの、組織の内部で異常を発見し、是正する仕組みの重要性を改めて示している。

岩手で相次ぐ不祥事は、いつまで続くのか。

その問いに対し、県や市が将来の発生件数を約束することはできない。しかし、これまでの対策で何が改善し、何が改善していないのかを説明することはできるはずだ。

住民が求めているのは、繰り返される謝罪の言葉ではなく、安心して行政や学校を信頼できる根拠である。

特記事項

本記事は、2026年10月26日に報じられた盛岡市教育委員会事務局職員の懲戒処分、岩手県教育委員会の公式発表、7月15日の教育長記者会見記録、同委員会の不祥事防止対策資料、県内の行政職員に関する公表情報などを照合して構成した。

また、週刊TAKAPIが8月27日に県教委へ送付した質問状への回答に基づく9月4日付の独自検証記事、9月25日付の女性教職員わいせつ事案に関する独自取材記事を参照した。今回の盛岡市の処分について新たな直接取材を実施したものではない。

県教育委員会と盛岡市教育委員会は異なる行政機関であり、各組織の処分人数は合算していない。また、対策開始前の行為に対する処分を、対策開始後に新たに発生した不祥事として扱っていない。

盛岡市の処分原資料、私費177万円の精算状況、偽造書類の訂正状況、2026年10月末時点の研修実施率や効果検証結果については確認できていない。

Q岩手県の教職員は2026年度に何人処分されていますか?
A岩手県教育委員会による懲戒処分者は10月21日時点で13人です。管理監督責任で処分された職員も含まれています。
Q盛岡市教育委員会の職員も13人に含まれますか?
A含まれません。今回停職3カ月となったのは盛岡市教育委員会事務局の職員で、県教委による教職員処分とは別の案件です。
Q週刊TAKAPIの独自取材では何が明らかになりましたか?
A県教委が従来の注意喚起中心の対策を十分ではなかったと認めたことや、女性教職員のわいせつ事案で校長の監督責任を判断した理由などが明らかになりました。
Q岩手県教育委員会の再発防止策は実施されていますか?
A2026年7月に新たな対策をまとめ、8月下旬から専門家監修の研修を始めています。10月31日が研修実施期限ですが、完了率と具体的な効果は今後の確認が必要です。
Q岩手県内の教育行政が信頼を回復するには何が必要ですか?
A各組織が不祥事の発生・発覚・処分時期を明確にし、管理監督上の問題、再発防止策の実施状況と効果を継続して公表することが重要です。盛岡市には177万円の会計処理など、今回の未解明事項への説明も求められます。

週刊TAKAPI 編集部/成田

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