愛知県一宮市は2026年8月26日、一宮市立市民病院で、左脚を骨折した当時80代の患者に対し、誤って骨折していない右脚を手術する医療過誤があったと発表した。
担当医が手術関係書類で左右を誤って記載し、手術前のマーキングも右脚に実施。そのまま右大腿骨に人工骨頭を入れる手術が行われ、術後のX線撮影で初めて左右の取り違えが判明した。
市は診療契約上の義務違反に当たることを認め、患者側に損害賠償金550万円を支払う内容で和解契約を締結する。
左大腿骨頚部骨折と診断 書類では「右」に
市の発表によると、患者は2024年12月、転倒して一宮市立市民病院を受診した。
外来担当医がX線画像を確認し、「左大腿骨頚部骨折」と診断。手術治療のため入院した。
ところが、入院後に担当した医師は、手術承諾書と手術申込書に診断病名を「右大腿骨頚部骨折」と誤って記載。手術方法についても、本来は左側だったにもかかわらず、「右大腿骨人工骨頭挿入術」と記載した。
手術前のマーキングも右脚 術後X線で発覚
左右の誤りは書類だけで止まらなかった。
担当医は手術部位を示す術前マーキングについても、本来手術する左脚ではなく右脚に実施した。
その後、骨折していない右側に大腿骨人工骨頭挿入術が行われた。
左右を取り違えていたことが判明したのは、手術を終えた後のX線撮影だった。
患者は後日、本来治療が必要だった左脚についても手術を受けたと報じられている。なお、この再手術については8月26日の一宮市公式発表本文には記載されていない。
「必要のない手術」病院側が認める
一宮市は今回の一連の対応が診療契約上の義務違反に当たるとして、患者側と協議を進めた。
その結果、損害賠償金550万円を支払う内容で和解契約を締結することになった。
同日に公表された市の2026年度9月補正予算案にも、市民病院の医療過誤に伴う裁判外の和解として550万円の損害賠償金が計上されている。
病院長は、患者に必要のない手術を行い、身体的、精神的に大きな負担を与えたとして謝罪し、再発防止に取り組むとしている。
なぜ手術前に止められなかったのか
今回の事故では、最初のX線診断では「左大腿骨頚部骨折」と正しく診断されていた。
その後、
「手術承諾書・申込書への記載」
「手術部位のマーキング」
「実際の手術」
という段階を経て、誤った右側への手術が実施されている。
市が公表した再発防止策も、この確認工程に重点を置いている。
病院は現在、術前のマーキング時と手術室で麻酔を導入する前に、複数人が電子カルテ上の画像を確認し、受傷部位と実際に手術する部位を照合する運用を徹底している。
今回の公式発表では、従来どのようなダブルチェックが定められていたのか、その手順が実際に行われたのか、院内事故調査を実施したのかといった詳細までは明らかにされていない。
西尾張の基幹病院で発生
一宮市立市民病院は、一宮市が運営する公立病院で、救命救急センターや地域周産期母子医療センターなどの機能を担う西尾張地域の基幹病院に位置付けられている。
今回の事故は、診断そのものでは左右を正しく把握していながら、その後の手術準備の過程で左右が逆転し、不要な手術が実施されるまで訂正されなかった事案となった。
編集部まとめ
今回の医療過誤で重要なのは、単に担当医が「右」と「左」を書き間違えたことだけではない。
診断時には左脚の骨折が確認されていたにもかかわらず、書類作成、手術部位のマーキングを経て、骨折していない右脚への手術が実際に行われ、誤りが判明したのは術後のX線撮影だった。
市が示した再発防止策は、電子カルテ画像を複数人で確認する仕組みだ。
今後確認すべきなのは、事故当時どのような手術部位確認のルールが存在し、それがなぜ左右の取り違えを止められなかったのかという点になる。
週刊TAKAPI編集部/一条
特記事項
本記事は、一宮市が2026年8月26日に公表した「医療過誤に係る和解の成立について」と同日の9月補正予算案に関する公式資料を中心に構成した。
一部報道では「人工股関節の手術」と表現されているが、一宮市の一次資料では正式な術式を「大腿骨人工骨頭挿入術」としているため、本記事では公式表記を採用した。
患者が後日本来の左脚の手術を受けたことは報道で確認できる一方、市の8月26日付公式発表には記載されていないため、情報源を区別した。
患者の氏名など、個人を特定する情報は公表されていない。
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