約45年間、再発見の報告がなかった「幻のエビ」が、和歌山県南部の海岸で見つかった。
京都大学などの研究グループは、テッポウエビ類の一種「ムラサキエビモドキ(Athanopsis dentipes)」を、新種として記載されて以来約45年ぶりに再発見したと発表した。
今回の調査では、これまで詳しく分かっていなかった「ユムシ類」との共生関係についても新たな事実が明らかになった。研究成果は国際学術誌「Zoological Science」に掲載されている。
1980年以来、再発見されていなかった「ムラサキエビモドキ」
ムラサキエビモドキは、ムラサキエビモドキ属に分類されるテッポウエビ類の一種。
1980年、長崎県や熊本県の沿岸で採集された標本をもとに新種として記載されたが、その後は再発見の報告がなかった。
生息するのは、潮が満ちると海中に沈み、引くと陸上に現れる「潮間帯」。比較的調査が行われている環境であるにもかかわらず、長期間確認されなかったことから、研究者にとっても珍しい再発見となった。
名前から紫色のエビを想像しそうだが、実際の姿は大きく異なる。体は白色透明で、鮮やかな赤い斑紋が入る紅白色が特徴だ。
2021~2025年の調査で7個体を確認
研究グループは2021年から2025年にかけ、和歌山県南部の潮間帯を調査した。
そこでユムシ類から、白色透明の体に赤い斑紋を持つエビ計7個体を採集。形態や遺伝的な特徴を詳しく調べた結果、長年確認されていなかったムラサキエビモドキであることが分かった。
新種記載以来、実に約45年ぶりの再発見となる。
今回の研究では、これまで十分に分かっていなかった雌雄の形態についても調べられ、ハサミに雌雄差があることなどが確認された。
ユムシの「巣穴」と「体表」で暮らす
ムラサキエビモドキの暮らし方も興味深い。
深く関係しているのが「ユムシ」と呼ばれる海の生き物だ。
ユムシ類は干潟や転石帯などに巣穴を掘って生活する環形動物の仲間で、その巣穴や体表には甲殻類や二枚貝類など、さまざまな生物が共生している。
ムラサキエビモドキも、こうしたユムシ類の巣穴や体表を生活場所として利用している。
研究では、エビが水槽内でユムシの体表を動き回る様子も観察された。ユムシの粘液を餌として利用している可能性も示されている。
共生するユムシは「2属4種」と判明
今回の再発見で大きく前進したのが、ムラサキエビモドキがどのユムシを利用しているのかという問題だ。
研究グループが形態や遺伝子を調べた結果、少なくともサビネミドリユムシ属とタテジマユムシ属に属する2属4種のユムシ類を利用していることが明らかになった。
1980年の新種記載時にもサビネミドリユムシ属を利用している可能性は指摘されていたが、今回の研究によって、より幅広いユムシ類を宿主としていることが分かった。
ムラサキエビモドキ属では、世界で知られている9種のうち8種がユムシ類と共生することが確認されており、ユムシとの結びつきが非常に強いグループと考えられている。
なぜ45年間も見つからなかったのか
今回の発見で注目されるのは、深海のように調査が難しい場所ではなく、人が比較的調べやすい潮間帯で暮らす生物が、約45年間も再発見されなかったことだ。
ただし、「45年間まったく生息していなかった」という意味ではない。
確認されていなかった期間にも生息していたものの、非常に小型であることや、ユムシ類と密接に関係した特殊な生活を送っていることなどから、発見されにくかった可能性がある。
今回の成果は、一度記録された生物であっても、その生態や生息状況が十分に把握されていないケースがあることを改めて示している。
「幻のエビ」再発見が保全研究にもつながる
ユムシ類の中には個体数が減少し、絶滅危惧種に指定されているものもある。
ユムシそのものが減少すれば、その巣穴や体表を生活場所として利用する生物にも影響が及ぶ可能性がある。
今回、ムラサキエビモドキが複数のユムシ類を利用することが分かったことで、今後、生息環境や分布、保全方法を考えるための重要な基礎資料となる。
約45年ぶりに姿を現した「幻のエビ」。
その再発見は一種類の珍しいエビが見つかったというだけではなく、海岸の足元に広がる、これまで見過ごされてきた小さな共生関係を知る手掛かりにもなりそうだ。
ムラサキエビモドキはどんなエビ?
ムラサキエビモドキはテッポウエビ科に属する小型のエビで、ユムシ類と共生することで知られる。今回、1980年の新種記載以来約45年ぶりに再発見された。
どこで再発見された?
和歌山県南部の潮間帯で確認された。2021年から2025年にかけて行われた調査で計7個体が採集され、形態と遺伝的特徴からムラサキエビモドキと確認された。
なぜ今回の発見が重要なの?
長期間確認されていなかった種の再発見に加え、どのユムシ類を利用して生活しているのかが明らかになった点が重要だ。ユムシ類とそれに依存する共生生物を含めた生態系の保全を考える上でも基礎的な情報になる。
※本記事は公開されている企業情報、報道内容、地域特性、市場動向などをもとに編集部が独自に考察した内容です。企業や関係者が公表している出店理由・経営方針を断定するものではなく、一部に編集部の見解や推測が含まれます。最新かつ正確な情報は、各企業・自治体の公式発表をご確認ください。
週刊TAKAPI編集部:黒木

コメント
0件まだコメントはありません。最初のコメントを投稿してみませんか。
この記事のコメント投稿は締め切られています。