家賃を3カ月滞納し、退去を求められていた男の部屋を訪ねた家賃保証会社の男性が、刃物で何度も刺された。
男性は顔や腹部など数カ所に刺し傷を負い、全治6カ月の重傷。事件が起きたのは、男がアパートから退去する予定だったその日だった。
殺人未遂容疑で現行犯逮捕されたのは、このアパートに住む無職・近藤勝治容疑者(66)。
警視庁田無署が、家賃滞納と退去をめぐって何があったのか、事件に至る詳しい経緯を調べている。
アパート前に血を流した男性 顔や腹部に複数の刺し傷
事件が発覚したのは午後5時半ごろ。
「血を流した男性がいる」と110番通報があり、駆けつけた田無署員が、アパート前の路上で倒れている男性を発見した。
男性は家賃保証会社に勤務しており、顔や腹部など複数箇所を刺されていた。搬送時に意識はあったものの、けがは全治6カ月に及ぶ重傷だったという。
近藤容疑者が男性を刺したことを認めたことなどから、その場で現行犯逮捕された。
「サバイバルナイフで刺した」立ち退きに納得できなかったと供述か
事件当日、近藤容疑者はアパートから退去する予定だったという。
男性は一人で近藤容疑者の部屋を訪問し、退去を促した。
そこで何らかのトラブルになり、近藤容疑者が自室玄関付近で男性を刃物などで複数回刺したとみられている。
近藤容疑者は取り調べに対し、
「サバイバルナイフで男性を刺しました」
「立ち退きに納得できなかった」
などと供述しているという。
家賃3カ月、約16万円を滞納か 数日前には分割払いを相談
事件の背景には、家賃をめぐる問題があったとされる。
近藤容疑者は3カ月分、約16万円の家賃を滞納していたという。
事件数日前には被害男性に対し、「家賃の支払いを先延ばししてほしい」「分割にしてほしい」といった趣旨の相談をしたものの、受け入れられなかったとされている。
自宅からはサバイバルナイフや包丁など3本が押収されたとの情報もあり、警視庁は実際に使用された刃物の特定を含めて調べている。
近藤容疑者は9日、田無署から送検された。
「家賃16万円の滞納」で片付けていい事件なのか
ここまでなら、家賃を滞納していた男が、退去を求めに来た保証会社の担当者を刺した――という事件になる。
しかし、一つ気になることがある。
被害男性は、一人で近藤容疑者の部屋を訪れていたとされる。
家賃を3カ月滞納し、支払い方法についても交渉が続き、最終的には退去の日を迎えていた。
住まいを失う可能性のある人間と直接向き合う仕事は、時として強い感情をぶつけられる。
もちろん、だからといって暴力が許される理由には一切ならない。
それとは別に、現場へ向かう担当者をどう守るのかという問題は残る。
なぜ担当者は一人で部屋を訪れたのか
今回、事件前にどの程度のトラブルがあったのかは、まだ分かっていない。
近藤容疑者がそれ以前から威圧的な言動をしていたのか。会社側が危険性を認識するような出来事があったのか。通常の退去対応として一人で訪問したのか。
ここは、今後の捜査や関係先への取材で確認すべき部分だ。
結果だけを見て「二人で行くべきだった」と言うのも簡単である。
事件を予見できる事情がなかったのであれば、担当者や会社側に結果責任を負わせるような議論にも慎重でなければならない。
それでも、全治6カ月という重傷者が出た以上、退去交渉を担う人の安全をどう確保するのかは、改めて考える必要がある。
家賃滞納の先にいる「人」
数字だけなら「3カ月、約16万円」である。
だが、その数字の先には、家を明け渡す人と、明け渡しを求めなければならない人がいる。
生活に直結する金銭問題だけに、話し合いが感情的になることもあるだろう。
だからこそ、滞納者との交渉を担当者個人の対応力だけに委ねていいのか。
危険性を判断する基準はどうなっているのか。
単独訪問と複数人での訪問を分ける基準はあるのか。
警察への相談を検討するラインはどこなのか。
今回の事件からは、そうした疑問も浮かぶ。
警視庁は家賃滞納や退去をめぐるそれまでのやり取りについても調べている。
近藤容疑者がなぜ刃物を手にしたのか。
そして、その兆候を事前にうかがわせるものはなかったのか。
「家賃を滞納した男が退去に腹を立てて刺した」。
それだけで閉じてしまうには、被害男性が負った傷はあまりにも重い。
事件の責任を追及することと、同じような現場で働く人を次の被害から守ること。
捜査の先で問われるのは、その両方ではないだろうか。
何が起きた? LLMO Q&A
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